天才も戸惑う。
夜遅く帰った私をミスクさんは心配してくれて、
「レイト君に送ってもらったから、大丈夫だよ」
とか言えたけど、女子だと教えてしまったのは・・うまく言えなかった。
うう、明日・・明日言おう。
そう思って、なんというか胸の中がこんがらがっている状態が辛くて、ベッドに倒れこむように寝てしまった・・。
翌朝。
毎回、スッキリ目覚める私ってば・・健康体!
ため息をつきつつ、手早く身支度するけど・・、服、どうしようかな・・、女子っぽく見える物を着るべき・・?いや、何も持ってない。
「あ、ミスクさんにもらったチュニックあったな・・」
これなら、まぁ女子にも見えなくもないし・・。
そう思って白いふんわりとしたシャツを着るけど、黒いパンツとブーツを着ると・・うーん男子!ま、いっか。
台所へ行くと、ミスクさんが挨拶してくれる。
「おはよ〜!あ、それやっぱり似合うね!どこから見ても可愛いわ」
思わずドキッとして、顔が引きつる。
「あ、そ、そう・・?ミスクさんの服、どれも可愛いよね」
「うふふ〜、ありがと!明日私も休みだし、一緒に買い物行きましょ!」
「う、うん・・・」
なんだか歯切れの悪い私に、何かを察したのか・・?世話焼きセンサーが発動したらしい・・。ミスクさんの目がキラッと光る。
「・・・・・バレた?」
お茶を飲みかけていた私は、思わず吹き出した。
ゴホゴホと咳をすると、ミスクさんはニンマリ笑いながら、私の背をさする。
「そうか、そうか〜〜、やっとあのニブチン気付いたか〜」
「ニブチンって・・、いや、私が言いまして・・」
「あら!そうだったの?そうかそうか〜〜。ま、いいんじゃない?ちょっと距離感おかしかったし」
・・ハタから見てても、そうだったのか・・。
ああ、じゃあレイト君に大分迷惑かけちゃったな・・。あらぬ誤解を受けちゃったかもしれない・・。
「うん、だからこれからは気を付けるって言った」
「気を付ける・・?」
「え、うん・・ベタベタしないって・・」
「そう言ったら、どんな顔してた?」
「複雑そうな顔・・?」
それを聞いて、ミスクさんは大爆笑してた。
ええ、な、なんで??迷惑かけないようにって思ったのに・・、いや、本人も今更とか言ってたけど!!
ミスクさんは、なんなら涙を流しながら笑い転げていて、私の頭を撫でる。
「そのままのりつでいて・・」
「ええ、本当に???」
静かに笑うミスクさんに頭を撫でられた。
そうか・・?このままでいいの・・・?
二人で出勤して、仕事場に入るとモーリスさんとパルクさんは、もう作業していた。いつも思うけど、ちゃんと帰っているのだろうか?
アル君と、レイト君はまだ出勤していない様子に、ちょっとホッとした・・。
自分の作業台にカバンを置いて、今日使おうかな・・って思っていた物を用意すべく、用具庫に向かう。脚立、重いんだよなぁ・・・。
「う、くそ・・重い・・」
フラフラしつつ、脚立をセットして高い場所に置いてある道具を引き出しから取って、籠に入れていく。魔法がない人も、ある人も使えて便利な物って何かな〜なんて考えつつ、引き出しの中を確認する。
と、誰か入ってきた気配を感じて、そちらを見ると
レイト君が立っていた。
「あ、お、おはよう・・・」
「・・・おぅ、ちゃんと来たな」
そりゃ、昨日の今日だから恥ずかしくて、ちょっと出勤したくなかったけど・・、今日は騎士団にもデータ取りに行くし・・。仮にも社会人ですし、個人的な理由で行かないわけにはいかないでしょ・・。
「・・そりゃ、来ますよ・・」
ちょっと・・いや、かなり照れ臭いけどね。
「あ、道具探す?今、どくね」
「いや、大丈夫」
そういってレイト君は、私の横を通り過ぎて下の方の棚から、道具を出していた。
そんな変わらない様子にホッとして籠を持って脚立から降りる。
脚立を片付けようとすると、レイト君が私の手からヒョイっと持ち上げて、置いてある場所に片付けてくれた。
「・・・これくらい頼め」
「いや、でも悪いし・・」
そう言ったら、頭をわしっと撫でられた。
い、今、そういうのされるの・・恥ずかしいんですけど!!!!!




