大和三山は結ぶ⑬
翌日。
団五郎が姿を見せますが、耳成はいませんでした。団五郎は耳成をあちこち探し、やっと井戸の横で隠れているのを見つけました。
「お前、何やっているんだよ。自転車に乗りたいと思わないのか?」
耳成はきっぱりと首を横に振りました。団五郎は自転車を耳成に預けました。
「これ、貸してやるから自由に使えよ」
団子朗はそのまま走り去ろうとしました。耳成は飛び止めるように叫びます。
「無理だもん! それに耳成は守護山娘だから、自転車なんかに乗らなくてもいいもん!」
団五郎も叫びました。
「じゃ、見せてみろよ! 守護山娘だか何だか知らないけど、すっごい力があるんだったら、ここで俺に見せてみろよ! すごいんだろ? お前」
「耳成は・・・・・・」
耳成は言葉に詰まりました。
「耳成は、すごくなんかない・・・・・・。でも他の守護山娘はみんな、すごい力を持っているもん! 本当にすごいんだもん!」
「他のヤツなんて聞いてない! お前に聞いているんだよ!」
「耳成は・・・・・・」
耳成はやけくそのように叫びました。
「耳成は弱いもん! 大和の守護山娘の中で一番弱いもん! 力も無いし、十分にヤッカイを防ぎきれないし、失敗もするし・・・・・・ 耳成の気持ちなんて誰も分からないだろうけど・・・・・・ こんなちっちゃい耳成山の守護山娘になんて生まれてこなければ、耳成だって、もっと色々出来たんだもん! 他の山に生まれてきたなら・・・・・・」
団子朗は呆れたようにいいました。
「お前、本当にどうしようもないヤツだったんだな。ほんと、くだらねぇヤツ・・・・・・」
耳成は掠れた声でいいました。
「ひどいもん・・・・・・」
「ずっとそのまま弱いままでいたらいいだろ。まぁ、俺には関係ないし」
団五郎は耳成山を見上げると、耳成は叫びました。
「団五郎なんて大嫌い! 二度と耳成山に来ないで!」
団五郎も怒鳴りました。
「こっちの台詞だ! お前こそ、もう耳成山に来るな!」
団五郎は怒って走り去っていきました。
一方、畝傍山の畝傍、香具山の香具達は、耳成の声が聞こえたかのようにハッ! としました。
同じく竜泉寺の泉で見ていた子角仙人ら三人も、完全に言葉を失っていました。守護山娘が人間に暴言を吐くなど普通なら考えられなかったからです。稲村は左手にもった刀を強く握りしめました。どこかへ行こうとする稲村に、観音は不安そうに言いました。
「稲村様! どこへ行かれるのですか?」
「聞いただろう。人間様に暴言を吐くなど許される事ではない!」
「耳成ちゃんにも訳が」
「そんなものが理由になるか!」
稲村は姿を消しました。




