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ナマポランドフクシマ  作者: にーとしのしの
14/14

第14話 死骸処理にて

 さて、燃やして死骸処理しろと言われたがどうしようかね。

 ライターもマッチも持ってへんのよ。

 タバコ吸わんからね。うん。


 他の団員たちも行動を迷ってる感じだ。

 まぁ、そうなるのは当然だね。うん。

 労働とは正反対のナマポ生活をしてたクズの烏合の衆。

 仕事がまともにこなせるわけない。はっきり言って。


「ほなら、火つけられる奴いたら名乗り出てくれんか?」


 誰かが、俺が仕切ろうとばかりに言った。

 あれはハコッスだ。


「丸子さん、あんた火使えるやろ? 前に見たで、青い綺麗な炎出しとったな」

「俺のは再生の炎。炎は炎でも燃やす能力はねぇよい」


 ハッコスの問いに丸子が答える。

 丸子はさっきアンドリウスを呼び止めたやつだ。


 たしか、こいつも隊長。

 結構強いらしい。

 黄色いパイナップルみたいな髪型が印象的で前から気になっていた。


「他の隊だが、青葉って奴が使えるよい」


 丸子が探すようにあたりを見回すが、誰も名乗り出てはこない。

 青葉って奴は聞いたことがないね。うん。

 誰か知らんよ。




 しばらくすると、太った眼鏡をかけた男が、他の団員に連れられて出てきた。

 こいつが青葉か。

 なんかいかにもオタクの引きこもりって感じだ。

 秋葉原とかにいそう。


 青葉は目をキョロキョロさせてから、ボソボソ喋り始めた。


「……お、俺は協力しないぞ」

「頼むよ! あんたの力が必要なんや」


 ハコッスが両手を合わせて、青葉に頼み込むが反応はイマイチ。

 こういう自己中な奴はほんと許せないね。はっきり言って。

 どうせここに来る前も惨めな生活してたんだろうな。

 あ、それはここにいる全員か。


「ど、どうしても俺のナマポスキルが必要なら、

 報酬の10分の1。1000万お、俺にくれよ。

 も、もちろん全員分な」


 青葉は下を見つめたまま、

 ニチャァ……と聞こえてきそうな薄気味悪い笑みを浮かべて言った。


「てめぇいい加減にしろよ!」

「ひぃぃ……」


 シミズケイが青葉の胸ぐらを掴んで食ってかかる。

 今にも殴りかかりそうな勢いだ。

 お、よくやった。

 今回ばかりはシミズケイを応援するよ。

 嫌いだけどね。うん。


「辞めろ」


 ハコッスがシミズケイの手を掴み制止させる。

 いつもの陽気な感じと違いドスの効いた低い声。

 怖いねぇ〜。


「確かに、あんただけに仕事させて、何も見返りないのはおかしな話やな。

 ……そうだな、ワイの報酬の半額、5000万でどうや?」

「え……、あぁ、いいぜ」


 意外な提案だったのか、青葉は目をパチクリさせ驚いた感じで返事をした。


 5000万とはずいぶん太っ腹だね〜。

 ハコッスは偉いよ。うん。

 おかげで俺の1000万が奪われずに済んだ。




 青葉の協力が得られ、ようやく死骸処理を始めることができた。

 ハッコス主導の作戦会議の後、隊ごとに分かれて作業することとなった。


 青葉のナマポスキルはガソリン放出と引火。

 ガソリンを手から自在に放出することが可能。

 引火には専用装備の強化ライターを使うそうだ。


 これならライターだけ無理矢理奪えばよかった気がするが……。

 まぁ、俺は損してないしいいや。うん。


 青葉の焼却作業を補助し護衛する隊が2隊、

 俺の隊を含む8隊はそれぞれ先に移動し焼却準備を整える算段だ。




 壁沿いを移動をしていくうちに、壁内の現状が見えてきた。

 壁の外側と違い、内側は復興が全く進んでいないようだ。


 道路はヒビ割れ、そこからは雑草が生い茂り、田畑はただの草原と化している。

 ポツポツと点在する民家も、外壁は崩れて窓は割れ、人が住める建物には見えない。


 これが本当に俺の暮らしていた福島なのか。

 子供の頃の楽しかった思い出が溢れてくる。

 あの日さえなければ、俺はここでもっとまともな人生を……。

 いや、辞めようかね。昔を思い出すのは。

 メリットがない。




「この辺でいいですわね」


 前を歩いていた愛子が足を止める。

 邪魔な木や建物が無い。

 ここなら死骸を集めて一気に燃やせそうだな。うん。


 最初の場所からは500mぐらい歩いただろうか。

 とりあえず、この一帯の焼却準備をすることにするかね。

 更に先に進んだ隊もあるが、移動めんどくさいし。はっきり言って。


「じゃあ、ここに死骸運ぼうかね。うん」

「えー、あれ触るの絶対無理なんですけどー。男がやってよー」


 こういう、なみみたいな女が一番嫌いだ。

 普段は「男でしょ」「男なんだから」とか使うくせに、

 都合が悪いと、女性差別だの、女性の権利などと抜かす。

 それ以前に、劣等人種の女が男に歯向かうなよな。うん。


「た、助けてくれ……」


 作業を開始しようとすると、茂みの方から人の声が。

 振り向くと、ボロボロになった男がいた。

 服は泥で汚れ、頭からは血を流している。


「川瀬さん? どうしたんですか!」


 めめこが真っ先に男のもとに駆け寄る。

 川瀬なんてやつ、覚えてないねー。

 誰かは知らないが、かなりの重傷に見える。


「待つっちゃ!」

「キャッ!」


 豚饅頭が突然叫び、めめこに向かって飛びかかる。

 めめこが豚饅頭にタックルされ、2人は地面に倒れこむ。


 それとほぼ同時に、2人の付近を物凄い勢いで何かが通過した。

 風が巻き起こる程の威力。

 何だよこれ。

 2人は無事なのか。

 俺は急いで安否を確認しに行く。


「ちょっと、どうしたと〜?」


 めめこの声。

 豚饅頭もむくりと起き上がった。

 なんともないみたいだ。

 豚饅頭が超音波で感知してなければ、めめこが危なかったな。

 よかった〜。


「ずいえきさん、あれ……」

「えっ」


 あきのりが青ざめた表情で指を差す。

 指差す方向には、川瀬とかいうやつが立っていた。

 腹に大穴を空けて。


「ボコ……ボコタッ……」


 川瀬は口から大量の血を吐き、膝から崩れ落ちた。

 し、死んだのか?

 ばじかよ。

 うつ伏せに倒れたままピクリとも動かない。


「な、何か来るっちゃ〜」


 また豚饅頭がなにか感知したようだ。

 すると、川瀬の奥の茂みがガサゴソと動く。

 何が来るんだ……?

 思わず唾を飲み込む。


 ……飛び出してきたのは猿。

 特に巨大でもない。

 特に異型でもない。

 普通の猿だ。うん。

 見た目は。


 猿は川瀬の死体を覗くような素振りを見せたかと思うと、

 こちらの方を見て、逃げるように茂みに入っていった。


 今の猿がさっきのをやったのか?

 とりあえず捕まえるかね。


「今の猿、捕まえるぞ!」

「駄目っちゃ……、に、逃げましょうよ……」


 豚饅頭が震えた声で答える。

 なんでそんな怯えてるのか。

 ただの猿じゃないのかね?


 すると次の瞬間、耳に飛び込んでくる微かな風切り音。

 どんどん大きくなる。

 アレが来る!


 俺は瞬時に地面に伏せた。


 ドーン!


 物凄い衝撃音を立てて、飛んできた何かが俺の後方で墜落した。


 岩だ。

 衝撃音のした方、

 ハンドボール程度の大きさの岩が地面にめり込んでいる。


 まさか猿があの岩を飛ばしたのか?

 俺は再度、猿が逃げた茂みの方へと目を向ける。

 茂みから感じる生き物の気配。


 ウキー!ウキー!


 猿が飛び出してきた。

 1匹ではない。

 集団で威嚇するかのように、

 数十匹の猿が甲高い鳴き声を出して、俺たちを取り囲んできた。


 そして、その後方から感じる別の気配。

 あぁ、こいつだったのか。

 豚饅頭に確認するまでもない。

 こいつは確かにやばいね。

 はっきり言って。


 気配の正体が、茂みから姿を現した。

 3mはありそうな巨大猿。

 その手には岩石が握られていた。


次回、第15話「初戦闘」

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