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Summer Echo  作者: イワオウギ
III
115/304

113.「・・・?、ここはいったい・・・」

「・・・?、

 ここはいったい・・・」


目を()ますと、

そこは、

(おぼ)えのない、どこかの(どう)くつの中でした。

(あた)りはうす(ぐら)く、広々(ひろびろ)としています。


赤い魚は、

(よこ)になっていた(からだ)()こそうとしましたが、すぐさま(うご)きを()めました。

(からだ)の下に、

その自分(じぶん)(からだ)よりも、ひと(まわ)り大きなコンブの()()かれています。


(コンブの()?。・・・どうして?)


(よこ)になったまま、ちょっとだけ(かんが)えてみましたが、

わかりません。

あきらめて、(からだ)()こすことにしました。

あちこちキョロキョロと見(まわ)しつつ、(あた)りをポンポンと(すこ)しうろついたあと、

()まって、

(かお)を上へ()けました。

()ビレで(おも)()りジャンプしても半分(はんぶん)(とど)かないくらいの、ずっとずっと(たか)いところに、

天井(てんじょう)の、ゴツゴツとした岩肌(いわはだ)が、

ところどころに、うっすらと見えています。


「おや、お目()めかい?」

だれかの(こえ)が、(うし)ろの(ほう)から()こえました。

()(かえ)って、そちらを見ると、

カニが1ぴき、

(よこ)()きのまま、トコトコと(ちか)づいてきていました。

ハサミの大きさが、

左右で、だいぶ(ちが)っています。

右のハサミは自分(じぶん)(からだ)よりも大きいのですが、

左のハサミは、

カニの、その小さな口と(おな)じくらいの大きさで、

とてもかわいらしいものでした。


「あぁ、だれかと(おも)ったらカニさんでしたか。

 おはようございます」

赤い魚は、(あたま)をペコリと下げました。

カニは、

横歩(よこある)きで(ちか)づきつつ、

かわいらしい(ほう)のハサミを上げて、あいさつを(かえ)しました。

そして、そのまま赤い魚の(まえ)までやって()てから、

横向(よこむ)きの(からだ)(まわ)して、赤い魚の(ほう)()(なお)し、

(たず)ねました。

「もう、だいじょうぶかい?」


赤い魚は、キョトンとしました。

「え?、だいじょうぶ・・・って?」


「あぁ、(おぼ)えてないのか・・・。

 あんた、さっき(そと)(たお)れたんだよ」


(たお)れた?」


「うん」


「ワタシが?」


「そう」


「えっと、・・・どうして?」


カニは、

小さい(ほう)のハサミで、目の(うし)(あた)りの甲羅(こうら)をなでていましたが、

(すこ)ししてから、そのハサミを下ろし、

赤い魚を見て、

(たお)れた理由(りゆう)(こた)えました。

「たぶん、あがっちゃったんじゃないかなぁ・・・」


「え?、あがった?。

 何で?」


大勢(おおぜい)に、一度(いちど)に見られてさ」


「・・・大勢(おおぜい)に」


「で、

 (たお)れたあんたを、会場(かいじょう)(すみ)っこに(はこ)んでさ、

 そこで休ませておこう・・・って、大イカのダンナは()ったんだけど、

 (うみ)(あるじ)さまが、

 それならば、もう(すこ)()()いた場所(ばしょ)(ほう)()かろう・・・って、おっしゃってさ。

 (ちか)くの(いわ)のすき()にこっそりと()てておいたコンブを、オレたちでまた()()り出しきて、

 このハサミを使(つか)って・・・、」

カニは、

大きい(ほう)のハサミを赤い魚の(まえ)()し出し、チョキチョキと(うご)かしながら、

さらに(つづ)けました。

「こうして、ちょうどいい大きさにちぎってさ。

 あんたを()せて、ここまで(はこ)んできたってわけ」


「ということは、

 もしかして、ここは・・・」

そう口にしつつ、

赤い魚は、あらためて(あた)りを見(まわ)します。


「そう、(あるじ)さまの(いえ)

 オレも(はじ)めて入ったよ。

 入り口も(ひろ)いけどさ、中はもっと(ひろ)いんだな。

 ビックリしたよ。

 ・・・で、さっきの質問(しつもん)なんだけどさ、

 どうなの?」


赤い魚は、

カニの(ほう)()(なお)しました。

「え?。

 どうなの、って?」と()(かえ)します。


カニは(こた)えました。

「だいじょうぶか、ってこと」


「あ、

 えーと、だいじょうぶです。

 ・・・たぶん」


「たぶん・・・か。

 まぁ、それでもいいか」

そう()ったカニは、

小さい(ほう)のハサミで甲羅(こうら)をポリポリかきながら、(つづ)けて(たず)ねました。

「えっと、

 じゃあ、もう(おど)れるの?」


(おど)れる?。・・・あ!、」

(きゅう)大声(おおごえ)を上げた赤い魚は、

そのまま、

ものすごい(いきお)いで、まくし立てました。

「ダンス!。

 そうだ!、ダンス大会(たいかい)だった!。

 ねぇ、まだやってるの?。

 やってるよね?。

 ()わってないよね?。

 ワタシ、

 それに出て、どうしても(おど)らなきゃいけないの。

 いっぱいいっぱい練習(れんしゅう)したの。

 がんばったの。

 ねぇ、どうなの?。

 まだやってる?。

 ねぇ、ねぇねぇね――」

「あー、あー、わかったよ。

 わかったから、ちょっと(はな)れて!。

 (はな)れてったら!」

カニは、

自分(じぶん)のすぐ目の(まえ)にせまってきていた赤い魚の(かお)を、

その大きなハサミで、どうにか()(かえ)しました。

そして、

()こえないように小さな(こえ)で、やれやれ・・・と、つぶやいてから、

赤い魚を見て()いました。

安心(あんしん)しなよ。

 ダンス大会(たいかい)は、まだ()わっていないよ。

 休けい中なんだ、(いま)は」


「あぁ、よかったぁ・・・」

赤い魚は、ほっとしました。


「で、(おど)れるの?・・・って()こうと(おも)ったけど、」

カニは、

赤い魚の、

すきを見て、またこちらにせまろうとウズウズしている姿(すがた)を目にして、

さらに(つづ)けました。

「そんなの、()くまでもないか・・・」


「はい!、()くまでもないです!。

 ワタシ、(おど)れます!」

赤い魚は、元気(げんき)いっぱいに(こた)えました。


小さな(こえ)で、

やれやれ・・・と、つぶやいたカニは()いました。

「じゃあ、いっしょに会場(かいじょう)(もど)ろうか。

 ・・・と(おも)ったけど、

 やっぱり、ちょっと()っててよ。

 (いま)から、あそこの――」

「イヤです!、

 ワタシ、ちょっと()ちません!。

 すぐに(もど)ります!。

 出口は、あっち?。

 それとも、こっち?」

赤い魚が、

()ビレで小さくジャンプし、あっち(・・・)こっち(・・・)にそれぞれ()きを()えて(たず)ねると、

カニは、

また、

やれやれ・・・と、小声(こごえ)でつぶやきました。

こっち(・・・)(ほう)にゆっくりと()(なお)り、

小さい(ほう)のハサミを自分(じぶん)(よこ)()け、口を(ひら)きました。

(ちが)(ちが)う、そっち。

 まっすぐ()って、突当(つきあた)りを左。

 あとは、そのまま目の(まえ)(さか)を上っていけば出れ・・・、

 ()っちまいやがった。

 せっかちなヤツだ・・・」

カニは、

赤い魚の、ポンポン()ねる(うし)姿(すがた)を見ながら、

小さい(ほう)のハサミで甲羅(こうら)をポリポリかくと、

そのまま(よこ)()いて、(ある)き出そうとしました。


「カニさーん!」

赤い魚の(こえ)()こえました。

足を()めたカニは、

やれやれ・・・と、小さくボヤいてから()(なお)しました。

赤い魚に(たず)ねます。

「なに?」


(はこ)んでくれて、ありがとー!」


「・・・()(わす)れてたけど、

 上り(ざか)は、

 途中(とちゅう)()がり(かど)からは、まん中を(すす)むんだぞー。

 大きい石が(すく)ないし、

 段差(だんさ)のキツイ場所(ばしょ)も、そんなに()いからー」


「はーい!」



赤い魚が(かど)()がると、

大小さまざまな石が(ころ)がっている、(はば)(ひろ)い上り(さか)()こうに、

(どう)くつの出口がありました。

(そと)景色(けしき)は、

ここからでは、ほとんど見えません。

出口の中央(ちゅうおう)に、

(うみ)(あるじ)茶色(ちゃいろ)(うし)姿(すがた)が、大きく高々(たかだか)とそびえ立っています。

赤い魚は、

カニに(おそ)わったとおり、(みち)のまん中を(すす)んでいきました。

(さか)を、ポンポンと上っていきます。


出口に()きました。

目の(まえ)にある、

(うみ)(あるじ)の、巨大(きょだい)(うし)姿(すがた)を見上げて、

それから、(かお)を左へ()け、

(つぎ)に、右へ()けたとき、

(うみ)(あるじ)の、(ふと)い足の()こうに、

大イカが(あらわ)れました。


「カニのヤツ、

 赤い魚の様子(ようす)を見てくるだけなのに(おそ)いな・・・。

 まさか、またサボってるんじゃないだろうな。

 だいたい、(なん)であんなところにコンブを()てたんだ。

 どこかに()ってけ、って()ったら、

 普通(ふつう)、もっと(とお)くに()っていくだろ。

 それを(なん)であんな(ちか)いところに・・・」


「あ、大イカさん」

赤い魚が(こえ)をかけると、

大イカは、すぐに()()きました。

「お、赤いお魚さん。

 もう、だいじょうぶなのかい?」


「はい、だいじょうぶです」

赤い魚は、

そう(こた)えつつ、

大イカの(ほう)に、ポンポンと(およ)いでいきます。

手前(てまえ)(よこ)たわっている、(あるじ)のたくましい足を、

1本、2本とくぐり()け、

大イカの(まえ)まで()ると、

(かお)を上げて、あらためて()いました。

「ワタシ、(おど)れます」


大イカは、

(すこ)しの(あいだ)、赤い魚を見たあと、

(うみ)(あるじ)を見上げ、

(こえ)を大きくして()いました。

(あるじ)さま、

 先ほどの赤い魚、もうダンスを(おど)れるそうです。

 この休けいを()わらせたあと、(おど)ってもらおうと(おも)っていますが、

 それで、よろしいでしょうか?」


(うみ)(あるじ)は大きな(からだ)をよじって、(かお)をこちらへ()けました。

ギョロっとした(くろ)い目で、

自分(じぶん)(かお)の下にいる大イカと、

さらに、その足元(あしもと)にいる小さな赤い魚をじぃっと見ています。

そして、

(すこ)ししてから、重々(おもおも)しい(こえ)(ひび)かせ、

「よかろう。

 では、

 休けい()(おど)ってもらうことにしよう。

 赤きモノ、ダンスを(たの)むぞ」

()って、

(かお)を、また正面(しょうめん)(もど)しました。


大イカは、赤い魚を見て、

「よし。

 じゃあ、オレといっしょに会場(かいじょう)(もど)ろう」

と、(こえ)をかけ、

会場(かいじょう)(ほう)()(なお)しました。

そのまま、

10本の足を使(つか)って(かた)岩盤(がんばん)次々(つぎつぎ)とつかんで、(もど)っていきます。


赤い魚は、

「はい!」

元気(げんき)よく返事(へんじ)をして、

大イカの(うし)ろを、

ポンポンと、ついていきました。



(うみ)(あるじ)()ち上げてくれた、立派(りっぱ)な足の(よこ)(とお)()け、

(どう)くつの(そと)に出ると、

(あた)りは、(すこ)(あか)るくなりました。

(たの)しそうにはしゃぐ、たくさんの(こえ)が、

あちこちから()こえてきます。

大イカは、

足を1本、真上(まうえ)(たか)()ばし、

(こえ)を大きくして、(うみ)の生き(もの)たちに()いました。

「せいしゅくに!。

 休けいは、もう()わりだ。

 せいしゅくに!、せいしゅくに!」


大イカは、その()も、

せいしゅくに!・・・と、大きな(こえ)()(つづ)け、

14回目(かいめ)()()えたところで、

(あた)りは、ようやく(しず)かになりました。


大イカは、

会場(かいじょう)()こうに居並(いなら)(うみ)の生き(もの)たちをざっと見(まわ)すと、

それまで上げていた足を、そっと下ろしました。

(かお)(うみ)(あるじ)(ほう)()け、うなずきます。

そして、

また会場(かいじょう)へと()(なお)し、みんなに()げました。

「ダンスの順番(じゅんばん)変更(へんこう)になった。

 (つぎ)は、このモノに(おど)ってもらう」


そう()った大イカは、

(からだ)をひねって、(うし)ろを()(かえ)ります。

赤い魚に()かって、小さくうなずくと、

赤い魚も、

大イカの(かお)を見上げたまま、(だま)ってうなずき(かえ)します。

そうして、そのまま(よこ)()き、

赤い魚が、大イカの(うし)ろから出たときでした。

だれかの(こえ)()こえました。

「おい・・・、

 アイツ、さっき(たお)れたヤツじゃないの?」


赤い魚は(からだ)をビクッとさせ、

その()()まってしまいました。


「あぁ、アイツか。(おぼ)えてる(おぼ)えてる。

 ダンス大会(たいかい)()たくせに、ダンスをまったく(おど)らずに、

 ワタシ、(なに)をすれば・・・・とか()ってた魚だろ?」


「そうそう。

 ろくに(およ)げないくせに、(なに)(おど)るつもりだったんだか」


赤い魚は、表情(ひょうじょう)をこわばらせていきました。

(すこ)(おく)れて、

ゆっくりと(かお)をうつむけていきます。


「ねぇねぇ、

 あの目、(なん)であんなに大きいわけ?」


()らないよ。

 (なに)かの病気(びょうき)なんじゃないの?」


「わあ。

 じゃあ、うつらないように気をつけないとねー」


()(こえ)は、どんどん()えていきました。

見るに見かねた大イカが、(こえ)を大きくして()いました。

「こら、お(まえ)たち!。せいしゅくに!。

 せいしゅくに!」


足を10本とも(うご)かし、何度(なんど)注意(ちゅうい)をくり(かえ)しますが、

しかし、

()(こえ)は、いっこうに(おさ)まりません。


「どうせ、また(たお)れるんだろ。

 時間(じかん)のムダだよ」


「あーあ、

 せっかくのダンス大会(たいかい)なのに、シラけるよなぁ・・・」


優勝(ゆうしょう)なんか、どうやったってムリなんだから、

 さっさと1ぴきで(かえ)ればいいのに」


「ほんと、ほんとー」


赤い魚は、

やがて、ガクガクと(ふる)え出しました。

(あたま)の中は、

もう、完全(かんぜん)にまっ白でした。

(からだ)が左右にフラフラし(はじ)めます。

左へ(かたむ)き、

今度(こんど)は右へ(かたむ)き、そのままもっと(かたむ)き、

そうして(たお)れそうになった、その瞬間(しゅんかん)!、

目の(まえ)景色(けしき)が、

(まる)ごとすべて、パッと()えて()くなりました。

(あた)りは、

(きゅう)に、まっ(くら)になってしまいました。


・・・いや、

正確(せいかく)には、まっ(くら)ではありません。

はるか(とお)くで、

小さな(ほし)が、またたいてます。

たくさんたくさん、

そこら(じゅう)で、またたいてます。

物音(ものおと)ひとつ()こえません。

ひっそりとしています。


赤い魚は、

突然(とつぜん)(あらわ)れた(うつく)しい星空(ほしぞら)を、

ただ、ぼう(ぜん)と見ています。

しかし、

(すこ)ししてから、ハッと気づきました。

あわてて右を()き、

(つぎ)に左を()き、

それから、(かお)を上へ()けました。


視線(しせん)()こう、星空(ほしぞら)の中。

ヒカリの魚の、まっ白な姿(すがた)がありました。

のっぺらぼうの(かお)を、

まっすぐこちらへ、心配(しんぱい)そうに()けています。


下にいる赤い魚は、

そのヒカリの魚を、じっと見上げていましたが、

しばらくすると表情(ひょうじょう)(すこ)(ゆる)めて、ほほ()みました。

そのまま、口を(ひら)きます。

「ありがとう。

 ワタシ、

 きっと、もうだいじょうぶ」


ヒカリの魚は、すぐに(かお)を上げました。

左に、クルリ、クルリ・・・と(いきお)いよく(まわ)(つづ)けます。

そして、ちょっとしてから(まわ)るのをやめると、

まっ白い(かお)を、ふたたび赤い魚の(ほう)()けました。

口をパクパクと(うご)かしてます。

赤い魚も、

(すこ)ししてから、口を徐々(じょじょ)(ひら)いていきました。

でも、途中(とちゅう)で、

また、ゆっくりと()じていきました。

2ひきの魚は、

上と下で、(しず)かに()()っています。



ヒカリの魚は、(かお)を赤い魚の(ほう)()けたまま、

()ビレの先を(よこ)()けました。

ちょっとだけ()()いてから、

その、(よこ)()けたままの()ビレを、

反対側(はんたいがわ)へ、スッ・・・と(うご)かします。

(あた)りを(つつ)んでいた星空(ほしぞら)が、

すべて、一瞬(いっしゅん)にして()()りました。

ヒカリの魚の姿(すがた)も、もうありません。

赤い魚の視線(しせん)の先には、

(いま)は、

きれいな(うみ)の、すき(とお)った水と、

そのずっと()こうで(ひろ)がる、どんよりとした(はい)色の(くも)り空しかありません。

いつもの(うみ)の、

いつもの光景(こうけい)です。



「おい、

 さっきから上を()いたまま(かた)まっているが、どうした?。

 だれもいないじゃないか。

 だいじょうぶか?」

大イカの(こえ)()こえました。

赤い魚は、

ほんの(すこ)しの()()いてから、ゆっくりと()(かえ)り、

(こた)えました。

「はい、だいじょうぶです」

(つづ)けて、大イカのすぐ(うし)ろへ目を()け、

「ありがとう、

 ワタシ、だいじょうぶだから」

()って、

コンブを()ってこちらに()ようとしていた、さっきのカニに、

(やさ)しくほほ()みかけました。


大勢(おおぜい)の、(うみ)の生き(もの)たちの(こえ)は、

先ほどよりも、だいぶ(おさ)まってはいましたが、

しかし、

まだ、ザワザワとしていました。

小さな(わら)(ごえ)も、

ときどき、どこからか()こえてきます。


大イカは、

赤い魚をまっすぐ見すえて、(たず)ねます。

「・・・(おど)れるのか?」


赤い魚も、

大イカの(かお)をまっすぐ見すえて、(こた)えます。

「はい、(おど)れます」


大イカは、

そのまま、赤い魚を(だま)って見つめて、

(すこ)ししてから、

(うみ)(あるじ)(ほう)へと()(なお)しました。

(あるじ)さま、

 このモノ、(おど)れると()っていますが、どうしま・・・あの、(あるじ)さま?、

 上を見上げて、どうされたのです?。

 だれもいないようですが・・・」


(うみ)(あるじ)は、

(かお)を上に()けたまま、(こた)えました。

(めずら)しい(きゃく)を見かけたので、ちょっとな・・・」


そして、

あらためて大イカの(ほう)へ目を()けると、

その重々(おもおも)しい(こえ)(ひび)かせて、()いました。

「この赤きモノは、

 もう、だいじょうぶであろう。

 ダンスを見せてもらおう」

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