第37話 本気の集中
亀退治はほどほどにして、ダンジョンの奥に進んでいく。
難易度が低いと言われていただけあって、私一人でも余裕がある。
そして、ダンジョンの一番奥へとたどり着いた。
岩だらけのダンジョンには似つかわしくない、人工物の扉が行く手を阻んでいる。
ここから奥に入ればボスの間らしい。
「さて、それじゃあ、頑張ります」
『頑張れー』
『危なくなったら、扉から出るんだぞ』
『ほんそれ、命より大事なものはないからな』
『死に戻りするかどうかもわからんしなぁ』
『というか、死ぬとこ見たくないので』
『それな』
まぁ、私としても無理するつもりはない。
やれるだけやって、無理なら即退散だ。
扉を押し開けてボスの間に入る。
同時に、弓を構えた。
ボスは、2メートルくらいの大きな岩の形をした魔物でゴーロックという名前らしい。
このゴーロックはすごく厄介な魔物で、勝つのは簡単だけど、倒すのは難しいという魔物らしい。
まず、岩の魔物ということで単純に硬い。
普通に攻撃すると、剣での攻撃はダメージがなく、ハンマーのような打撃でしかダメージが与えられない。
それだけだとハンマー以外に倒せる方法がなくなってしまう。
当然、他の対処法がある。それが弱点だ。
「見えたっ!」
私は、見えた弱点に向かって矢を射る。
矢は一直線にそこに飛んでいき、無事にそこに当たった。
『おおっ! さすが一発で目に当てるとは』
『一瞬だけこっち捕捉するから止まるタイミングはあるけど、短いよな』
『良く当てたわ』
目を貫かれたゴーロックは、その場で回転をする。
「……っ!」
こちらに向かって突撃してきたので、それを横に飛んで避ける。
矢を打つタイミングは、敵が攻撃する直前に一瞬だけ止まるからその時しかない。
しかも、攻撃で止まることなく、こちらに突っ込んでくるから、矢を撃ったら即横に飛んで逃げないと危険だ。
これも、事前に聞いていなかったら避けられなかった。
ゴーロックが、私の後ろにあった、扉にぶつかって止まる。
それを見た私は、少し離れて、また弓を構える。
弱点の目が現れたのを見て、それをまた射る。
序盤戦は、このパターンの繰り返しだ。
避けて、狙って矢を撃つ、弱点というだけあってダメージはよく入るみたいだ。
7回くらい繰り返した後に、ゴーロックが違う動きを見せた。
こちらに向かって突撃することなく、ぐるぐるとその場で回り始めた。
『来たぞ! 自爆フェーズだ!』
『アリスちゃん! 離れて!』
『撃ちまくるんだ!』
このゴーロックという魔物、HPが一定以下になると、自爆フェーズというのに入るらしい。
その名の通り、一定時間が過ぎると、自爆をする。
その威力は凄まじく、防御を専門にしている人ですら一瞬で戦闘不能になるらしい。
自爆をさせてしまったら、パーティは壊滅するし、後衛が扉の外に出れば生き残れるらしいけど、それだとアイテムは落とさない。
一応、倒した判定になるから、奥の魔法陣から帰ることはできるらしい。
これが、勝てるけど、倒せないと言われている理由だ。
「集中!」
自分に活を入れて、再びゴーロックに向き直る。
回転している、ゴーロックの目を狙う。
タイミングはかなりシビアだ。
しかも、さっきと違って止まることなく、ずっと回転しているから狙うのも大変。
部活でやってた弓じゃこんなのを狙うなんてやったことがない。
一度くらい流鏑馬の練習でもしておくんだった。
デタラメに回転しているから、どこを狙えばいいか難しい。
聞いていた制限時間は1分。それまでに、3回当てる必要がある。
「集中、集中」
当てるのが難しいから数打ち勝負になる。
射るごとに、すぐに次を構え、目が見えた瞬間にそれを撃つ。
ハズレ、ハズレ、当たり。
『1回目!』
ハズレ、ハズレ、ハズレ、ハズレ、当たり。
『2回目! 残り一回だっ!』
『回転めっちゃ早いんだが?』
『こんな早いんか!』
1回当てるごとに、回転速度が上がっていく。
ハズレ、ハズレ、はずれ。
当たらない。
更に集中を深めていく。
『時間!』
『~~~~~~』
『~~~~~~』
聞こえていた視聴者の声が耳に入らない。
ハズレ、ハズレ、ハズレ、ハズレ、ハズレ、ハズレ、ハズレ、ハズレ……
……当たり。
最後の一回が当たったことを確認。
ゴーロックの回転速度が低下していく。
回転を止めると、ゴーロックがゴトゴトと崩れていく。
「……ふぅ」
それを見た私は、一つ息を吐いた。
疲れた、こんなに集中したのはいつぶりだろう。
弓道やっていた大会でもこんなに集中した記憶はないかもしれない。
でも、なんとかやり遂げた。
『うぉおおおおおお!』
『倒した!!!』
『すげぇえええええええ!!!』
『ほぼ初期ステータスなのに弓オンリーで倒せるんか』
視聴者さんの声が再び聞こえてきた。
「あー、倒せたみたいですね。ちょっと頑張りました」
集中しすぎて、脳が空っぽになったみたいだ。
『凄かった!』
『DEX盛り盛りのトッププレイヤー並のAIMだ』
『時間結構ギリギリだったで』
あ、そっか、時間……、あとどのくらいだったんだろう?
『残り5秒!』
『一応距離的にはすぐ逃げられる距離だったとはいえ、逃げないから焦った』
『危ないことはせんといてや!』
どうやら時間ギリギリだった様子。
体感的に、そろそろやばいかなぁとは思ってたけど、思ってたよりギリギリだった。
でも、なんとか倒すことができた。
「これが、爆弾の材料の『爆発岩のかけら』?」
お目当ての素材も入手することができた。
『ボスのドロップ素材独り占めだから結構数あるね』
『パーティだと分割だからな』
結構な数の素材が手に入った。
これで、爆弾アイテムが作れるようになったわけだ。
「これを敵の数だけ作るためには……」
『あっ……』
『あっ……』
『あっ……』
うん、正直、思っていたよりも倒すの大変だった。
「周回大変かも……」
そりゃ、誰も同じ方法を取ろうとする人がいないはずだよね。




