大和三山は結ぶ㉔
今から千三百年以上前。
子角仙人は耳成、香久、畝傍を一カ所に集めて話をしていました。
「お前達は守護山娘の中でも幼い」
香久が反論します。
「幼くなんてありません」
「はっきり言うと守護山娘の中でも未熟じゃ」
「ひっ、ひどい!」
香久をはじめ、耳成、畝傍も不満気な顔をしましたが、小角仙人は話を続けました。
「お前達にこの話が理解出来るか不安もあるのじゃが――」
香久は急変したように、自信たっぷりにいいました。
「仙人様は私たちの事を分かっておられません。何でも私達に話してください」
耳成もいいました。
「香久ちゃんの言う通りだもん。それに耳成がもし分からなくても、畝傍ちゃんや香久ちゃんに教えてもらえるから大丈夫。畝傍ちゃんはとっても偉いし、香久ちゃんはとっても頼りになるもん」
畝傍と香久は耳成を見てにっこりと微笑みました。実際、畝傍は耳成や香久に優しく色々な所でアドバイスしてきました。耳成と香久は畝傍が大好きでした。そして香久も耳成を助ける事がたくさんありました。三人はかつて、とても仲良しでした。
子角仙人は話を続けます。
「人間様と共に生きる上で、お前達、守護山娘にはそれぞれ守護山の宿命というものがある」
耳成は分からずに聞き返します。
「しくめー?」
香久は耳成を見て、訂正しました。
「宿命よ」
子角仙人は話を続けました。
「どの人間様にも、多かれ少なかれ、『戦いの本能』というものが宿っておられる。大切なものを守るため、時に相手を強く憎み、またその憎しみによって自らが強く苦しまれることも多い。その苦しみを、お前達で少しでも和らげられるように、人間様の心の拠り所となってもらいたいのじゃ。それが耳成、香久、お前達の宿命じゃ」
耳成は頷いていいました。
「良く分からないけど、人間様を助けられるなら、耳成は何でもするもん!」
香久も力強くいいました。
「私も、人間様のお役に立ちたいです!」
一方の畝傍はどこか不安気でした。香久は質問します。
「それで、具体的にどうすればいいのですか?」
子角仙人は答えました。
「何もせんでよい。ただ受け入れるのじゃ」
「受け入れる? それだけですか?」
「そうじゃ。じゃが、これを一度受け入れれば、お前達二人は永遠に憎しみ合うことになる」
耳成と香久は顔を見合わせました。耳成は驚いて、不安気な顔でした。香久は元気を出させようとしていいます。
「大丈夫! その宿命、受けてたちます!」
香久はまだ不安そうな顔の耳成を見ると、笑顔で頷きました。耳成もそれを受けて、笑顔になっていいました。
「耳成も! 受けてたちます!」
「良いのじゃな? 今すぐでなくても良いのじゃぞ?」
『はい』と、香久と耳成は頷きました。




