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第47話 出航前夜


 明日に備えて、俺たちは早めに就寝した。だが、早く寝たせいか、それとも緊張のせいか、俺は深夜にふと目が覚めた。


 しばらくの間、ベッドの中で輾転反側てんてんはんそくしていたが、どうにも寝付けなさそうだったので、俺は一度外に出る。簡単に散歩でもしたら、眠れるかもしれない。 と思っていたのだが。


 俺たちがいつも食事に使っているテーブルが置かれている部屋の明かりがついていた。あれ、誰か消し忘れていたかな・・・・・・そう思い、俺は近付く。


「はっ!?」


 部屋の中には、陽奈ひながいた。入ってきた俺に気付き、大げさにびっくりする陽奈。


「り、リヒトくん・・・・・・なにしてんのよ、こんな真夜中に」

「なぜか目が覚めてしまったんだよ。陽奈の方こそ、なにしてるんだ?」

「う・・・・・・わたしもリヒトくん同様、目が覚めて・・・・・・ちょっとお腹が空いたから、夜食を・・・・・・」


 見ると、彼女の前のテーブルには、燻製くんせいしておいた魚が二匹、並んでいた。


 陽奈は、もじもじとして、こちらを上目遣いで見てきて、

「リヒトくんも・・・・・・一匹食べる?」

 と串に刺した燻製魚を差し出してくる。


「・・・・・・んじゃ、遠慮無く」


 静かにそれを受け取る。


「陽奈、隣、いいか?」

「え? あ、もちろん!」


 俺はちょっとだけ距離を置いて、陽奈の隣に腰掛ける。


 もしゅもしゅと音をたてて、黙って夜食を食べる俺たち。


「・・・・・・ねえ、リヒトくん。いよいよ、明日だね」


 不意に、陽奈がそう言う。俺は、静かにその言葉を受け止めて、返す。


「そうだな」

「リヒトくんは、不安にならない?」

「・・・・・・どうかな。まったく不安がないといえば嘘になるけれど・・・・・・」


 正直、この惑星に来て初めての局面だからな。


「それより、ちょっと面白そうだな、という感覚が強いかも」

「面白そうって・・・・・・」


 陽奈が苦笑する。


「いや、それは本当にさ。だって、万能工作機械デミのおかげでタロスみたいなデカいマシンも作れたし、オデュッセイア号にも大きな改造をほどこすことができた・・・・・・」


 深夜テンションというやつだろうか。俺の奥底から、言葉があふれでして止まらなくなってきた。


「地球では、ちょっと考えられなかったことだよ。こんなに、色々なことが出来たんだな、俺って。もちろん、デミのおかげといえばそれまでだけれどさ。家どころか、最後は村まで創り上げて、そして、大陸に進出しようとしている・・・・・・エインダたちと対峙するのはしんどいし、不安はもちろんある。でも、どんどん出来ることが増えていくことに対する高揚感、みたいなのも確かにあるんだよ」

「なるほど、ね」

「陽奈はどうなんだ?」

「わたしは・・・・・・解放感、かな。地球にいたときと違って、不便ではあるけれど、その分なんでも自由にできる」

「任せとけ。俺がもっともっと、便利にしていくからさ」

「うん、ありがと。頼りにしているね。でも、今でも充分に便利だけれどね」


 陽奈はそう言うと、ふあぁ・・・・・・と大きなあくびをする。


「・・・・・・食べたら、眠くなっちゃったみたい。それじゃ、リヒトくん。おやすみ」

「ああ、おやすみ」


 陽奈はそう言うと、自室へと向かう。その背中を見送ってから、俺はリビングの照明を消す。


 陽奈との会話の余韻が、まだ頭に残っている。そろそろ寝ないといけないんだけれどな。なんか、かえって目が冴えてしまった気がするが。ま、とりあえず横になろう。


 俺は、自室に戻る。


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