492話 【速報・吸血鬼×サキュバス】
「………………………………!」
棒立ちになり、柚乃を食い入るように見つめる銀髪長身の魔王。
それを……ちらちらと酒瓶と見比べながらも、不思議そうに小首をかしげるだけの、柚乃。
その身長差は、実に40センチ近く――大人と子供、「新米教師と低身長の女学生」と同じくらいで。
「ま、魔王様……?」
「まだ意識が混濁されて……!?」
ざわざわと、柚希のせいでの度重なる心労で倒れたばかりの魔王を心配する声は――「彼女」へは、届いてはいない。
【ユズねぇ!!】
【魔王ちゃん様がなにやら重大事っぽい眼差しを向けてきてるってのに、ちらっちらとお酒見るのを止めなさい!! 単純に失礼でしょうが!! 人として! 失礼なの! 地球人類代表の自覚を持ちなさい! ただのちょうちょじゃないんでしょ!!】
【草】
【草】
【普通にまともなお説教で草】
【だってダブルユズの片割れだし……】
【もうだめだ……】
【草】
「……おお……おおおお……!」
1歩。
2歩。
まるで鹿の赤子のような足取りと体の動かし方で――けれども着実に柚乃へと歩み寄る魔王。
「?」
柚乃は、ただただ口を開けたまま不思議そうに見やるだけ。
その異様な雰囲気に、この場の誰しもが押し黙り――動揺する魔王の出す声と音以外、存在する音色はなく。
「……頬へ」
「はい?」
「触れても……良いか……?」
「? ええ、別に」
吸血鬼の黒い衣装に身を包んだ紅目の彼女は――柚乃の、子供のようにもちもちとした頬へと、両手を差し出す。
その両の手の先までをわななかせながら柚乃へ近づけ――その頬へ、そっと手を当てる。
「………………………………」
「………………………………」
【………………………………】
【………………………………】
【………………………………】
【何が起きるんです?】
【わからん】
【んにゃぴ……】
【ただひとつ察することといえば 「ユズ」――だ】
【 】
【あばばばばば】
【こわいよー】
【何が起きるか分からない怖さが、ダブルユズにはあるんだ】
【ユズねぇ……正直におっしゃい なんか……なんか悪いことしたでしょ みんな分かってるんだよ なんか……こう、とんでもないことを うん、分かってる ユズねぇも理解してないかもしれない……でも、絶対したんだよ がんばって思い出そうね】
【草】
【草】
【致命的に具体性に欠ける叱り方で草】
【ハナから決めつけてて草】
【だってぇ……】
【ユ、ユズちゃんよりはまだ……もうだめだ……】
【ユズちゃんの上位互換だからね……】
【あばばばばばば】
【諦めてて草】
永遠にも感じられた、たったの十数秒の静寂。
それを破ったのは――自分の頬へ涙が流れるのにも気づいていない、美しい銀髪の少女の方だった。
「……温かい……夢では、ないのか……?」
「魔王様………!?」
「魔王様が……涙を!」
【えっ】
【なかないで】
【お美しい……】
【いかん! 怪異「ユズワールド」だっ!】
【精神汚染……メイドさんたち、魔王ちゃんを引き離して!】
【もう手遅れかもしれんがな……】
【このたびもこのたびも、うちのユズたちが本当にごめんなさい】
【逃げよう……この地はちょうちょに汚染されている……】
【草】
「………………………………」
柚乃は――ぱちぱちと目を見開き、ただただ泣く長身の少女をしげしげと見つめ続け、ぽつりと漏らす。
「……あらぁ? もしかして……先生?」
頬への感触で何かに気がついたらしい柚乃が――隣でおろおろとしていたメイドへ酒瓶を手渡した!
手渡し、魔王へと向き直った!
酒浸りの彼女が――酒よりも大切なものに気がついたようだ!
【!?】
【!?】
【!!??】
全ての存在が驚愕する中――渦中の2人は、何かを完全に理解し。
「やはり、柚乃だ……本物の柚乃だ……!」
「きゃあ♪」
――ぎゅっ。
中3女子の平均身長である柚乃が、身長が180はある魔王に抱きしめられる。
それは、かき抱くような熱烈な抱擁。
魔王の体格に見合った胸元――すなわちは豊満な果実へ、柚乃の頭が完全に埋もれる。
柚乃は柚乃で、まるで恋人に抱かれるときの少女のように、腕を胸元で丸めながら笑顔で抱かれている。
「生きていた……!」
魔王は――すすり泣く。
「無事、約束は果たされていた……!」
「ぎゅむむむ」
次第に暴れ出す柚乃――それへ気づけず、さらに抱きしめる魔王。
その姿は――美しかった。
【キマシ】
【タワー】
【速報・百合の塔、唐突に建設】
【魔王ちゃんとユズねぇか……】
【この組み合わせは予想外】
【\350000】
【分かる】
【でもなんで急に?】
【てか今、「先生」って……?】
【先生……サキュバス……まさか……!】
【先生が、生きていた……?】
【11年前のあのときに……って】
【あれ? これってさすがに、あの「サキュバスさん」のこと、言っても良い雰囲気だよね?】
【ふぁっ!?】
【先生 is 誰??】
【ひとまず個人情報はステイ】
【サキュバス……気になりすぎるワードも飛び出してきたな……】
【そうだぞ、ワールドワイドになっちゃった配信だから慎重にな】
【草】
「え? えっと、応援してくれると嬉しいです。具体的には最下部↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に、まだの方はブックマーク登録……なにこれ、理央ちゃん」




