凡人と大事な人。
万が一、拠点を移すにも全員で移るのは危険だと話があったらしい。
モーリスさんと、ミスクさん、私と、パルクさん、レイト君、アル君の二手に別れて拠点を移すという話になったけど、え、これってもう決定事項なの・・?
モーリスさんを不安げに見ると、眉を下げて・・
「犯行声明に、魔道具開発や、薬学、機械工学が含まれていたんだ・・」
「・・魔法に反する人達って事・・ですね」
そう話すと、静かに頷く。
もう勘弁してよ〜〜!!!
肩を落とすと、ミスクさんがそっと手に肩を置いて優しく撫でてくれた。
「・・・・もう悔しい・・。何も悪い事してるわけじゃないのに・・」
私がそう呟くと、モーリスさんがニヤッと笑う。
「まぁな!こっちだってやられっぱなしでいかねぇぞ!とりあえず作って、作りまくってくぞ!!」
そういって、私の頭をわしわし撫でた。
なんか・・こっちの世界の人はなぜ、こう・・優しく撫でられないのだ・・。ミスクさんがボサボサになった髪を直してくれた・・。
モーリスさんは私達を見回して、
「明日、時間を分けて拠点を移す。ひとまずミスク達は朝8時に寮の玄関前に、レイト達は9時だ。」
皆、静かに頷くとモーリスさんも頷いた。
寮に戻るまで、みんな黙って歩いていた。
談話室では、研究所にいる人で同じように避難を言い渡された人達が声を潜めつつ、準備をしていた。どこかザワザワと落ち着かない雰囲気に飲まれそうだ・・。
うう・・・、なんか怖いなぁ。ちょっと不安になるよ、これは・・。
ミスクさんは、ひとまず準備をしたら談話室にもう一度集まって、実験の確認だけはしておこうと話す。確かにアル君と作ってる物もあるし・・離れてしまうなら、今の内だ。
すぐにそれぞれ分かれて、すぐに出られる準備をする。
ようやく落ち着いたと思ったのにな・・。
折り紙で、何枚か携帯電話のように折って魔法をかけておく。レイト君に、いくつか渡しておけば・・話せるかなと思って・・。
そうして、準備を終えて談話室へ向かうと、レイト君がもうソファーの一角に座っていた。姿を見ただけで、ホッとしちゃうなぁ・・、軽く手を振ると優しく笑ってくれた。
ソファーの隣に座れとばかりに指差すので、ちょっと恥ずかしかったけど座った。
「・・なんか、大変な事になっちゃったね」
「魔法使いの団体がそんなに力があるわけじゃないから・・、もしかしたら違う国も手を引いてるんじゃないかって、話もあるみたいだ・・」
「違う国・・」
周りがそう話してたって、レイト君がボソッと話した。
そうなると、かなり大ごとだな・・。
「あ、そうだ・・レイト君これ」
いくつか作った携帯電話を袋に入れてまとめたものを渡した。
「・・電話?」
「うん、話せるかは分からないけどね・・」
ちょっと照れくさくて、俯きつつ渡した。
できれば・・話したいなぁ。どれくらい離れるか分からないし・・。どこに行くかも詳細は伏せられてしまったし・・。
レイト君は、袋を受け取ってちょっと切なそうに私をみる。
「・・・・ここじゃあ、キスもできない」
「・・・それだけは勘弁して下さい」
思わず目を逸らすと、面白そうに笑って頭を優しく撫でてくれた。
うう・・年上なのに、こんな頼りなくてごめんよ・・。
「・・頭、私も撫でたい」
「・・・ダメだ。俺が恥ずかしい」
「え、それ、ずるくない?」
そう言われて止める私ではない。
頭に手を伸ばすと、避けられるので、ムキになって撫でようとしてたら、ミスクさんがニマニマ笑いながらこちらへやってきた。
「あらあら〜〜、お邪魔しちゃって申し訳ないんだけど、いいかしら〜〜?」
「・・・・・いえ、とんでもないです・・」
そっと手を膝の上に置くと、ミスクさんが面白そうに笑った。
「いいわね〜こういう時に相手がいるって!」
そう言って可愛くウインクして笑いかけてくれて、なんだか肩の力が抜けた。
うん・・、レイト君がいてくれて・・よかった。
隣に座るレイト君は、ちょっと照れ臭そうに目を逸らしてたけど・・。




