24
「ちょーっと待って! レタアちゃん、新人なんでしょ!? さすがに危ないって!」
しかしアルタは待ったをかける。ふむ? 何故危ないのじゃ? 理解出来ずに首を傾げる。
「ベアなんて一瞬でバッタリじゃよ。危険はほぼ無い。」
魔法でチャチャッと血を抜くだけじゃからの。
「はぁ!? 何言ってんの!? ビッグベアはAランク! 新人が相手して勝てるものじゃないよ!!」
うーむ、そんなに大声出さなくてもいいじゃろうに。耳がキーンとしたじゃろうが。ワシは軽く耳を塞ぐ。しかしそれで事が収まるわけでもなかった。
「アルタ、レタアさんは常識が無いの。だからビッグベアを一瞬で狩ってもおかしくないのよ。」
「いや意味分かんないし!」
今度はグリンがそう言う。常識がないのはさっきもグリンに言われてたし、実際そうなのじゃろう。多分。自覚はあまり無いが。
そう考えながら二人をじっと見ているとグリンはふーっと息を吐き、こめかみの辺りを摩った。
「アルタ、そう考えていないと私もおかしくなりそうなのよ。分かって頂戴。」
「あー……なんかごめん。」
お、話がまとまったらしい。アルタも落ち着いたようじゃ。
「さて、話は終わったかの? ……あれ、それでワシ……何の話してたっけ。」
二人の言い争いを見ていて話の内容忘れてしもた。はてさて、何じゃったか……
常識がない云々の話じゃなくて……えーと……
「「だめだこりゃ。」」
グリンとアルタはガックリと項垂れる。仕方なかろう! ワシの記憶力は鳥と同レベルなのじゃから。
前世の時からこうなので毎度毎度対処法を考えてみてはいるが、全くいい案が出てこないのじゃ。
「レタアさんがビッグベアを狩るために街の警備に加わりたい、と言ってましたよね。」
グリンが教えてくれた。
「おお、そうじゃそうじゃ。二人の言い争いに気を取られて忘れてしもた。」
「「元凶が言うな!」」
「およ?」
元凶とはなんじゃ……? 首を傾げる。それよりも、先程から二人の息が合っている具合が凄いのぅ。さすが姉弟じゃな。感心していると、
「自覚なしかよ……」
「はあ……疲れた。」
およよ、突然二人とも疲れた顔をし始めたぞ。何故じゃ?
しかし疲れたのなら癒さねばじゃよな。ならば……
ふっと魔法を使おうとしてハタと気付く。呪文を唱えねば孤独になってしまうのじゃった。うっかり無詠唱で魔法を使おうとするところじゃった。危なかったー。ええと、呪文呪文……




