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「で、本当に話を聞くだけで良いのかい?」
「まあな。何か気が付いたことがあれば、イーニャお婆ちゃんの意見は聞いてみたいところじゃが、別に強制はせんよ。」
「そうかい。」
イーニャお婆ちゃんから見たら相当重い案件らしいからな、そんなに身構えずに軽く考えてもらいたい。本当、雑談程度でいいんじゃ。
「それに今日から連休だからな! これから皆とも遊ぼうと思っていたし、あまり深刻に考えないでくれ。何ならイーニャお婆ちゃんに皆を紹介できたから、一番大きな用事は済んだとも言える!」
「じゃあさっさと遊びに行きな。ったく、わえの時間を返して欲しいくらいだね。」
ワシにとって『友達ができた』だなんて幸福なこと、知り合いに自慢したくて仕方なくなるのも何らおかしいことではないだろう。
しかしその考え方はイーニャお婆ちゃんに理解されることはなかったらしい。シッシッと早く出ていけと言わんばかりに手を払われた。
「まあまあ、そう言わずに……あ! そうじゃ!」
「なんだい今度は。」
まあ、そんな扱いにも慣れているわけで、ワシは素知らぬ顔で新たな思い付きを披露する。
「イーニャお婆ちゃん! ここに『少量の魔力で使える魔道具』なんて画期的なもの、置いていないか? それを使って遊びながら皆の魔力向上の訓練をしようかと思いついたんじゃ!」
いつも同じことを繰り返し、それもただただ無意味に魔法を使っている。訓練とは名ばかりのもの。
それにいつも何か引っかかる気持ちだった。魔法は楽しくあるべきだから。
「あー……まあ、ないわけじゃあないんだが……」
そんな思い付きにも真剣に相手してくれるイーニャお婆ちゃんにしては珍しく歯切れが悪く、更には目を右往左往させ頭を掻いている。とても言いにくいことでもあったのだろうか?
「これもミネルが持ってきた案でな。どうもわえ達にはなかなか受け入れ難いものなんだよ。でもせっかく現物化した魔道具を箪笥の肥やしにしておくのももったいないし、でも売るにしてもちょっと難しいやつで……だが魔法を新たに作ることに関しては天才なアンタになら売っても良い、か……」
なんかブツブツ独り言を唱え始めたイーニャお婆ちゃん。相当な葛藤が見えた気がした。
ひとまずイーニャお婆ちゃんが納得するまで、ワシは黙って待っておくことに……
「よし! お前さん達になら売ってもいい! だがこの魔道具に関しては他言無用だ! それが守れるなら、持って行ってくれ!」
まるで意を決して、と言わんばかりな剣幕でイーニャお婆ちゃんはそう言い放ったのだった。




