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守護山娘シリーズ  作者: 白上 しろ
38/78

高取は現る⑪

 地上のヤッカイの分子達が騒がしく動いたため、地下の基地に振動が起きて天井が崩れ、基地の内部が地上からむき出しになっていました。ヤッカイは大きな段ボールがあることに気がつきます。

「あら、何かしら? 私の勝利へのプレゼント? こんな物用意するなんて、なかなか気が利くじゃない。あの不細工な猿とは大違いね」

ヤッカイは嬉しそうに鼻歌を歌いながら大きな段ボールをゆっくりと開けはじめました。

「何が出るかな♪ 何が出るかな♪」

ヤッカイが開いた段ボールの上から覗き込みました。しかし、中には何もありませんでした。

ヤッカイは怒って言いました。

「こんなふざけた真似をするなんて、あの猿に違いないわ!」

ヤッカイは半ば腹いせのように言いました。

「くだらない仕掛けを! 今度は私が仕掛けてやるわ!」

ヤッカイはニタリと笑いました。

「人間達にね」

ヤッカイの号令と共に、様々な生物に変異したヤッカイの分子達が、高取の町へ雪崩れ込もうとしました。しかし突然、怒濤のような一発の爆音が響くのと同時に、地響きが起きました。

「何!?」

ヤッカイが息を呑むと、遠くで煙が上がっているのが見えました。最も町に接近していたヤッカイの分子達はことごとく消滅し、元の土へと姿を変えていたのです。

「何なの!?」

高取城の広場に突如、現れた砲台。その口からは煙が立っていました。そしてまた爆音と地響きが起こりました。今度は一発どころではありません。城のあちこちから砲台が放たれます。その数は全部で六門。砲台の玉はヤッカイの分子だけを巻き込んで、消滅させていきます。轟音が周囲で鳴り響く中、わずか数秒の間にヤッカイの分子達はすべて消滅しました。あまりに鮮やかな攻撃にヤッカイは言葉を失いました。そして、ふと背後にある石垣に戦慄を覚えるような気配を感じ、ヤッカイは振り返りました。これまで見てきた巨大な石垣が、更に大きく感じさせるような威圧感がありました。巨大な石垣、その上に消滅したはずの天守があったのです。ヤッカイは見えない敵に焦りながらも、上方に攻撃しました。しかし、手応えはありません。警戒しながらヤッカイは、後ろにひっくり返りそうならいに顔を上げると、まるで月から舞い降りて来るかのような、御姫様の人影が見えました。少女はゆっくりと高取城の天守に、足を下ろしました。その人物は、ヤッカイもよく知っている者でした。

「まさか! あなた!」

ヤッカイは腹立しげに歯を食いしばり、その人物の名を呼びました。

「・・・・・・高取!」


 竜泉寺。

三人とも驚いて泉を見ていました。

「あれが・・・・・・」

稲村の言葉の続きを、観音が言います。

「高取ちゃん!?」

子角仙人も信じられない様子で言います。

「高取が・・・・・・ 蘇ったのか!?」

注目の的の高取。その表情はプッとほっぺたをふくらませて、眉毛は少しつり上がり、目尻は少し涙目でした。

観音は言いました。

「良かったです! 本当に良かったです!」

子角仙人もまだ現状を受け入れられない様子ながら、頷きました。

「(高取が蘇った!? では、あの猿は、高取が復活するまで代わりを務めておったという訳なのか。自分ですら正体も分からず、高取の山を守り続けていたか。あの者もまた、高取山の守り神だったのじゃ)」

観音は、子どもが拗ねて怒っているような高取の表情を見て、尋ねました。

「高取ちゃん、とっても怒っています!」

子角仙人は答えました。

「いや、高取は普段からあんな表情じゃ」

「そうなのですか?」

「しかし、今の状況からみて、本当に怒っているのかも知れんな」

観音は再び泉に映る高取の顔をマジマジと見直しました。

「(なんだかちょっとややこしいです・・・・・・)」

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