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夏至祭を楽しみに、兄も来たる!.1
果てなどないように思える我が家の廊下が、いつも息苦しい。
台所も、“私”に与えられたこの部屋も、広大な家の敷地も、全て窮屈に感じてしまう。
家の中で、“私”だけが浮いている。
そんな“私”の心を和ませるように、息子の部屋からは心地よい、遠い異国の音楽が流れて来る。
その息子を、“私”は好いていない。
憎い訳ではない。
しかし、なにを考えているのか知れぬ。空虚な“私”を見つめる息子の姿は怪物のようだ。
夫も窮屈だ。“私”になにも語らない。
久しぶりに帰っても、なにも語らない。まるで“私”の存在を忘れているかのようだ。
わずかばかりの自由はあるが、この島に知り合いはない。外の散歩は気晴らしにならず。絶えず誰かに監視されているイヤな気分になる。“私”の居場所はどこにもない。
家に金はあるようだ。
それどころか、うじゃうじゃある。
どこから湧くのか、とんと知れぬ。
やはり、この家は変だ。
そんな“私”の唯一の救いが、この日ようやく訪れる。
“私”の本当の息子が、三年振りに島に帰ってくるのだ。
どんな土産話を今度は聞かせてくれるのだろう。
ああ、愛しの我が息子よ。
どうかこの“母”を、遠い異国へ連れ去っておくれ。




