2-17 姉弟(sideラナト)
作者は早く次読みたいたちなので…
せっかくのお休みの日!二章完結まで連投中です!!
『…またすれ違ってやがる…』
コテージの屋根の上から姉ちゃんとリューカスの声を聞いていたが、また変なすれ違いをしてもだもだしている。
あいつらバカなのか?
するとふわっとフィーリーが現れた。
今日は珍しく人型化している。
驚くほど長い緑の髪の毛を服のようにしている。
『ラナトもう戻っちゃったの?』
『うるさい。その姿は俺へのあてつけか。』
『ふふ、目にしたほうが上手になるかと思って。』
実は精霊界というのは、ほとんどこの世界と同じだ。
実体のない存在としてこの世界にいるから、精霊の民の血を使って実体を得ないと、この世界の者たちとは直接やりとりができない。
精霊の血意外にも方法が無い事はないが、あまり知られていない。
普段姉ちゃんが呼び出してるのはフィーリーのほんの一部だ。
あの小さいフィーリーたちは全てこいつに繋がっている。
『ルディア、無事にセフィナロスと会えて良かったわね。』
『姉ちゃん動物的な勘ありそうだよな。まさかこの場所にわざわざ来るなんて。』
『えっ知らないできたの?』
『多分。』
この土地は遙か昔、セフィナロスと人が交わり精霊の民が生まれた場所だ。
そんなセフィナロスとの繋がりが強いこの場所で、しかも本を使って精霊召喚なんてしたら、セフィナロスが他の精霊を蹴っ飛ばして我先にと出てくるに決まっている。
あのセフィナロスの爺さんはまだ昔の女が忘れられないみたいだからな。
姉ちゃんが言ってたこの泉の小説は、セフィナロスがこの土地に訪れた老人の夢に出て、繰り返し語って聞かせて小説を書かせたものだ。
ちょっと通りがかった時に自分の事を見かけた奴が自分を美女として噂話をしてしまい、美女の伝説として語り継がれてるのが許せなかったらしい。あの爺さん、自分は男だと言い張っているからな…
足元で変な魔術が沢山発動している。
リューカスが呪いが解けたのを姉ちゃんに見せてるんだろう。
『そうよ、ちょっとラナト、あなたリューカスにサラディーニとオルネリアの文化の違いバラしそうになったでしょ。』
『バラすって…あいつらそろそろ気付かねぇと、リューカス爆発しそうでやばいだろ。今日のあいつは一層やばい。』
『それよ!!』
フィーリーが謎にクネクネしている。気持ちわりぃ。
『何がそれだよ。』
『爆発するのみたいわー!』
『意味わかんねぇ…』
かーっとあくびをして丸まる。
暇だ。
早く人型になって姉ちゃんと話したい。
『あんたはこっちに実体があるからピンとこないかもだけど。ヒトの恋愛感情のエネルギーは素敵よー!』
『見えないからわかんねぇ』
フィーリーはヒトの観察が好きだから、時々ほんとにヒトみたいなことを言う。面倒くさい。
『とにかく!バラさないでよ。私の楽しみ取らないでね』
『…考えとく。でも姉ちゃん第一な。』
話は終わりだというふうにくるっと丸まって頭を隠した。
夕暮れになってきて涼しい風が心地いい。
リューカスを助けたあの日を思い出す。
ボロボロのあいつの周りには、ちいさな水の精霊やら森の精霊やらなんやらが沢山集まっていた。
むしろ川に近づいた段階で、こちらを誘うように俺たちをリューカスの所に連れて行こうとした。
多分あれは、精霊たちから姉ちゃんへの贈り物だ。
姉ちゃんが一人森の中で寂しいのを知ってたから。
ちょうど良さそうなのが落ちてた、ぐらいのプレゼントだろうけど。
俺には見えないが、精霊達は人や動物が持つ色々なエネルギーが見えるらしいから、姉ちゃんにとって良いヒトだと判断したんだろう。
リューカスを拾ってから、みるみるうちに元気になっていく姉ちゃんをみて、ほっとした。
話し相手ぐらいは期待はしてたけど、疎くてバカでのめり込みがちな変わった姉ちゃんと、面倒見が良くてツッコミできて、なんだかんだ優しいリューカスは相性が良さそうだった。
まず話のテンポがいいし、何より二人とも楽しそうだ。
こいつなら大丈夫だろう。
そう思って姿を見せた。
案の定おれが精霊だと分かったみたいだ。
それなら。
もっと姉ちゃんの話を聞いてもらおう。
そう思って、ちょうど精霊術を使ってる姉ちゃんのところに転移させた。
姉ちゃんの溜め込んでる色んなこと聞いてくれるといいな、ぐらいだったんだけど。
まさかばあちゃんの遺言まで見つけてくるとは。
リューカスに姉ちゃんを任せたのは正解だったみたいだ。
姉ちゃんはばあちゃんの死を乗り越えた。
本当は、俺がその役割を担えたら良かったんだけど。
人型化にはコツがいる。
性質としてはセフィナロスと人を祖先に持つわけだから人型化はできるはずだが、生まれるときに周囲の生命力も取り込んで実態を持って生まれたのが自分だから、そこからの変化が必要になってくる。
特に初回は親や他の高位精霊に人型化させてもらえないと感覚がわからない。
しかも俺の実体はこっちにあるから、精霊も実体を持たないと干渉できない。
俺はずっと人型化ができないままだった。
本来そのやり方を教えてくれる親のような存在は、もういないのだから。
もどかしい気持ちでずっと過ごしていた。
俺では不十分だ。
だから、リューカスが来てくれてよかったと思った。それでいいと思った。
それなのに、あのリューカスの野郎は姉ちゃんを置いていこうとしやがって。
ああするしか無かったとは思うが。
姉ちゃんが泣き暮らす未来しか見えなくて、必死に転移したり鞄を咥えてアピールしたり。
俺の努力を誰か褒めてほしい。
大体なんだあのムカつく追手とかいうやつは。
爪でぶん殴って清々したぜ。
あの時のことを考えると、あのタイミングでリューカスの呪いの解呪を試してみて本当に良かった。
ほんの一部引き出して身体との繋がりを食い千切っただけだが。
不味くて死ぬかと思った。
暫くリューカスの腕の中で伸びてしまった。
アイツと寝る趣味なんてねぇのに最悪だ。
でも。
あのときやらなかったら、多分リューカスはあのムカつく追手に殺されてただろう。
本当に、良かった。
足元から姉ちゃんとリューカスの楽しそうな声が聞こえる。
姉ちゃんは俺と違ってほとんど人だ。
だから、ヒトの幸せが必要だ。
姉ちゃんは案外バカだから、自分から幸せ逃さないように見てないと……
人型化で疲れたんだろうか。本当に眠たくなってきた。
俺は丸まった身体の中で、姉ちゃんと会話できた記念すべき今日のことを振り返りながら、気持ちよくまどろんだ。
次に人型化できたら。
姉ちゃんと何を話そうかな。
俺に混じったヒトの心が、温まっていく気がした。
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