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第12話 再び、格納モジュールへ


「何から何まですごいね・・・・・・」


 陽奈ひなによる案内を終え、葉月は溜め息交じりにそう漏らす。


「言ったら悪いけれどさ、リヒトくんって、クラスであんまし目立たないタイプだったよね? ・・・・・・あ、これ別に悪い意味でいったわけじゃなくってね」


 慌てて否定する葉月に、俺はゆるく笑って受け流す。


「いや、別にいいぞ。本当のことだしな」

「なんかさ、陽奈から話を聞いていて、色々考えちゃったな・・・・・・人は見かけによらない、というより私たちが見ている他人なんて、その人のほんの一面に過ぎないんだよね、て」

「そうよね。わたしだって、リヒトくんとこうして偶然一緒にならなかったら、何も気付かないままだっただろうし・・・・・・」

「とりあえず、めしにするか?」


 俺たちは、ひとまず食事を開始する。


 食後。葉月の寝具をデミを使って作成した後、ヨルが声をかけてくる。


「あの・・・・・・リヒトさん。ちょっとマズいことが判明しました・・・・・・」

「どうしたんだ?」

「デミちゃんのエネルギーが、残り八パーセントになっているんです。すみません、私が気付かなかったばかりに」

「え?」

「予備バッテリーがあるはずなんですが、最初見つけた付近には、落ちていませんでしたからね・・・・・・恐らく、空中分解した際に、失われたのかもしれません」

「・・・・・・どうにか出来ないのか? デミ使って作るとか」

「デミちゃんのバッテリーは高性能ですから、普通には作成出来ません・・・・・・でも、希望はあります。今日行ったあのゼウス号の格納セクションの残骸。タロスやネプチューンは同じバッテリーで作動しています。ですので、あそこの貯蔵室には予備バッテリーがあるはずです」

「・・・・・・ヨル。八パーセントというと、どれくらいもつんだ?」

「最大で三日ほど、でしょうか」


 うーむ。色々としたいことは多いからな・・・・・・。下手したら、明日にでもバッテリー切れを起こすかもしれない。


「今からすぐに探しに行きたいところだが・・・・・・さすがに往復四時間だ。明日にするか」

「リヒトさん。ひとつ、方法があります」

「なんだ?」

「デミちゃんの重力制御装置を使って、空を飛べば、多分二十分弱で到着するかと。ただし、往復で約二パーセントのエネルギー消費は覚悟しておいてください」

「つまり、予備バッテリーが見つからなければ、その分無駄に使ってしまう、てことだな」

「はい・・・・・・それでもよければ、やりますか?」

「ああ。バッテリー発見に賭けよう」


 俺は早速準備を始める。



「あれ、リヒトくん、なにしてるの?」


 シャワーを浴びて、寝間着に着替えた陽奈と葉月が、探索用の恰好をしている俺を見て、話しかけてくる。


「陽奈、葉月。実はな・・・・・・」


 手短に事態を説明する。


「リヒトくん、今から行くつもりなの? わたしたちも同伴しよっか?」

「いや。大丈夫だ。二人は、村に残っていてくれ。夜遅くに、女子を出歩かせるのは危ないからな」

「そう・・・・・・お気遣いありがとう、リヒトくん」

「それじゃ、いってくるから」

「いってらっしゃい」「気をつけてね」


 俺はデミを起動させる。ふわりと、俺の全身が急上昇する。


 深い闇に覆われた夜の森を下目に、ゼウス号の格納セクション残骸を目指す俺。


 ヨルの言うとおり、約二十分の航程で、目的地に到着した。


 月明かりに照らされる巨大な残骸のシルエットは、昼に来たときとは随分と違った印象を受ける。俺はデミのライトをつけて、中に入る。


 足下に気をつけながら、慎重に進む俺。これは第三副司令室・・・・・・これは整備用品モジュール・・・・・・この格納セクションの残骸には、まだ色々と探険する余地があるみたいだな。


「ありましたた・・・・・・リヒトさん、多分これです」


 車輪上のハンドルがついた一際分厚い隔壁の前に立つ俺。


「私のデータによりますと、この奥が備品貯蔵区画です。リヒトさん、開けることはできますか?」

「やってみる」


 ハンドルに手を伸ばす。両手で握り、力を込めて回す。キシキシと金属の軋み音がして、空気が漏れる音と共にハッチが開いた。


「・・・・・・成功だ!」


 俺は、貯蔵区画の中に入る。


 貯蔵区画といっても、小さな体育館くらいの大きさがあった。壁には合金製の規格化された収納ラックが並び、無数のコンテナが詰まれている。


「リヒトさん。向かって右側の奥から三列目以降の棚です」


 ヨルはセンサーを使い、迅速に探索したようだ。俺は言われたとおりの場所に行く。


 そこに並ぶ頑丈そうなコンテナには「汎用型エネルギーユニット」と記されていた。


「これか?」

「はい。開けてみてください」


 コンテナの一つをラックから地面に降ろして、慎重に開ける。

 中には、六個のバッテリーが並んでいた。


「損傷等ないみたいですね!・・・・・・成功です、リヒトさん」

「ああ。そうだな」

「これ、持っていきましょう! あ、それとその隣のもついでに持っていくと、便利ですよ」

「ん? なんだ」


 俺は隣のコンテナを見てみる。そこには「汎用型エネルギーユニット・充電型」という文字が並んでいた。


「充電式のバッテリーですね。発電機が必要ですが、それも持っていくといいかもです」

「了解した。・・・・・・ヨル。せっかく来たから、色々と持って帰ろう。残りのデミのエネルギーで、どれくらい運べる?」

「そうですね・・・・・・創星村そうせいむらのスペースも考慮しますと・・・・・・」


 ヨルが、色々と考え始める。



 ドォン、と地面に着地する音が、創星村そうせいむらに響く。


 寝室から、パジャマ姿の陽奈と葉月が出てくる。


「あ、リヒトくん。お帰りなさい・・・・・・て、ええっ!? なにこれ?」


 俺の格納モジュールから持ってきたものに、陽奈も葉月も目を丸くする。


「おう陽奈。デミの残りのエネルギーをフルに使い切って持ってきたぜ」


 だが、ちょっと欲張り過ぎたかな。なにしろ、俺が持ってきたのは、人型作業機械タロス三体に、小型潜水艇ネプチューン、そして三十を越えるコンテナだからだ。


「リヒトくん、ちょっと欲張り過ぎじゃないの・・・・・・? でもありがとね」

「なんか、リヒトくんって、色々と予想外で面白いわよね」


 陽奈と葉月が苦笑する。


「ま、いいだろ。明日になったら、ガンガン工作だ」


 俺は、胸を張ってそう言うのだった。


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