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そして、日常になる。

それからパーティーメンバーと合流して軽い食事の後、目的地を目指して先に進んだ。

予想通り道中アンデッドの襲撃は無く夕方にはキャラバンの荷馬車を発見した。

その日はここでキャンプを張り、残りのアンデッドの討伐に備える事にしたのだけど、結局一〇体のゾンビが現れただけで朝を迎えた。

どうやらこの周辺にはもうアンデッドは居ない様だった。

この先、街までの街道沿いには多少なりとも残っているだろうが問題にする程ではないだろうという事で、キャラバンの荷物と周辺の遺品を集めて、村に戻る事になった。


村に向かう道すがらアルティとカルノスの二人に自分に発現したスキルの事を話した。

この世界でのスキルはいわば魔法の様なモノである。

基本技の鍛錬とイメージ、それが合致するとそれに合う魔法が発動してスキルとなる。

アルティが使った『ラビットファイヤーアロー』は基礎の早撃ちと二本矢に身体能力向上、矢の速度アップ、それに時空魔法が発動して矢が増えると言う仕組みで出来ている。

つまりスキルを使うには魔力の消費が必要で、この世界の生物は魔法適性が無くとも魔力を消費できる特性を持っているのでスキルが使えるのだ。

ただ、スキルの例外が自分の持っている『斬り落とし』の様なスキルだ。これは単なる技の熟練度の到達称号の様なモノであって魔力消費は無い。その代わり暗示効果で使用時の身体能力が多少上がる為、体力を消費する。


「だから本来、魔力消費できない自分には斬撃を飛ばす様なスキルは発現しないはずなんだが、どう思う?」

「……そう言えば、レンヤ兄は聖樹の光が見えてたよね?」

「そうだった! 見えてたって事はやっぱり魔法使いの素質が⁉」

「ちょっとココで確かめてみようか」

そう言ってカルノスは地面に魔法陣を描き始めた。

完成した魔法陣の上にクリスタルを手に自分が立つ。そしてカルノスが呪文を詠唱すると周りに様々な色の光の粒が現れ始めた。そして次第に光の渦が出来てそれがクリスタルへと一気に流れ込んで……


「……」

「……これで終わり?」

「……終わり」

「で、どうだった?」

「やっぱり、魔力反応ないね。魔力消費でもあれば多少クリスタルに変化があるんだけど、全くない……」


あ、やっぱり駄目でしたか……


「でも、そうなると不思議だな……なんでそんなスキルが発現したんだろう……」

「ねぇ、レン兄。そのスキル使ってみてよ。それで魔力の反応を見れば分かるんじゃないかな?」

「そうだね。レンヤ兄、お願い」

「了解」

そう言って近くの木の幹に向かい刀閃を放った。

あの時と同じように、切先の軌跡をなぞるような三日月状のモノが幹へと飛んでいきそして見事に木を切り倒した。

それを見ていたパーティーメンバーから「おおぉ~」と感嘆の声が上がった。

しかし


「やっぱり魔力の発動を感じなかったよ」

「そうか……」


失敗したな……あの時、賢者様に聞いておけば良かった……


そんなこんなで討伐完了から四日後、ようやく村に戻ってきた。

クエストの完遂である!


戦利品を清算して報酬は一人、一五万リオンにもなった。当然その夜は酒場での大宴会だ。

討伐の成功と、交易路の再開を祝って飲めや歌えの大騒ぎになった。

因みに、この世界では一三歳で成人扱いとなりお酒が飲める様になる。但し冒険者ギルドの正式登録は一四歳から、結婚は一五歳からである。


という事でアルティとカルノスの二人もお酒を飲むのだが、自分を含め三人とも酒に弱い……自分は経験上セーブする事を覚えたのだが、二人は勢いに任せて飲む……そして潰れた酔っ払い二人を世話するのが常だった。ただ今回は、カルノスが早々に潰れゲンデルさんが連れ帰ってくれたので負担は半分になった。


宴会はまだまだ続いていたけど、疲れていたのでこちらも早々に切り上げる事にした。

酔い潰れたアルティを背負いながら家へとフラフラ歩く……

「今日は飲んじゃった……ふわふわするし、気持ち悪い……」

あのヨーグルトリキュールの様なお酒が失敗だったな。美味しさの余りついつい飲んでしまったと、少し後悔しながらも内心、久しぶりの酔った感覚を楽しんでいた。

しかし少し酔い過ぎたので、道脇の柵に寄りかかって休憩しながら酒場の風景を思い出していた。

「なんか、冒険者してるなぁ~……クエストして酒盛りして……」

もう少し酒をセーブしておけば最高の気分だったかもと思いながら、アルティを背負い直してまた歩き始める。


「半年経ったのか……」

キャンプ中に見た夢を思い出して何気なく呟いた

「この村から居なくなっちゃうの?」

不意の背中からの声に一瞬ドキッとした。

「なんだ、起きてたのか? 降りて自分で歩く?」

「無理……頭痛い……」

「そうですか」

「それより、さっきの答えは……」

「……まぁ、いずれはね。この村の人達はもうモンスター化しないって分かったからね。今度は違う場所に行かないと……。取り敢えず、半年間ありがとうな、アルティ。君たちのお陰で胸を張れる冒険者になれたよ。それに本当に楽しい半年間だった……だから、これからもよろしくな」


ちょっと気恥しいような言葉がスラスラ出てきて、顔が熱くなるのを感じたけどきっと酔ってるからだ、と思う事にした。


「ズルいよ、もう……」

「なんか言った?」

「言ってない! レン兄が出てくまでにまだまだ楽しい思い出いっぱい作るよ! もう休んでる暇なんてないんだからね! 明日からまた頑張るぞー おおぉ!」

「ちょっ⁉ アルティ⁉ いきなり背中で暴れるな! こっちも足フラフラなんだから落とすって! ぐうぇッ!」

「じゃぁ、落ちない様にしっかりしがみ付く!」

「……ッ!」

首が締まってる! と首に回された腕を叩いて抗議する! がアルティはお構いなく楽しそうに笑っていた。そして小さな声で

「明日からまたよろしくね……レン兄……」

そう言って頬に軽く唇を押し当ててきた。

またまたドキッとさせられたがここは……スルースキル発動である。


「……あぁ、こちらこそよろしく……」


そう何事も無かったかのように、自分は満天の星空を見上げて呟いた。

そして、また明日から始まる新しい冒険の日々に思いをはせるのだった。


で翌日、実家に運ばれていたカルノスと合流してギルに会いに行った。昨日、聞きそびれた白い石の正体を確かめるためだった。


「んん……宝石の様じゃが、儂も初めて見るのぉ。オパールの様に虹色の光が見えるが、取り敢えず冥府の玉骨ではないぞ」

「ギルでも分からないって相当なレアかゴミのどちらかだな……ギルドでも分からないって事だったしどうする?」

「価値が分からないなら、そのまま部屋にでも飾っておくかな。綺麗だし」

クエストのドロップ品は倒した者に優先権を与えるか、もしくは全員の共有のどちらかが一般的なルールになるのだけど、この石に関しては出所も正体もよく分からないという事で発見者の自分が所有者になっていた。


「正体を知りたいなら西のドワーフ村に行けば分かるかもしれんぞ」

「そうなの?」

「あぁ、あそこには儂と同じハイドワーフのばあさんがおってな。歳食っとるだけあって物知りなんじゃ。もし行くなら声かけてくれ。紹介状を書いてやるわい」

「ドワーフ村か……わかったよ。ありがとう、ギル」

 

そのドワーフ村の存在は知っていたが、未だ行ったことが無く凄く興味を引かれていたのだけど、結局そのドワーフ村を訪れるのは三ヶ月ほど後の事になる。


このエヴァン村のある地域は夏の期間が長いらしく、ピークの時期は過ぎても昼間は真夏の様な日差しが照り付ける。自分がココに来た時は若葉が生い茂る晩春かと思うが、その後すぐに気温が上がり始め現在に至る。カルノス曰く


「季節? もちろんあるよ。この地域は差が激しくて三〇度を超える夏の時期が七ヶ月、氷点下五度くらいまで下がる冬の時期が二ヶ月。その移行期に春と秋がある。この冬がある為に夏が長いわりに森は熱帯地方のジャングルとは違う独特のモノになってるのさ」

という事らしい。その特殊性が発光生物の楽園を作り出したのだろう。


アンデッド討伐クエスト後、息抜きも兼ねて三人で自分が最初に降り立った白き柱の塔に行ってみた。

改めてみる塔は、澄んだ湖の中にそびえ立ち、白い外壁の一部に張り付いた蔦の緑が映えとても綺麗だった。


「最初にココに降り立った時は期待とわくわく感が強かったけど直ぐに現実を知る事になったんだよな……懐かしい」

「まだ、そんなに経ってないと思うけど。そう言えばレン兄と最初に会った時、僕の事モンスターか何かと勘違いしたんだよね」

「そうだったの? そう言えばその辺の話って聞いてなかった。まぁアルは森の中では猿みたいだから仕方ないか」

「カル、なんか言った?」

「いえ……言ってません」

「はっはっはっ。ホントいいコンビだな」

「何言ってるの? レン兄もそのコンビの一人だから」

不意を衝くその言葉にちょっと顔が熱くなったが誤魔化すことにした。

「それより、スキルの練習をしないと」


そう言って湖に向かって村正を構えた。そんな自分を二人がニヤリ顔で見てきたが、気付かないふりをしてスキル練習を開始する。


障害物の無い水上はスキル刀閃の格好の練習場所だった。

未だどうして発現したか分からないこのスキルだが、他のスキルと同じように体力と精神力を消費する様で、打ち続けると一気に疲労感が溜まって来る。

それと自分がスキルを使用する時にはどうも、武器が薄らと発光する事が分かった。

これは刀だけではなく他の武器を使用しても同じだった。しかしその正体も理由も分からないまま今まで使用し続けていた。

だから今回は、その辺を探りつつの息抜きがてらの訓練合宿の様なものである。


そして、ヘトヘトになるまでスキルを使ったら、湖に潜っての食糧調達。

鮎の様な魚に手長エビに貝と湖は新鮮な魚介類の宝庫だったし、森では色々な果物が採れた。これらを材料にアルティが手早く料理を仕上げる。

そんな所はさすが女の子だと思うが、口に出すと怒るので黙っておく。


この塔周辺は猛獣も近寄らない安全地帯らしく、何も気にせず焚き火と美味しい料理を囲んでの、まさに大自然でのキャンプだった。


「最高だな~」

そう両手を上げて仰向けに寝っ転がる。

まだ少し明るい空にちらほら星が瞬き始めている。


そして、つい現世の癖で何気なく手首にはめたバンドを腕時計と間違い覗き込む……このバンドはステータス画面なんてないこの異世界でパーティーメンバーが仲間の生命力や魔力、気力、状態異常などをメーターで分かり易く表示できる最新の一万リオンもする冒険者アイテムだ。今までそんな物をはめてなかったけど便利だからと前回のクエスト報酬で三人とも買ったのだけど、自分は現世での癖が出てしまい腕時計と間違えてよく見てしまうのだ。

その度に、この世界で時間なんて気にしなくてよかったんだと思うのが日常だった。しかし今回は腕を戻そうとして違和感を感じた。


「あれ……微妙に数値が減ってる気がするな……記憶違いかな」

「何が減ってるって?」

直ぐ隣で紅茶を飲んでいたアルティが聞き返して来た。

「いや、生命力が朝より減ってる気がするんだよね。気力が減るのは分かるけど、なんかダメージ食らったかな? 今までそんな事なかったと思うけど……」

そこまで話した時「あっ!」とカルノスが声を上げた

「ねぇ! もしかしてそれ、刀閃を使ったからかもしれないよ!」

「えっ? そうなのか?」


自分は起き上がりながらカルノスに確かめる。


「うん。今の話でピンときたんだけど、魔力の代わりにプラーナって言う力を使う人たちが居るんだよ。それが何なのかよく分かっていないんだけど、もしかしたらそれが生命力なのかもしれない!」


ほう、生命力を使うか……気の様なモノなのかな。

「試してみるか」

そう言って立ち上がり、体勢を整えて水上に刀閃を放ってみた。


そしてカウンターを確認してみると……わずかに生命力のバーが減っていた。

「おっ、減ってる!」

その後何回か試したが毎回量にはバラつきがあったけど、どれも生命力を消費していたのだ。

「て事は、カルノスの説が正しそうだな。プラーナって言うんだっけ?」

「そうだよ。実際どんな技を使うのか詳しくは分からないけど、魔法の様だって伝わっているから。だから生命力の豊富なレンヤ兄はそれを言うなれば生命エネルギーに変換し魔力の代わりにして刀閃を撃っているんだよ」

「凄い! これでレン兄のスキル幅が広がったね」

「ああぁ、これはスキル習得が楽しみになって……きた……けど……」

「どうしたの?」

「いや、そもそもなんでそんなスキルが使える様になったんだろうと思ってね」

「確かにそれはあるね。普通はイメージと訓練を繰り返してようやくモノになるかどうかだし」

「レン兄は初めて使った時、どんなこと考えてた?」

「あの時は……片腕で、何とか最後の一体かと思ってたらその後ろにゾンビが見えて……それで、スケルトンに切り掛かりながら、この一振りで後ろの敵も切れたらなぁ~ みたいな事を考えてたかな……」

「多分それだよ」

「どれ?」

「……だからね、片腕という危機的状況で不意に現れた遠くの敵を倒したい。倒さないと生命の危機にと言う状態で、無意識に集中力が異常に高まって思いがイメージへ、そしてスキルに一瞬で昇華されたんだよ」

「そんな都合の良い事が起こるか?」

自分がアルティの意見を怪しんでいると

「本人が思っていた以上にずっと追い込まれていたんだよ、きっと。そこに生存本能が強く反応したんじゃないかな。生死を分ける一戦はその者を大きく成長させるって言うからね」

「……そうなのかな」

確かに腕を切り落とされた状態で戦うなんて尋常じゃなかったけど。

「いいじゃん。これでレンヤ兄のスキルの謎は解けたんだし」

そんなカルノスの意見に

「確かにそうだな。自分にプラスなんだから悩む必要もないか」

「そうそう。じゃぁ~酒盛りを始めるよ!」

「「おおぉ~!」」

そうして湖の夜は更けて行くのだった。


「まぁ、酒盛りと言ってもみんな酒弱いからすぐ寝ちゃうんだけどね」

二人は既に酔い潰れて熟睡しているが自分は酔い覚ましに湖の畔を散歩中である。


「ここも綺麗だな……」

惚れ惚れと湖畔を眺めながらつぶやく。


この湖も夜になれば星々の森の名に恥じない光景を見せてくれた。


目の前には、光る川底の光景の数倍の景色で湖が彩られている……

青白い光を放つのが星の石、淡い黄緑色で光るのが月光石、どちらも太陽の光を吸収して光を放つらしく、日差しの強い夏はより一層光が増すらしい。

そんな水の中には、石以外にも光を放つモノがある。

それは川虫の仲間とホタルの幼虫、それにミズタマホタル草と言う水草だ。虫たちは石と同じ色の光を点滅させるが、水草は金色の小さな光を発している。これは花のガクの部分が光っているので、花の咲くこの時期限定の光景なのが残念なのだけど、湖の上を夜光虫やホタル、点燈虫が乱舞してそれはそれは幻想的な景色が広がっている。


結局その光景があまりにも凄くて、予定を変更してココに二泊してしまう程だった。

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