491話 【速報・魔王ちゃん×ユズねぇ】
「ふぅ」
僕は、頼まれていたお仕事を完遂した。
ちょっと前に空飛ぶでっかいヘビさんを倒す手助けをしてくれた女神様へのお返しとしての、保護されたらしい女の子の引き渡し。
そのおかげでまた11年前のあの日に戻ってきちゃってるみたいだけども……おかげで、この日に食べられるかもしれなかった人たちをおまんじゅうビームでなぎ払えたし。
……歴史を変えちゃってるかもってのは、もう気にしないことにした。
そもそもここは魔王さんの大切な玉の中。
もしかしたら夢の中みたいに現実へは影響しないかもだし。
うん、その方が良いんだ……特にお母さんの知り合いさんたちとのいろいろとかさ。
できれば全部忘れたいくらいだよ……お母さんがサキュバスに目覚めてお父さんを捕食して僕が産まれたとか、ショックすぎて絶対忘れられないけども。
ああ……そうだった。
お母さんはずっとずっと、お父さんにぞっこんだったんだ。
「リリスモードには慣れてないから、もしかしたらちょっと時間と場所、ずれちゃったかもだけど……そのくらいは良いよね。だいたい合ってれば良いって理央ちゃんも言ってたし」
女神様からのお届け先は、だいたい合ってるはず。
お母さんも言ってたもん、だいたい合ってれば良いんだって。
「………………………………」
「きゅ……」
「ぴ?」
僕はぶんぶんっと頭を振る。
……ダメだ、どうしてもちょうちょな僕が僕を侵食しようとしてくる……!
そりゃあみんなから言われるわけだよ、ちょうちょとかさぁ……!
さて。
どうやらダンジョン化しかけてた、どっかの駅前のロータリーにわんさかと居たモンスターたち。
それらは、おまんじゅうのビームでまとめて排除。
やっぱりおまんじゅうは強いね。
でもそうやって褒めると調子に乗ってすぐひっくり返っちゃうから、全部終わってから褒めないとね。
「……妖精さん、その子と一緒に、男の子は見なかったかい?」
「僕は人間で……えっと、居なかったみたいですね」
女の子の知り合いらしいおばさんが駆け寄ってきて――駅の売店で働いてる人なのかな――あ、おまんじゅうがぷいって、顔をそむけてる。
僕、そういうのよくないって思うよ?
けども、この子を知ってる人が居るってことは誤配の可能性は低いらしい。
「メガネをかけた、優しい中学生くらいの子だったんだけど」
「うーん……見かけたら声かけときますね」
あの女神様なら、助けられる人が居たら助けてくれるはず。
だって、あのそっくりさんな黒髪の女神様と同じで優しいもん。
だからきっと、その「彼」は助かっている。
今は、そう思っておこう。
「それでは僕は、次の場所に行くので」
――ばさっ。
おまんじゅうの羽が空気を押し出し、僕たちは浮き上がる。
「おお……」
「女神よ……」
「あ、女神様は本当に居るので、別に居るので、拝んだりするのはそっちにしてくださいね」
僕みたいに行き当たりばったりでふわふわ飛び出るような計画性のない人間とは違って……きっと影からこっそり、できるだけ人に知られないように僕たちを守ってくれている、優しい女神様たちが。
◇
「……ここは」
「「魔王様!!!」」
【!】
【魔王ちゃんが起きた!】
【良かった……良かった……】
【感動した】
【イイハナシダナー】
【草】
【理不尽系ギャグに翻弄されて昏倒した魔王ちゃんが蘇った!!】
【奇跡だ……】
【おお、神よ……】
【女神様だぞ】
【なんでも良い……ありがとう、ありがとう……!】
【怪異ユズワールドのせいで死ななくて……本当に良かった……!】
【マジで外交問題どころか問答無用で滅ぼされててもおかしくなかったから、ほんっとうに良かった……!】
【※画面の奥で一部魔王さんたちがめっちゃ殺気立ってました】
【そらそうよ……】
【自分たちの主が、ちっちゃいロリっ子のいたずらのせいで死にかけたわけだし】
【そんな名誉もへったくれもない死因とかになった場合、事実を隠蔽する必要から地球を根こそぎ屠らないと魔王ちゃんの魂が浮かばれないからね】
【これは正当な仇討ち】
【絶滅させられるのも静かに受け入れるしかないもんな!】
【ユズちゃんが本当にごめんなさい マジでごめんなさい】
【なぁにこれぇ……】
【草】
【草】
【いつもどこでもうちのユズちゃんが大変なご迷惑をおかけしております】
【あの子が羽ばたくまで見守ってしまった末裔は深く反省しております】
【草】
【末裔が責任を覚えている】
【親衛隊は必要なら生贄に差し出される準備を済ませていました】
【草】
【あーあ】
【さすがはユズちゃんをそばで観察してきた連中だ……覚悟が決まってる】
【これは親衛隊】
【感動した】
【あんな子に翻弄されて育ったら覚悟も決まるわ】
「魔王様……! 治癒魔法を掛け続けたにもかかわらず、精神異常が解けず……私共が不甲斐ないばかりに……!」
「魔王様……女神が来ております。お気をたしかに」
数名の魔王たちが――恐らくは側近だろう、彼女へ語りかける。
が、
「……私が、魔王? …………」
彼女は――しばらく焦点の合わない瞳を、室内にさまよわせる。
その紅い瞳は虚ろで、何も捕らえていないよう。
きっと精神的なストレスのせいだろうし、意識を取り戻しただけでも御の字――誰しもが、そう思っていたが。
「……! そこに居るのは……柚乃、か……?」
「はぁい? 私のこと呼んだぁ? 魔王様ぁ」
がばっと起き上がり、ふらふらと倒れかけてメイドたちから支えられ――それでも再び立ち上がった魔王。
つかつかつかと、腕を支えていたメイドたちの手も振りほどき――空になった酒瓶を名残惜しげに抱えている柚乃を見下ろす魔王。
【なんだなんだ】
【とうとう保護者に責任を押しつけるか】
【草】
【魔王様お願いです、その子はまだ子供なんです】
【でもそんな子供の妹ちゃんがミラーボールにしちゃったよ?】
【もうだめだ……】
【そうだったわ……】
【草】
【じ、自称母親だから……】
【でもどうかお情けを……】
【ていうかユズねぇ、こんなときくらいお酒はやめなさい!】
【推定JK or JCなユズねぇがでっかい酒瓶を抱えて……ふぅ……】
【えぇ……】
【分かる】
【ユズちゃんとは違って色気があるからな……】
【\50000】
定期のないない(治療)のため、次回の投稿は18日火曜日の予定です。
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