41.呪縛
呪縛
オレンジ色の布が織られていく、それをじっと見ていたラベンデュラは、静かにドルクに語った。
「なっぴ、いえマンジュリカーナ様は私たちたちに何をなさろうとしているの。虫人たちを再誕させるだけではないのね」
「はい、あの様子では、おそらく次元のシンクロナイズだけではありません」
選択するのは、虫人自身。この星にとどまるのか、新たな星を求めるのか。ただ限りある一度の命を連れて……。虫人たちは発生の途中でその答えを決めなければならない。それをなかなか決められないものは、成長が止まる。決断したものは自立し、なっぴに礼を言って飛び立った。
名残惜しそうに、飛び去るミカドアゲハを見送り、スカーレットは姉の側に座った。
「由美子は、頑張りましたよ、お姉様」
「そうね、スカーレット、今までよく由美子を守りました。貴女が『パピィ』となり、由美子をいつも助けていたこと、知っていましたよ」
「それは私たち姉妹の使命、そうでしょう?」
新たにその話に加わったのは、フローラの三姉妹の末妹「バィオレット」だった。
「そうね、あなたの力を虹の原石に変え、七色テントウをデュランタに持たせ、人間界に送ったのも、全てはヒドランジアを覚醒させるため、そしてやがて来る『フローレス』の再誕のために……」
「お姉様、でもマンジュリカーナ様のあの動きは終わらない。私で終わりそうも無いわ」
虹のほこらの虫たちが飛び去り、玉虫たちの輝く光とともに「バィオレット」の黄色い布は三姉妹が初めて目にする色に変わりつつあった。
「フローレスを再誕させるのではないの、そしてわたしたちに課せられた。呪縛を解いてくださるのではないの?」
「黙って見ていなさい、バイオレット。あれは、もしかしたらヴィオラの守護色かも知れない……」
ラベンデュラがそう言った。なるほど次第になっぴが紡ぐ糸は、深い緑色に変わっていく。
「あの色の布は初めて見るわ」
スカーレットの言った通りだ。それは「リカーナ」が王国に残した「トレニア」の娘、エビネ国の女王の守護色だった。その緑色の布はなっぴを包み、その力を借りてなっぴはエビネ国の虫人たちを再誕させていった。まるでこの時のためにとっていたかの様に、水中で折り畳んでいた鞘ばねの下から薄い羽を開き、おびただしい数の水棲昆虫たちが一斉に飛び立った。
「スタッグ、あなたが乱暴な事言ったから、誰一人あいさつもしなかったのよ」
「母上、彼らはここに留まる方が幸せだと俺は思う。あれがエビネ国王の最後の命令だ」
「従わなければ首を切りとばす、は余計だったわね」
「あっはっは、やっぱりそうか」
そう言いながら向ってくる二人にスカーレットが後ろを振り返るように促した。
「見て、空を」
「おお、なんてこと……」
空に跳び上がった虫たちはエビネ国の文字を大空に書いていた。
「スタッグ様、いつまでもゲンチアーナ様とお幸せに」
「ヴィオラ様、長い間国民のためにお祈りをありがとうございました」
それを見て、さすがのスタッグもこらえきれず涙をこぼした。




