40.天羽(あもう)
天羽
なっぴはタオの言葉に「確信」を得た、タオもヨミもマルマもそしてこの星のどんな神の力を使っても叶わなかった次元のシンクロナイズ。それをマンジュリカーナとして、なっぴは不完全ではあったが行った事があったのだ。虹の原石をちりばめた母のティアラ、マンジュリカの玉、虹色テントウのブローチ。それに変わるものは今ではただひとつしか残っていない。なっぴは最強の素材、天羽の糸に練り込まれた、虫人の王「ラクレス」「コウカ」の「角」の意味を知ったのだ。
「虫人は既に争うべき相手ではない」
なっぴは、そう叫び七色のコマンドスーツを天空に放り上げた。それは天に向けてゆっくり舞い上がって行く。どこからかその端をくわえる鳥が現れた。なっぴはそれを見てにっこりと微笑んだ。
「ありがとう、手伝ってくれるのね、ナナイロフウキンチョウ」
天空の彼方に七色の光が消えた。既にその役目を終えた「レインボー・スティック」はもとの「バィオレット・キュー」に戻ってしまっていた。それはテンテンから受け取った最初のアイテムだ。素肌をさらし、足下のキューを右手で拾い上げるとなっぴはこう唱えた。
「今、ここに『天地開闢[かいびゃく]』の祖、統べる大御神よ、現人とならん!」
そう、なっぴが生まれたままの姿で対峙する相手はたった一人だ。タイスケ、ミーシャ、セイレはそれをじっと見ていた。やがて凄まじい速度で地上に向け、七色の光が届いた。
それはコマンドスーツがほどかれ一筋の糸になったものだろう。なっぴはバイオレットキューをを糸車のように器用にまわし続け、それを絡めとっていった。絡めとられる糸はその端から鮮やかな赤色の布に変わっていった。
「その赤い布は、王国の筆頭巫女ラベンデュラ様のものだ、ありがとうマンジュリカーナ」
王国最長老のミネスが甦る。なっぴにそう言うと大ゾウムシの姿となり飛び去った。
「王国の巫女は巫女装束とは別に守護色の布を持つそれは門外不出の色にされている」
そうなっぴに教えたのは、虫人を選択した、初代ドルク「ヒラタ大臣」だ。
「老師はこの星で生きていく虫人たちを見守ろうとされたのに違いない。国民の大半は安住の地としてここに留まりたいはず。そのために真っ先に決断された。その方が再び旅立つよりもきっと……」
ドルクは少し寂しげに、次々と思い思いの方向に旅立つ虫たちを眺めた。なっぴはドルクのように「虫人」として生きる選択をした者をひとりひとり包み込んでいた。
「ドルク、私もここで見守りましょう」
ラベンデュラが先の大臣の隣に立った。ナノリアの女王にして、フローレスから生まれたフローラ三姉妹。王国の筆頭巫女「ラベンデュラ」の持つ力もついに尽きた。
「大臣、ラベンデュラ様、お久しぶりです」
ぺこりとお辞儀をして、なっぴがさらに新しい布を紡ぎはじめた。