おまけ、金の斧銀の斧パロ
親ver.のくだらないパロを思いついたので息子達も
小春日和の穏やかな日が続いているので、レクスは妻セレーネを連れて、まだ紅葉の残る森へ散策に来た。
セレーネ曰く、この森には美しい泉があるという。
彼等が辿り着いた場所は、実に幻想的だった。
泉の水は底まで見える程澄んでいて、その中には苔むした白い岩が煌めき、カラフルな魚が泳いでいる。
セレーネはウキウキしながらブーツと靴下を脱ぎ「今夜の夕食は魚ね」と泉に入ろうとした。
「いやセレーネ。見たことのない魚ばかりだ。毒があるかもしれない」
「毒なら匂いで嗅ぎ分けられるから大丈夫よ。それに、気持ち良い水温よ。レクスもおい……きゃあ!」
セレーネはレクスの両手を掴んだまでは良いが、苔に足を滑らせ、レクスの体重と遠心力で彼を泉へ放り投げてしまった。
「きゃあレクス、ごめんなさい! 私の馬鹿力のせい……で……」
セレーネが飛ばしてしまったレクスに駆け寄ろうとすると、泉がパアアアアアと青白く輝いた。
セレーネは眩しさで目を瞑ってしまった。その目を必死に開くと、光は徐々に消え、彼女の視界に、真っ白い服を着る黄金の巻き髪の者が、眠るレクスを抱いている姿が飛び込んできた。
レクスの全身は黄金の装飾品で飾られている。
「我はこの聖な……」
「ご親切な方、夫を受け止めてくれてありがとうございます」
泉の精が告げる前に、セレーネはトンッと跳ねてレクスの体を奪った。
「レクス? レクス? どうしましょう。頭を打ったのかしら?」
「ん……。セレーネ?」
「良かったレクス! 大丈夫そうね。でも、念のため安静ね。頭をぶつけた場合、安静第一だもの。あら、色々絡まっているわ」
セレーネは目を覚ましたレクスの頭をよしよしと撫でた後、彼の体に飾られている黄金に気がついた。
「あの親切な方のものね。返さないと」
セレーネは泉から出て、レクスを地面に寝かし、黄金装飾を次々と外した。
「あの、親切な方……」
セレーネがようやく泉の精をしっかり見た。
「我はこの聖なる泉の化身である。そなたが落としたのはその黄金か?」
「泉の化身? はじめまして、セレーネです。その? 落としたというか、投げ飛ばしてしまったのはレクスです」
泉の化身とは、どういう意味なのかよく分からず、セレーネは首を傾げながら答えた。
「そなた、これらの黄金を落としたであろう?」
「いえ。あー、誰かが落としたのですね。近くに住む者達に聞いて周ります。私、足が速くて体力もあるので、落とし主を割とすぐ見つけられると思います」
「落としたのは、そなたではないのだな?」
「はい!」
レクスの体がパアアアアアと青白い光り、黄金装飾が銀細工の装飾品に変わった。
サファイア、ルビー、ダイヤ、エメラルドと種々の宝石が飾られている。
「では、そなたが落としたのはこちらの銀か」
「……。まあ! 手品師さんなのですね! 先日村に来た方のお知り合いですか⁈」
「えっ? いや、我は泉の……」
「イズミさんのお知り合いですか。イズミさんは私達とは面識がありません。イズミという響き、煌国周辺の方なのですね。んー、でもその美しい髪色は西の……」
セレーネの発言を、レクスの手が遮った。彼はゆっくり体を起こし、立ち上がり、凛と背筋を伸ばした。
「泉を守る者よ、住処を荒らしてすまなかった。助けていただいた上に、かような財まで恵もうとは、なんと気の良い方。その心のありよう見習います」
レクスが華麗な礼をすると、セレーネも真似して頭を下げた。
「しかし、この辺りは荒れています。財宝を他者に見せる行為は悲劇の種になるかもしれません。気をつけられよ。困り事があれば、このレクスの名を叫んで下さい。私自ら、もしくは友が助けに参ります。ご親切、ありがとうございました」
ではセレーネ、行こうとレクスは妻の腰に手を回した。
「いや、あの、我は……」
泉の精が手を伸ばし、声を掛けたが、白い狼が現れて2人を乗せたので、あっという間に豆粒ほどの大きさになってしまった。
「正直者には褒美を……」
泉の精は、おーい、と叫んでみたが、もう姿の見えない相手なので、当然返事はない。
泉の精はしぶしぶ財宝を持って帰っていった。




