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白きオオカミを追いかけて.11



「――そんなこと言われても分からないよおー。スクナちゃん、なにか気付いた?」


 ヘタリと床に座り込んで、マキは宙に浮かぶ、“美しい妖精”に助けを求めた。彼女の側からは、難しい顔で考え込むキョウスケの姿と、真っ黒な水の中に埋もれていく、下の階層のミーナとヤストラが見えている。


「……キョウスケ様が居マス」

「そうだよねえ! やっぱり、キョウスケくんしか居ないよねえ! 気付いたことって言われてもォ、あそこには、やっぱりキョウスケくんしか居ないんだもの」


 そして、ちらりとマキは、下の様子を窺った。


「大変だよお。このままだと、ミーナちゃんとヤストラくんが沈んじゃう。スクナちゃんの力で、なんとか助けられないかなあ?」

「スクナが……デスカ?」

「この部屋の壁を、ぜーーーーんぶ、“ブッ”壊しちゃうとか」


 なかなか過激だ。


「……ウウ。申し訳ありませヌ、マキ様。スクナの〈秘術〉デハ、この建物はビクとも致しませヌ……」


 そう言って彼女は、本当に申し訳なさそうに表情を暗くさせる。そもそも〈式神〉が簡単に壊せるような建物であるならば、試練の意味がない。


「このスクナにもっと力がアレバ……」

「ああ違うの、スクナちゃん。さっきのは、私の独り言。勝手なこと言ってゴメンね」


 ズンと落ち込んでいる彼女は、やがて“なにか”に気が付いた――



 それはキョウスケの“頭上”――

 下の階層に浸水が迫る中、まるで海上に浮かぶ太陽のように、天井近くの壁面には、左右対称な球体が描かれていた。


「えーっ、あの模様が気になるの?」

「キョウスケ様の側からハ、なにも見えませんでしタ。デモ、こちら側では見えタ……アアッ、マキ様ッ」

「な、なあに! いきなりでビックリしたよお!」


 スクナはすっかり慌てふためいて、左右の壁を交互に示す。


「あちらは“半分”、そしてあちらの壁モ“半分”。キョウスケ様の真上の壁ニハ“マン丸”……これはスクナの妄想デスガ、なにかに“見立て”ているのではありませヌカ?」

「ミタテ? ホタテ?」

「もうマジメに聞いてくださいッ、マキ様! これハ、“月”ではありませヌカ?」


 どうやら、隠された謎の核心に迫ってきたようだ。


「――デスカラ、キョウスケ様の真上に描かれているのが“満月”。向かって左側ト、右側の壁に描かれているのが“半月”」

「じゃあスクナちゃん、私たちの上にあるのは……」

「そちらは見えなイ、“新月”デス! キョウスケ様ッ、オ伝えにスクナがすぐに参りマスッ!」




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