114.みんなが注目する中
みんなが注目する中、
赤い魚は、海の主のまん前を目指して、
硬い岩盤の上を、ポンポン・・・と進んでいきます。
まん前にたどり着くと、そこで止まり、
主の方へ向き直しました。
自分の体の何百倍もありそうな、その巨大な顔を見上げ、
ペコリと頭を下げます。
海の主が、うなずき返すと、
大イカは、
自分の長い足を1本、真上に高く伸ばし、
その体勢のまま少し待って、
それから、大きな声で言いました。
「始め!」
赤い魚は、
その瞬間、尾ビレで岩盤をけとばしました。
赤い魚のダンスが、とうとう始まったのです。
まずは、
広々とした会場を、ぐるっと大きく回っていきます。
跳ねるのが短すぎたり、長すぎたりしないよう集中し、
きれいな丸い円を描いていきます。
海の生き物たちの前を通ると、ヒソヒソ声が聞こえました。
小さな笑い声も、ときどき交じっています。
でも、赤い魚は、
そんなの、ちっとも気にしませんでした。
真剣な顔つきのまま、岩盤をリズムよくけとばしています。
広い会場を、少しずつポンポンと回っていきます。
主のまん前に、ふたたび戻ってきました。
次は、左に小さく5周です。
赤い魚は、
細かく何度も海底をけとばし、せっせと小さく回ります。
そして、回りながらも、
さっきの夢で見た、ヒカリの魚のダンスを思い出していました。
星の海をバックに、
気持ち良さそうに、のびのびと泳いでいたヒカリの魚。
キラキラの輪っかを大きく外れて、歌まで歌っていました。
赤い魚は、
左に回りながら、思わず笑ってしまいました。
そのまま、
尾ビレを海底に、思いっきりビターンと叩きつけます。
高く高く、ぐんぐんと上がっていき、
海の主の、丸い頭のテッペン近くまで来て、
そうして、それから、
ヒカリの魚の、自由ほん放なダンスを思い浮かべつつ、
ゆっくりクルクル下りてくるとき、
そのときになって、
赤い魚は、ようやく気がついたのです。
あのダンスは、練習ではなかったことに。
赤い魚のために、踊っていたことに。
海底に下りた赤い魚は、
すぐさま、またジャンプをします。
小さく、軽く、ひかえめに。
ふわっと浮いて、
後ろへ、くるりん・・・と回って、
海底に下りると、
また、すぐにジャンプ。
くるりん。
ジャンプ、くるりん。
ジャンプ、くるりん。
そこら中で、
ジャンプと、くるりんをくり返します。
海の生き物たちは、
お互いに顔を見合わせると、声を上げて笑い始めました。
「なんだい、あのヘンテコな踊りは?」
「さぁ?、頭がおかしくなったんじゃないの」
赤い魚は、
しかし、いさい構わず、
あちらこちらで、
ぽーん、ぽーん・・・と、元気よく跳ね回ってます。
そして、そうしているうちに、
やがて、自分の目も回してしまいました。
ジャンプして、くるりん・・・のテッペンを過ぎたところで、
どっちが上でどっちが下か、わからなくなりました。
まっ逆さまに頭から落っこちていき、
おでこを硬い岩盤に、ゴツンと打ち付けてしまいます。
笑い声が、ドッと起きました。
赤い魚は、
でも、全然へこたれません。
お腹を上にして、おでこを打ち付けた体勢から、
そのまま背中を海底にベッタリとくっつけ、寝転ぶと、
その寝転んだ勢いを利用して、さらに回転し、
なんと、
今度は自分の尾ビレを足にして、
岩盤の上に、
姿勢良く、ピーンと立ってしまいました。
体が傾きそうになるたびに、
赤い魚は、右や左へ細かくジャンプし、
まっすぐ上を向いたまま、どうにかバランスを取っています。
「おいおい、
魚なんだから、ちゃんと泳げよ」
「ムリだって。
アイツ、オレたちと違って、
うまく泳げないんだから」
「あの子、
あんなカッコ悪いダンスで、本気で優勝が狙えると思ってるわけ?」
「思ってるんじゃない?。
案外、自分ではカッコイイと思ってるのかもよ?」
赤い魚をバカにする観客たちの、そうしたたくさんの声を聞き、
ついにガマンできなくなった大イカが、
足を10本とも振り上げ、まっ黒いスミを辺りに漏らしつつ、
声を荒らげて言いました。
「こら!。
お前たち、ダンスの最中だぞ!。
せいしゅくに!、せい――」
そのとき、大イカの顔の前に、
茶色くて太い足の先っぽが、ぬうっと現れました。
大イカは、
動かしていた足を止め、静かに下ろすと、
海の主の方へ、向き直しました。
そして、
主の巨大な顔を見上げたまま、言葉を待っていると、
海の主は、その目を会場に向けたまま、
少ししてから、
何も言わずに、顔を左右にゆっくりと振りました。
「主さま、
しかし、これでは・・・」
大イカが、そう口にして食い下がると、
海の主は、
やはり何も言わずに、顔を左右に振りました。
大イカは、
しばらくの間、海の主を見上げていましたが、
やがて、
「わかりました。
主さまが、そうおっしゃるのなら・・・」
と言うと、ふたたび会場の方へ向き直しました。
顔の前にあった、主の足の先っぽが、
横へ引っこんでいきます。
大イカは、
辺りに漂っていた自分のスミを見て、それを足先で追い払うと、
そのまま少しだけ何かを考え、
それから、
視線を、また正面へ戻しました。
海の主は、じぃっと見ていました。
ギョロッとした、まっ黒い大きな2つの目で、
広い会場の、まん中を、
じぃっと見ていました。
その、会場のまん中では、
小さな赤い魚が、
フラフラしながらも、まだ立っていました。
まっすぐ上を向いたまま、あっちこっちに体をくねらせ、
倒れないよう、
いっしょうけんめい、がんばっています。
海の主は、
その、赤い魚をじぃっと見ていました。
赤い魚は、
上を向いたまま、バランスを必死に取りつつも、
楽しそうに、幸せそうに、
明るく、優しく、
穏やかに、
笑っていました。
赤い魚は、しばらくすると、
立ったままで、観客たちの方にピョンピョンと移動し始めました。
「うわ、こっちに来るぞ」
「ぶつかる、ぶつかる。
あっち行けよ」
赤い魚は、
会場に居並ぶ海の生き物たちの、まん前を跳ねていきます。
上を向いたまま・・・でしたから、
もちろん、
周りを見ることなんか、できません。
どの辺りが会場の端っこなのか・・・は、
上の方から赤い魚を見下ろしている観客たちの位置で、
そして、
その下の、海底にいるはずの観客たちの声の近さで、
見当をつけていました。
だから、
会場の端っこの、だいたいの位置は、
見なくても、わかっていました。
でも、いっぽう、
自分の真下の様子は、どうしたってわかりません。
ですから、
赤い魚は、海底のちょっとしたデッパリに気づけませんでした。
ピョン、と跳ねたときに、
尾ビレの先っぽが引っかかりました。
あっ・・・と思ったときには、
もう、体が傾いてました。
硬い岩盤が、顔にどんどん近づいてきます。
赤い魚は、倒れこんでいく勢いをそのまま使って、
とっさに、前にクルッと回りました。
そうして一回転し、尾ビレから着地して、
何事も無かったかのように、
立ったまま、ふたたびピョンピョンと跳ねていこう・・・と思っていたのですが、
残念ながら回りきれませんでした。
斜めの体勢のまま、尾ビレから着地し、
その瞬間、
反射的に、思いっきり海底をけってしまいました。
思わず、顔をしかめます。
けれども、すぐに表情を戻すと、
そのまま、
岩盤の上に、ドサッと倒れこみました。
横になったまま、おとなしくしています。
動けませんでした。
「おい、どうした。サボるんじゃねぇよ。
さっさと起きろよ」
「もしかして、これで終わり?。
だったら、すぐに引っこみなさいよ。
そこにいるとジャマだから」
たくさんの心無い言葉が、一斉に投げつけられます。
赤い魚は、
しかし、ツラそうな表情は見せませんでした。
穏やかに、ほほ笑んだまま、
ただひたすらに、じぃっと堪えています。
そんな中、
上の方から、子どもたちの声が聞こえてきました。
「ねぇねぇ、
あの赤い子のダンス、
ホントに、もうオシマイなのかな?」
「どうなのかなぁ。
疲れちゃって、
それで、あそこで寝っ転がって休んでるだけじゃないかなぁ・・・、
たぶんだけど」
赤い魚は、話し声の方を見上げてみます。
色とりどりの、たくさんの魚たちに交じって、
マンボウの子どもが3ひき、
高いところで、プカプカと浮いていました。
まん丸い目で、おちょぼ口の、
ちょっとトボけた感じの、ぼーっとした顔が、
仲良く3つ横に並んでいて、
その3つともが、海底で倒れたままの赤い魚を見ています。
「休んでるだけかぁ。そうだといいなぁ」
まん中の1ぴきが、
ぼーっとした顔のまま、口だけをちょっと動かして、
そう言いました。
「うん、そうだといいね」
右側の1ぴきが、
やはり、ぼーっとした顔のままで口だけをちょっと動かし、
そう返事をしました。
左側の1ぴきは、
何も言わずに、
ぼーっとした顔のままで、小さくうなずきました。
「私、もっと見たい」
「うん、もっと見たいね」
「あの赤い子のダンス、すっごくおもしろかった」
「うん、すごくおもしろかった」
「早く、また踊ってくれないかなぁ」
「うん。
早く、また踊ってほしいね」
その2ひきの話を聞いていた、左側の1ぴきは、
ぼーっとした顔のままで、
赤い魚を見ながら、
もう一度、小さくうなずきました。
また、別の子どもたちの声が聞こえてきました。
今度は、すぐ近くからです。
「兄ちゃん、見て見てー。
僕、できたー」
「オレだって、できてるぞ。
そっちこそオレのを見ろよ」
「やだよー。
兄ちゃん、ヘタクソなんだもん」
「ちょ、ちょっと慣れてなかっただけだ。
コツはつかんだ」
「僕もつかんだ」
「オレのがつかんだ」
「僕のがつかんだ」
「オレ」
「僕」
「オレ!」
「僕!」
赤い魚は、声のする方へ目を向けます。
2ひきのオレンジの魚が、
さっきの赤い魚のマネをして、尾ビレで海底に立っていました。
両方とも、
まっすぐ上を向いたまま、体をクネクネと忙しなく動かしていて、
いっしょうけんめいバランスを取っています。
「おーい、
まだ立ってるかー?」
「まだ立ってるよー。
兄ちゃんはー?」
「オレも、まだ立っ・・・あ、
ちょっ、ちょっ」
「兄ちゃん?」
「・・・」
「兄ちゃん、どうしたの?」
「・・・ふぅ、危なかったぁ。
あと少しで倒れるとこだった」
「えー、早く倒れてよー。
僕、そろそろ限界だよぅ」
「オレは、まだまだ粘れるからな。
コツはつかんだ」
「えー」
「・・・」
「ねぇ、兄ちゃん」
オレンジの魚の1ぴきが、まっすぐ上を向いたまま呼びかけると、
もう1ぴきのオレンジの魚は、動きを止めました。
そちらへ顔を向け、聞き返します。
「なに?」
「赤いお魚さん、まだ踊り出さないよね?」
「・・・うん、まだみたい」
「僕、
あのお魚さんのダンス、すごい好きー。
あんなダンス、初めて見たー」
「オレも、あんなの初めて見た」
「すっごく楽しそうだった」
「うん、楽しそうだった」
「僕、
次のダンス大会で、あのお魚さんみたいなダンスを踊るんだ。
絶対に踊るー」
「じゃあ、オレといっしょに出ようぜ」
「え、兄ちゃんも出るの?」
「うん。
オレも、あのダンスを見てたら出たくなった」
「わーい、兄ちゃんといっしょだー。
ワクワクするー」
「うん、いっしょにがんばろうぜ」
「・・・ねぇ、兄ちゃん」
「なに?」
「あのお魚さん、まだ踊り始めないよね?。
僕、絶対に見逃したくない」
「だいじょうぶだよ。
まだ、あそこで寝っ転がってるから」
「良かったー・・・って、アレ?、
立ったままなのに、どうして赤いお魚さんが寝っ転がってるのがわかるの?。
見れないじゃん」
「え?。
いや、えっと、その・・・。
あ!、
ちょうどさっき、だれかの話し声が聞こえたんだよ。
まだ寝っ転がってる、ってさ。
それで、わかったんだ。
実際に見たわけじゃないぞ。
ホントだぞ」
そう口にしながら、オレンジの魚は、
|あわてて体をタテにして、上を向きました。
そのまま、尾ビレの先を海底へ下ろしていき、
もう1ぴきの、オレンジの魚の隣に、
ふたたび、こっそりと立ちます。
「次は、どんな踊りを見せてくれるのかなぁ」
「どんな踊りを見せてくれるんだろうな」
「楽しみだね」
「うん、楽しみだ」
オレンジ色の魚の兄弟を見ていた赤い魚は、視線を戻しました。
痛みは、少しだけマシになっています。
赤い魚は、尾ビレをそうっと動かしてみました。
立てるか、試してみます。
ダメそうでした。
尾ビレの先が触れた途端、痛みが走りました。
でも、立たずに、
いつものようにポンポンと泳ぐことなら、何とかできそうです。
赤い魚は、覚悟を決めました。
尾ビレを浮かせ、
少し間を置いてから、えいやっ・・・と勢いよく振ります。
そうして岩盤を連続でけとばし、会場中をあっちこっち動き回ります。
笑い声が、ドッと起きました。
「なーに、あれ?。
まるでフナムシじゃない」
「あのデカ目、死んだんじゃなかったのか」
「だっさ。ちゃんとしたダンスを踊れよ」
聞こえてくる声の多くは、そうした赤い魚への悪口でしたが、
でも、ときどき、
赤い魚の、そのダンスを喜ぶ声も交じっていました。
「おもしれー。
魚でも、こんなに自由に海底を動けるんだな。
知らなかったよ」
「どうやったら、
あんなふうに、速く正確に海底をけとばせるんだろう。
うまいなぁ。ほれぼれする」
「また初めて見るダンスだ。
兄ちゃん、
あの赤いお魚さん、やっぱりすごいね」
赤い魚は、
笑顔のまま、辺りをちょこまかと動き回ります。
右、左、右、左・・・と、すばやくジグザグに動いていき、
次は、
会場の端から端へと、一直線に、
岩盤の上を滑るようにして、かっ飛んでいきます。
会場の端のちょっと手前まで来ると、体の向きをクルッと変え、
次に目指すべき端の方を見すえると同時に、まず1回めのけとばしで急ブレーキをかけ、
続く2回めのけとばしで、
また、かっ飛んでいきます。
そうやって、広い会場を、
タテヨコ斜めに、びゅーん、びゅーん、びゅーん・・・と、
何度も何度も往復します。
赤い魚への悪口は、まだ続いていました。
でも、その悪口は、
赤い魚が会場をかっ飛ぶたびに、だんだんと少なくなっていきました。
「あの子、
うまく泳げないわりには、意外とやるじゃない」
「ヘンテコなダンスだけどさ、
見てるとおもしろいし、そんなに悪くないかも」
「楽しそうだなぁ。
オレたちも、あとでマネしてみようぜ」
そうした声が、
代わりに、
ちょっとずつ、ちょっとずつ増えていったのです。
しばらくの間、辺りをかっ飛んでいた赤い魚は、
会場の中央に差しかかったところで後ろを向き、
けとばしのブレーキをかけて止まりました。
そのまま、パタン・・・と横に倒れて、
体の片面を海底に押し当て、右や左へ勝手に動かないようにして、
その場でクルクルと、勢いよく回り始めます。
「いいぞー」
だれかが歓声を上げました。
すると、すぐさま会場の別のところから、
また、歓声が上がりました。
「速い速ーい」
観客たちの歓声が、
会場のあちこちから、続々と上がります。
「すげー」
「あんなの見たこと無いわ」
「あのクルクルスピン、最高にイケてるぜ」
「だったら、
クルクルスピンじゃなくて、もっとイケてる名前を付けなさいよ。
アンタって、ほんとセンス無いんだから」
「ムッ。
じゃあ、センスあるお前の考えたイケてる名前を教えろよ」
「フナムシスピン」
「お前のセンス、絶望的じゃねぇか」
笑い声が起きました。
でも、それは、
今までの、イヤな笑い声ではありませんでした。
楽しくて嬉しい、温かな笑い声でした。
赤い魚は、
そのクルクルスピンを、会場の色々な場所でひろうしました。
あっちに行ってクルクル。
こっちに行ってクルクル。
海の生き物たちは、
赤い魚が自分たちの近くに来ると、声を上げて歓迎しました。
「おー、来た来た」
「待ってたぞー。早く見せてくれ」
赤い魚は、
観客たちのために、せっせとクルクル回ります。
いっしょうけんめい、心をこめて回ります。
笑顔でした。
もう、無理して笑う必要はありません。
赤い魚は、
今は、自然に笑っていました。
回るスピードが、だんだんと落ちてきました。
そろそろ限界です。
クルクルをちょっと早めに切り上げた赤い魚は、
体を起こすと海の主の方に向き直し、
そちらへ、ポンポンと泳いでいきます。
主のまん前に着くと、
赤い魚は、
尾ビレを思いっきり岩盤に叩きつけ、ジャンプしました。
主の目の高さの、半分のところにも届きません。
そのまま、きれいにクルクルと下りていきます。
海底に、フワリと着地した赤い魚は、
少しの間、
その場で横になったまま、じっとしていました。
しかし、
やがて、体をちょっとだけ起こすと、
斜めになった体勢のまま、
主の方へと、静かに向き直しました。
頭をペコリと下げ、
それから、観客たちの方を振り返り、
そちらにも、頭をペコリと下げます。
「楽しかったわー」
「次のダンス大会も頼むぞー」
「そうそう。
あのイケてるフナムシスピン、
また私たちに、ひろうしてちょうだいよ」
「その前に、
まずはお前は、イケてる名前をオレたちにひろうしろ」
「えー、すごくイケてる名前じゃない」
「そう思ってるのは、この広い海の中でお前だけ」
「えー」
赤い魚は、
そうした観客たちの声を聞き、笑いをこらえながら、
ゆっくりポンポンと海底をけとばし、
自分の元いた方へ、斜めになった体勢のまま帰っていきました。
観客たちの間をそのまま通り抜けて、
その奥にある大岩のところにたどり着いた赤い魚は、
会場の方を振り返ってから、大岩に寄りかかりました。
向こうの方では、
大イカが、
足を1本、まっすぐ高く上げています。
もうすぐ、
また、始まりの合図が聞こえてくるはずです。
「あの・・・」
ふいに、
赤い魚の目の前に見知らぬ魚が泳いできて、声をかけました。
「え?。
あ、はい、何でしょう」
「その・・・」
「はい」
「オレ、さっきアンタの悪口を言ってたんだ。
たくさん言った。
それで謝りに来たんだ。
ごめんよ」
その魚は、そう言って頭を下げました。
赤い魚は、
一瞬、ちょっと驚いた表情をしましたが、
すぐに、優しくほほ笑んで、
言葉を返しました。
「ワタシ、
ちっとも気にしてないから、だいじょうぶよ。
でも、
わざわざ謝りに来てくれて、ありがとね」
「アンタのダンス、良かったよ。
次のダンス大会も、また出ろよな。
オレ、きっと見に行くからさ」




