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「それにしても、ハルミオンの奥方がこんなにも美しい方だったなんて驚いたよ」
「あのっ・・・」
「戸惑っているのかな?可愛いね」
「そのっ・・・」
「どうして逃げようとするの?」
「・・・っ」
「あー、お前その辺にしとけ」
「えー、なんだいアラン。そういうのは野暮だよ」
どうしよう、近い。逃げようにもシエラの片手は目の前の男に掴まれている。
リディアと話していたシエラのもとにやって来た二人の男は、レイモンドの弟だという。
先程の止めに入った、第二王子のアランは騎士団の小隊を任されている男らしく、茶色い髪と青い瞳を持った体格のいい男である。
そして現在、シエラの元に跪きその手を取って話しているのは、第三王子のエミールだ。兄レイモンドと同じ金色の髪を後ろで一つにまとめるエミールは、アランの挨拶が終わるや否やシエラに熱い視線を送り、今に至っている。リディアも黙っているので悪い人ではなさそうだし、冗談なのかとは思うが、如何せん男の人には未だ慣れていないシエラである。歯の浮く様な台詞とこの距離に、そろそろ限界である。
「シエラ」
自身の名を呼ぶ声に、俯いていた顔をパッと上げる。シエラにとっての救いの声は、エミールにとってはそうでは無かった様で、一瞬固まった後に恐る恐る振り返っている。
シエラの頭に大丈夫だというように軽く手を乗せたハルミオンはエミールに問いかける。
「何をしていた」
「いや、その、ちょっとした冗談だよ」
「・・・冗談?」
「や、本当に。あんまりにも可愛いから、つい?」
「・・・つい?」
「あー!もう、だからごめんって!」
「ハルミオン、その辺にしといてやってくれ」
だから言ったのにとぼやいていたアランだが、蛇に睨まれた蛙の様になっている弟を憐れに思いハルミオンに声をかける。
「・・・帰るぞ」
アランの静止にハルミオンはため息をつき、シエラを促した。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
急な行動にリディアはハルミオンを止める。面白いことになってきたと、エミールを止めなかったのは内緒だ。
「・・・なんだ」
ハルミオンは嫌々振り返る。重い空気に耐えられず、シエラが声をあげようとしたその時-。
「あれー、もう帰るの?」
仕事を終えたのかレイモンドが戻ってきた。この場に居るハルミオン以外のメンバーは安堵の息をついた。
「おかえりなさい!」
駆け寄ってきた愛しい妻を抱きしめた後、レイモンドはハルミオンとシエラの方へ向き直る。そうして、改めて問う。
「ハル、帰るのかい?」
「・・・あぁ」
・・・どうやら機嫌の悪いらしいハルミオンにはそれ以上触れないことにする。
「今日は来てくれてありがとう。またおいで」
「えぇ!またいらっしゃいね!・・・・・・!」
最後の部分をシエラの耳元で囁いたリディアは手を振る。夫に習い、今日のところはシエラをハルミオンに譲ることにしたようだ。
各々から別れの挨拶を受けたシエラは、急いで礼を言い、帰りかけているハルミオンを追いかけた。




