第34話 対策会議
朝、冒険者ギルドに行くと、ミナリアさんに会議室へと案内された。
入るとどこか見覚えのある女性が一人座っていた。
「おはようございます」
「おはよう、あら? そちらは?」
ミナリアさんが挨拶をすると、女性は私の方を見た。
「錬金術師をやっています、アリスです」
よろしくお願いしますとお辞儀をすると、女性は嬉しそうに笑った。
「あら! あなたがアリスちゃんなのね、娘から話は聞いているわ」
「えっと、ロナさんのことですよね?」
「ええ、あ、自己紹介がまだだったわね、ロナの母でリーズよ、エルフで商業ギルドのマスターもしてるわ」
見覚えのあるのは、ロナさんに似ていたからか。
それに耳を見るとエルフだし、わかりやすかったよね。
『美人ギルマスキタコレ』
『この人も完全初見?』
『冒険者ギルドのマスターですらあんまり外には出ない人だからなあ』
『エルフの人妻……』
ちなみに、リーズさんは、ロナさんを大人にして、表情を柔らかくしたような感じの人だ。
おっとり系の美人という感じ。
「ロナったら、ちょっと前からあなたのことばかり話すのよ」
「そうなんですか?」
ロナさんが私のことをそんなに話すのはあんまりイメージにないなぁ。
「前なんて、お礼がしたいからって私達に頼んでまで錬金術の道具を作っていたわね」
そうか、両親に頼んだって言ってたっけ。
「ロナさんからは無事にいただきました、貴重なものを作っていただきありがとうございます」
「アリスちゃんは丁寧なのね。娘にアリスちゃんみたいな素敵な友達ができて良かったわ」
リーズさんはずっと嬉しそうだ。
ふむ、家族仲は良好そうだなぁ。
リーズさんと話していると、扉が開いた。
入ってきたのは、少し小柄の男性。
顔の大きさ、渋さと身長が比例していないところを見るに、ドワーフの人だろう。
「ワシのが遅かったか」
「そうね、でもまだ時間があるわよ」
ドワーフさんとリーズさんが仲良く挨拶を交わす。
「あ、そうそう、こちら錬金術師のアリスちゃんよ」
「へ、あ、アリスです。よろしくお願いします」
急にふられてびっくりしたけど、無事に挨拶を返した。
「ほう、どこかで聞いたことある名前じゃが……」
はて? と首をかしげるドワーフさん。
「ダッズ、ロナの話に出てきたでしょう」
「ああ、あのロナにご飯をくれた女の子の話か」
ご飯をくれたって……、いや、間違ってないけど、ロナさんどういう話したんだろう?
「ワシの名はダッズ、ロナの父をしている。見ての通りドワーフだ」
ドワーフさん改、ロナのお父さん改、ダッズさんは興味深げに私を見る。
えっと、何か?
私は首をかしげると、ダッズさんは笑った。
「ああ、ロナから聞いていた想像通りだったのでな」
豪快に笑うダッズさん。
「これからも娘と仲良くしてやってくれ」
「はい」
後で、ロナさんにどういう話したのか聞いておこうかな。
話をしていると、他の人も続々と部屋の中に入ってくる。
ほとんど顔見知りみたいだったけど、私が知っている人はいなかった。
リーズさんが私のことを紹介してくれて、無事に皆に挨拶をできた。
どうやら、ここに集まっているのは、街でも指折りの生産職の人たちと優れた冒険者の人らしい。
なんで私ここにいるんだろう?
最後に冒険者ギルドのマスターが入ってきて、会議が始まった。
「朝早く集まってもらってすまない、一部の者達には既に伝えたが、スタンピードの兆候が見られた」
ギルマスの一言に聞いていなかったらしい人たちがざわざわする。
落ち着いているのは、私とリーズさんくらいかな?
「兆候ということで、確定の話ではないが、皆には覚悟と準備をお願いしたい」
そんな中をギルマスは続ける。
覚悟って……、いや、普通はそうか。
魔物の大群が攻めてくるって緊急事態だもんね。
「魔物の種類は?」
「どの方角からになりそうなんだ?」
冒険者からギルマスに質問が飛び、ギルマスが答えていく。
私は知っていることだったので、特に発言などはしない。
黙って聞いていると、扉が開く音がした。
「やあやあ、皆さんお揃いで」
入ってきたのは、私の同期の自称勇者だった。
あー、そういえば、こんなやついたなぁ。
名前なんだったかな?
「ダルスか、何しに来た」
あら? 呼ばれてたのかと思ったんだけど、ギルマスの反応を見るに違うのかな?
「えっ? だって街に関わる重要な会議でしょ? 勇者の俺がいないと始まらないでしょ」
そんなことを言って、勝手に椅子に座る。
「おや、アリスちゃんじゃないか、こんなところで何してるのさ」
なんか、話しかけられた。
「アリスちゃんは錬金術師なんだから、家で初級ポーションでも作ってた方がいいんじゃない?」
なんだろう、少し悪意を感じる。
というか、素でイラッときた。
こいつ相変わらず、錬金術師を下にみているようだな。
「ギルマスもギルマスだよね、アリスなんか呼ばずに、俺を呼べばいいのに」
つまり、私が呼ばれているところに、自分が呼ばれず、腹を立てている感じか。
相変わらずだなこいつ。
呆れてため息しかつけないよ。
私が何も答えずにいると、
「だいたい「黙れ!」」
何か続けようとしたダルスを遮るように、ギルマスが立ち上がる。
「黙って聞いていれば、お前何様のつもりだ」
ギルマスがダルスの胸ぐらを掴む。
「このアリス嬢はお前なんかよりよほど冒険者ギルドに貢献してくれる、優秀な人材だぞ」
「はぁ? アリスが?」
「冒険者ギルドだけではないわね、商業ギルド、ひいては街にも貢献してくれるわよ」
リーズさんも、立ち上がりダルスを睨んでいる。
「はぁ? だって、アリスは錬金術師だろ? それなのになんで……」
「溜まっていた納品依頼を片っ端から消化してくれたんですよ」
ミナリアさんから説明が入った。
「その中にはずっと放置されっぱなしだった、依頼もあって、今は街中がアリスちゃんに感謝しているわ」
はい? いつの間に、そんなことに?
「それに、今回の異常事態の発見者でもある」
「なんだって!?」
ダルスが私の方を見るけど、無視。
「それに比べてお前はなんだ、勇者? 街に全く貢献もせず、遊び回っているだけだろうが!」
ギルマスからのお説教が入った。
この自称勇者どうやら、街の依頼とか冒険者とかの仕事とかも一切せずに、遊び回っていただけらしい。
まじか、こいつ。
魔物に負けたとかで、私のところに、初級ポーションをせびりに来てたのは知ってたけど、そもそも魔物に挑んですらなかったとか。
「ここはお前のようなクズのいるところではない、おい、誰かこいつを追い出せ」
ギルマスが人を呼び、職員と中にいた冒険者が自称勇者を引きずっていった。
自称勇者は、なにやら叫びながらも引きずり出された。
ガチャンと扉が閉められる。
「ハァ……」
ついため息が漏れた。
「実は彼の行動はギルド内でも問題になっていて、除名も検討されています」
ミナリアさんが小声で教えてくれた。
まぁ、あの感じじゃしょうがないよね。
『ザマァ展開入りました!』
『ここまでテンプレ』
『自称勇者だけど、実際は、愚者だったか。愚か者って意味で』
GM『ちなみに、好感度が下がりすぎると、誰でも冒険者ギルド除名ってことになりかねませんので注意が必要です』
『なんやて!?』
『うそやん』
『えっ? 冒険者ギルド使えなくなったらゲームできんが?』
GM『まぁ、よほど悪意を持って対応していなければ大丈夫ですよ、現状だといません。ギリギリの人はいるみたいですが』
『俺の好感度……いまいくつ?』
『俺、次から冒険者ギルド職員には優しく接するようにしよう』
『俺らがザマァされないようにしないと』
視聴者さんとGMのやりとりを聞いていると、引きずっていった冒険者達が戻ってきたようだ。
「それでは会議を再開しよう」
そして、何事もなかったように会議は続けられた。




