大和三山は結ぶ㉘
現在。
香久は光の射す場所を目指していました。
「さっきまで見えていた光が見えない。塵が濃くなったんだわ」
香久は歩みを止めました。随分と疲れた声で香久は言います。
「どこなの…… ここ」
小さな音が聞こえました。香久はハッとしました。
「鐘? 鐘の音?」
鐘の音を追いながら香久はまた歩き始めました。鐘の音は香久を導くように、何度か鳴っては消えました。そうして、ようやく光の射す場所が、うっすらと見えてきました。
「やった…… たどり着いた。でも、どうして……」
戸惑いの最中にある香久に、聞き慣れた声がしました。
「遅いよ」
香久はとっさに声のする方を見ました。
「香久ちゃん」
紛れもなく耳成の声。そして確かに目の前にいたのは、
「耳成!」
更にもう一人。
「きっと来てくれると思いました」
「畝傍ちゃん!」
畝傍は耳成と手を繋ぎました。それから畝傍は香久にも手を差し伸べました。香久は導かれるように畝傍の手を取りました。耳成は静かに香久を見つめていました。耳成はポツンと言いました。
「だって……」
香久は神妙な顔つきで聞いていました。言葉の止まった耳成に、香久は苛立ったように言いました。
「『だって』何よ? ハッキリ言いなさいよ」
「だって耳成は、耳成はね。人間様やこの地を守りたいだもん。香久ちゃんと喧嘩ばっかりするようになったし、人間様に余計な事いっぱい言っちゃうし、全然ダメダメだけど…… それでも、それでも耳成は…… 人間様が大好きだもん!」
香久も叫ぶように言い返しました。
「私だって!」
「じゃ、一緒だもん」
耳成は微笑むと、言葉を続けました。
「耳成と香久ちゃんは一緒だもん。ずっとずっと、遠い遠い昔から。そしてこれからも。ずっと、ずーっと、一緒だもん!」
耳成はもう片方の手を香久に差し伸べました。
「だから……」
香久の目から思わず涙が出そうになって、グッと堪えました。憎しみと罪悪感で、以前は繋げなかった手。でも今は違いました。香久は耳成の手をゆっくりと取りました。




