第22話 プレイヤースキル
料理については納得をして、次の作業に移る。
「ふむ?」
錬金術で仕上がったそれを眺めてみる。
「これが木の弓。思ったよりちゃんとしてるね」
正直、木の剣が完全に練習用というイメージだったので、これもそういう感じかと思ってたけど、そうでもなさそう。
結構でっかい。
『まぁ、木の剣って言っちゃえば剣もどきだからね』
『切れない剣に比べたらそりゃまともよ』
『そういう意味でも必要レベル高いのは当然かもね』
どうやら視聴者さんたちも思うところがありそうだった。
さて、後は私がこれを使えるかってところなんだけど。
「とりあえず、経験値稼ぎがてら素材採取に行こうか」
あんまり遠くには行かずに、とりあえず、街の周辺を探索しようかな。
街の外に出て試し打ち相手を探す。
「あ、いた」
見つけたのは、いつものミニラビット。
というか、街の周りにはこいつしかいない。
いつもだったら、投石を投げ続けて倒すところだけど。
「よし、それじゃあ、やってみようかな」
インベントリから木の弓と木の矢を取り出して構える。
アリスとしては、始めての弓になるんだけど、違和感なく引くことができた。
『この距離であたるのか?』
『結構距離あるから職業補正なしだときつそう』
『石投げた方がいいんじゃ?』
視聴者さんは距離に不安があるようだ。
大体、20メートルくらいかな?
これくらいだったら。
「……っ」
引き絞ったそれを離す。
矢は一直線に飛んでいき、ミニラビットに当たった。
『当たった!?』
『まじか』
『いや、でもたまたまだろ』
続けて2射目。
ほぼほぼ同じ軌道で飛んでいった矢は、またミニラビットに当たった。
3射目でミニラビットは光となって消えた。
「……ふぅ」
良かった、ちゃんと使えた。
『俺知らんのだが、弓ってこんな簡単なの?』
『いや、普通はこの距離じゃもっと外すって』
『職業補正ありならまぁいける距離だけど、錬金術師って補正ないよな?』
『DEXの補正はあるけどそれにしたって難しいはず』
視聴者さんがびっくりしているみたいだ。
でも、
「言っても20メートルくらいでしょ? それくらいならまぁ当たるでしょ」
和弓の競技距離が28メートルだからそれよりは短いし。
相手が襲ってこないから余裕もあるからね。
『アリスちゃん、弓使ったことあるの?』
「あ、うん、一応あるよ、私弓道部だったし」
『あー、単なるプレイヤースキルか』
『それなら納得……?』
『アリスちゃんのプレイヤー?』
「いや、だから何度も言ってるじゃないですか。私としては異世界転移した感じなんですって」
アリスとしての私は弓なんて使ったことないけど、元の私は弓道部だったので、触ったことがある。
というか、意識としては最近まで触ってたんだけど。
今の私でも使えるか心配だったけど、問題ないみたいだね。
『そういえば、そんな話だったな……』
『運営からはなんの音沙汰もないからなぁ』
『正直、10割ネタだと思ってたけど、半信半疑になってきた』
『半分でも信じられることが凄いわ』
どうやら、今までの何より衝撃だったらしく、視聴者さんが混乱していた。
「まぁ、ともかく、こんな感じで使えることはわかってほっとしたんだけど」
弓をしまいつつ、話す。
「正直、私としては投石と使い分けかなぁ」
『うん?』
『あ、そうか、経験値……』
『投石みたいに経験値入らないと確かにあんまり美味しくはなさそう?』
「うーん、一応遠くまで届くのと、数が少なく済むっていうのがメリットだけど」
流石に20メートルの石投で当てる自信はないし、投石も10個が矢3つになるっていう時間短縮はできる。
『ミニラビットのHPが10だから、矢1つで4ダメくらいか』
『やっぱり弱いことは弱いけど』
『一応、錬金術師はDEX高めだからそれでも少しダメージ補正は入ってるな』
「DEX? ってなんでしたっけ?」
『DEXは器用度的なパラメーターだね』
『剣とかはPOWが関わってくるけど、弓はDEXのが重要』
『DEXが高いと当てやすくなったり、ダメージ上がったりする』
へぇ、そんなパラメーターによって違いがあるんだ。
それで、弓はDEXの影響が強くて、錬金術師はDEXが高めの傾向があると。
だけど、結局、錬金術師は弓武器が使えないから、元々のダメージが低いと。
まとめると、こんなところかな?
つくづく、錬金術師で外に出てるのが間違いとしか思えないなぁ。
きっとゲームとしては、そういうの想定してないんだろうなぁ。
でも、私としてはやらざるを得ないんだよなぁ……
ほんと、経験値が入るなら良かったのになぁ。
『なぁ、気になったんだけど、経験値入らないって確定事項みたいだけど、本当なのか?』
うん? 気になるコメントがあった。
「えっ? 経験値入るのって投石だけじゃないの?」
てっきり投石だけが特別なんだと思ってたんだけど。
『どうなん?』
『いや、むしろ俺たちが知りたいんだが』
『運営に問い合わせたら、消費アイテムを錬金術師が使うと経験値が入る、とのことだから』
『消費……、矢は消費物か!』
『なるほど、盲点だった!』
へぇ、そんな決まりだったんだ。
「うーん、じゃあ試してみようか」
というわけで、次の獲物を見つけて、検証してみることにする。
結果は……、
「……減った?」
残り経験値を見ながら射った結果、2射で経験値カウントが1減った。
『まじかよ!』
『半分冗談だったんだが……』
『提案した人ナイスだ!』
『これはまた錬金術界隈が荒れるで!』
視聴者さんがかなり驚いていた。
うん、投石の時も同じような感じだったけど、それ以上だね。
やっぱり、武器使って経験値が入るっていうのは、喜ばしいことだよね。
つまり、
『投石もういらなくね?』
これまで、お世話になってきた投石が要らない子になってしまった。
インベントリにはまだまだ大量に入ってるんだけどなぁ……
いらない子になってしまった大量の投石の扱いは置いておいて。
「とりあえず、今後は弓メインで行こうかな」
矢の消費はちょっと痛いけど、作るのはそんなに難しくないし何より安定して敵を倒せるのが大きい。
市場で木の枝を買い占めて、木の矢を増産しておいた。
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