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探索開始……?.1


 うだるような暑さが連日続いている。

 

 気温は三十度を越えた。立っているだけで汗が滴り落ちる。





 そして学生には嬉しい、“夏休みまでのカウントダウン”が迫っている!





 日が経つごとに学生の心浮かれ、青い空に浮かぶ巨大な入道雲が恨めしく思えてくる今日この頃――


「……なんなのその格好は……特に、“そこのふたり”ッ、舐めてんの!」


 集合場所は『山口商店』の前。

 店の外に設けられた茶席からは、彼らを見送る暖かい眼差しを絶えず感じていた。



 草守レイトは声を荒げている。本日は土曜、学校は休みである。


 たまの休日に集まった『秘境倶楽部』(仮)のメンバーは、いつもの学校指定の制服を脱ぎ捨て、それぞれの格好をしている。


「まずは安井くん、服装がラフ過ぎる! なんなのそれは、アロハシャツ? それに下は短パン・サンダル……舐めてるわ。いいかしらッ!!! 私たちがこれから向かうのは、“人跡未踏の密林地帯”! もしも恐ろしい毒を持ったヘビに噛まれたら――」

「レイト。毒ヘビなんか、この島にいねーよ」


 すると銀の少女は、そうなの? といった表情をキョウスケに向ける。


「……まあいいわ。でも、そのシャツの派手さは論外よ。やり直し」

「ッて、やり直しってなんだよ! ココで脱げってことかッ!」


 草守レイトはキョウスケの全身をチェックすると「合格」と言った。

 その偏った判定に納得いかないのは安井のトラさんだ。


「それから足立さん」





 それは、初夏の離島に咲いた一輪の白百合――





 現れたのは、涼しげな白のワンピースを見事に着こなした可憐な美少女――足立ミーナだった。


 ミーナは被った白い帽子の下から、挑発的に草守レイトを見上げている。

「なにかおかしい? 草守さん」

「あらあら。もしかして、デートの待ち合わせかしら? お嬢さん、その大切な衣装を泥で汚したくはないでしょう? 今日のところは、お帰りになった方がよろしいかと」

「へえー。そちらこそ、“ご自分の格好”をもう一度、よくお確かめになった方が、よろしいんじゃありません? ……その釣竿はなんのつもり? それから、そのセンスの欠片もない“お帽子”。だって、それじゃまるで、島に来た釣り人じゃありませんかあ!」


 草守レイトの白い頬が、それを聞いて瞬時に真っ赤に染まる。

 青のハンチング帽を被る美少女の肩には、紫色の布に包まれた、“長い棒状の物体”が立て掛けられている。


「それでバケツを持ったら――アッハハハ! 完全に『釣り少女』よ! なんだかそう言えば、バケツがないと全体のバランスが悪いわね。そこの『山口商店』で、私が買って差し上げましょう!」

「バッ、バカなこと言わないで! これが……これが“釣り竿”なはずないじゃないッ!」


 そこで草守レイトは急に口をつぐむ。


 “紫色の布に包まれた長大な物体”は、まるで自ら主張するように、禍々しいオーラを放っているようにキョウスケには思えた。


「ピピーッ、そこの二人、会って早々にケンカすんな。もう昨日の約束は忘れたか?」

「この“ケンカ”を売って来たのは、あっち!」

 するとミーナは、近寄るヤストラを暑苦しそうに向こうへサッサと追い返す。昨日“彼らの間で交わされた約束”とは、

 

  足立ミーナが、

  草守レイトに、

  優しく接しなければならない!!!!


 という、ミーナにとっては“屈辱的”とも言える内容のものだった。


「仲よく、だよお。ミーナちゃん」


 鼻息荒く、マキはやんわりと少女を咎める。


「それよりマキ……あんたのその変な格好……どうしたの……?」

「“キアイ”、だよねレイトちゃん! 私、ちゃんと分かってるから!」

 彼女の背には、どっしりとした重みのある大きなザック。

 その柔らかそうな前髪は、赤いバンダナでしっかりと留められてある。

 

 ひとりだけ、気合の入りようが違っている。


 別の方向に、だ。




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