凡人、避難する。
ミスクさん、アル君、レイト君でソファーに座って、実験の話を詰めておく。
いつまた何が起こるか分からない。
会えるのかも分からない。
展示会が終わったら、全てが終わっていればいいんだけど・・。
とにかく4人で作っておけるものや、気になる事を書きだしておいた。結構遅い時間になって、周囲の人もまばらだ。
そろそろ休もうとして、ミスクさんは、気を利かせて私とレイト君を二人きりにしてくれた。
ご配慮・・ありがとうございます・・。
大分照れ臭いです。
私とレイト君は、カウンターのある方の席に移動して二人で手を繋いで、しばらく黙っていた。
「・・ちゃんと気を付けて生活しろよ」
「・・失礼な、私は年上ですけど」
思わずブスくれてレイト君を見ると、心配そうに私を見ている。
な、なんだよ・・そんなに頼りなさそうなの?
「・・・・りつ」
そういって、ソファーから立って少し屈むと、私の頭をそっと抱きしめた。
「・・・本当は一緒に居たかったけど・・、今回は危険だから」
「レイト君・・」
そっと、ちょっと迷いつつレイト君の背中に腕を伸ばす。
あったかいなあ・・。
レイト君は私の顔をじっと切なそうに見つめる。
「・・ミスクさんの言うこと聞いて、気をつけろよ」
「あのですね・・、私は子供じゃ・・」
そう言いかけると、ふっと柔らかな感触を唇に感じる。
あ、キス・・?
驚いて目を開けると、レイト君もそっと目を開けてこちらを見てる!!
な、なんで・・目を開けてる!???
思わず後ろに後ずさりしそうになると、逃げるなとばかりに後頭部を抑えられ、唇が追いかけてきた。
「・・・っ・・・」
熱い、唇なのに・・・。
目をぎゅっと瞑ってしまう。む、無理ーー!!
頭がぐるぐるして、体が固まってしまう。
そっとレイト君の顔が離れて、お互いの顔が赤いのが分かる。
「・・・・ここ、談話室ですけど・・・」
「・・今日だけ」
今日だけじゃないと思うけど・・、見上げると柔らかく笑うレイト君に胸が痛む。
・・そういう事されたら、離れたくないじゃないか。
ぎゅっと、レイト君の袖を掴むと、顔の上でちょっと笑った気配がした。
「・・・年下のくせに、生意気だ」
ボソッというと、年下のレイト君はちょっとニヤッと笑って・・
「2歳だけしか違わないし」
「大分違うし・・」
ちょっと目を逸らして言うと、また笑われた。
これ以上キスされたら、心臓が大変な事になるのでレイト君の胸の中に頭を突っ込んだ。ついでに涙が見えないようにした。
・・これ以上、年上としてみっともない所は見せられない。
そう思ったのに、ぎゅっと抱きしめてくるので・・、ちょっと、やっぱりバレてたかもしれない・・。
そうして、翌朝。
レイト君とアル君に見送られて、騎士さんたちに囲まれてひっそりと移動した。
小さく挨拶すると、騎士さん達に急かされ・・すぐに馬車へ乗り込み研究所を後にした。
黒く塗られた馬車の中で揺られてうとうとしていると、半日ほどで森に囲まれ、鉄柵の中にあるレンガでできた要塞のような建物が見えてきた。
ミスクさんは、その建物を見て・・
「・・・あれ、王族の保養地の建物じゃあ・・」
「お、わかった?王様が使っていいって、貸してくれたらしい」
モーリスさんがそんな風に言って、私は驚いて窓から見せてもらった。
結構、堅牢な建物だ・・。
「・・王様って、結構気軽に建物を貸してくれる・・ものなんですか?」
だって、私達がとんでもない人だったらどうするんだろ?
そういうの考えないのかな?
私はモーリスさんに尋ねると、ちょっと可笑しそうに笑った。
「展示会もあるからな・・、あの建物は最近使ってないから・・との事だそうだ。」
「へ、へえ・・・」
目を丸くしてモーリスさんと建物を見る。
王族って、すごいなぁ・・。
レイト君達の移動先は秘密らしい。お互いに知らないようにしておきたいらしい・・。念の入れように、レイト君の心配そうな顔が思い浮かぶ。・・・・年上ですから、危険な事はしませんよ〜。
そんな風に思いながら、近付いてくる建物を窓から眺めるのだった。




