そんな伏線ありですか?
有馬 涙威君はいわゆる不良のレッテルを張られてる。
っといっても、タバコを吸ったとかカツアゲをしたなどの素行不良ではない。
単純に授業へ出席しない事が多いのだ。
常に何かに追われる様に教室に駆け込んでは授業を受け、
常に何かに駆り立てられるみたいに急いで教室を出て行く。
僕達の学校は、比較的品行優性な子が多い(だから真琴みたいな子が誤解を受けやすい)優等生学校なのでそういうゴーイングマイウェイな生き方は脅威に捉えられる。
ルールを遵守するのが当然、って感じだから。
でも彼はそんな常識をいとも簡単に逸脱する。
本能の思うがままに率直に動き、
感情の向くまま喜怒哀楽を示す。
いつも忙しそうにしてる彼だけど、
いつも明るく楽しそうだな~とは思ってた。
だからそんな彼が派手な装飾の長剣を構えている事には驚いた。
けどあくまで自然体な彼を見て気付く。
そうあることが当然なんだ、彼にとっては。
もしかして、もしかしなくとも……彼も?
「ったく、ただでさえ出席日数が足りないって云うのに……
こんな雑事で卒業を逃してたまるか、ってんだ」
「あの~有馬君?」
「ああ、神楽。
ここは俺に任せておけ。
あんまり派手にやると琺輪から御咎めがくるだろうが……
この程度なら御目溢ししてくれるさ」
片目を瞑り愛嬌よく応じる有馬君。
長剣を正眼に構え、閉眼し集中していく。
いったい何を……
疑問に思うより早く、皆が弾かれた様に跳び退り警戒する。
「デバイス干渉が境界を突破してる、だと!?」
「聖帝級の魔力ですの!?」
「これはまさか禁書目録に謳われる……」
「規定で定められた世界改変値を確認」
「何だかわかんね~けど……
やっちまえ、有馬!!」
各々の戦慄と応援を受け、ついに有馬君が放つ。
「有馬流アストラリエル<裂空>!!」
開眼しざま剣を振るう。
次の瞬間、世界に亀裂が入った。
「え?」
よく見ればそれは空間に奔った痕。
有馬君の斬撃は空間そのものを切り裂いたのだ。
そう理解するより早く恐ろしい程の吸引力を放ち穴を閉ざし始める空間。
おそらく空間の復元力というやつなのだろう。
気球船や飛行物体、はたまたガーゴイルの残骸等、全てを巻き込みながら吸い取っていく。
「す、すごい……」
感嘆の声を上げる僕に対し、有馬君は険しい顔をしている。
「まだ前座を片付けただけだ。
これからでてくるぞ、斃すべき真の敵が」
「え?」
彼の指摘通り、雲合いから神々しい後光を纏い何かが出てくる。
「どうやらアレがこの世界のラスボスらしい。
多分アイツを倒せば元の世界に戻れる筈だ」
「ホント!?」
「ああ、間違いない。
数々の世界を勇者召喚で救ってきた俺だからな」
「しょ、召喚?」
「まあ、な。
多分ここも世界の危機に勇者召喚の儀式を行ったんだろう。
一足遅かったようだが」
「そうなんだ……それにしても詳しいね」
「ん? 更に詳しく知りたいか?
なら200話くらいになるが……?」
「いえ、結構です」
「そっか。
んで……皆はどうするんだ?
協力してくれると助かるんだが」
「そんなの決まってるだろ」
「うん」
「ええ」
「同意」
「不本意だけど……」
「なら……皆、いくぞ!!
神楽は適宜魔力弾で援護、
悠馬は俺と共に前衛、
麗華と真綾はバックアップ、
法子と真琴はそのままシールドを頼む!」
「「「「「 了解 !!」」」」」
適切な指示の下、皆はレーザーブレードや扇子、術符を携え駆け出す。
大切な未来を勝ち取る為に。
明日をこの手に掴み取る為。
そう、僕達の戦いは始まったばかりだ!!
(打ち切りEND)
秋月先生の次回作にご期待ください(二度と連載されないパターン)