得意なものは?
ミスクさんの家は、大きな門を入ると中庭があって、それを囲むようにコの字のようにレンガ作りの家が建っていた。
「・・・・デッカい」
「そう?普通じゃない?」
「私の世界では、普通じゃないですね・・・」
歩きつつ、私がどうも異世界から来た・・と、話すとミスクさんはすんなり信じてくれた。
「魔力は持ってるけど、色が違うなぁ〜って思ったのよ!納得だわ。それに、まぁ、この世界ではあまり珍しくないのよ」
「そ、そうなんですか?!!」
「だから、ここの世界の文化はちょっと面白いのよね〜」
そんな事を話しつつ、玄関へ入ると玄関から違う。広い。
私の借りてた部屋くらいありそう・・。
東京の建ぺい率えぐい。
「りつの部屋は、二階ね。もう使ってない部屋だから気軽に使って」
「ここまで来ちゃったけど・・、本当にいいんですか?」
「いいわよ、私以外ここ住んでないし」
「え?!こんなに広いのに一人?!っていうか、ますますいいんですか?」
ミスクさんは、ニコニコ笑って・・
「住む場所も、仕事もない人間・・どーして放り出せるのよ。大丈夫!私、強いし!!」
「は、はぁ・・・」
うん、とりあえずミスクさんには、絶対恩返しするぞ!!そう思って、案内された部屋は可愛らしいパステルグリーンの壁紙の部屋だった。おう・・・乙女感満載。
「か、可愛いですね・・」
「でしょー!?昔使ってたのよ、あ、そこの横のドアが洗面所とお風呂ね」
「嬉しい・・・ありがとうございます・・」
「服は・・・、弟のが入るかしら」
ミスクさんは私をちらっと見る。
私は150前後だけど、ミスクさんは結構長身だった上にグラマーだった。そうですね・・。私だとミスクさんの服を着たら、胸があまりそう・・。
「もう弟は大きいから、服もあげるわ。お金が稼げるようになったら、徐々に集めていけばいいし・・。あ、下着は流石に用意するから安心してね」
「ミスクさん〜〜〜、もう本当にありがとうございます!!あ、仕事って・・私、何かできそうなのあります?」
お金を少しでも早く稼ぎたい!
服もだけど・・、ミスクさんにもお礼もしたいし・・。
ミスクさんは、少し考えて・・、私を見る。
「・・あなた、物作りした事は?」
「・・・えっと、あまり・・・あ!折り紙が得意です!!」
実は、折り紙が大好きで一時期ハマって、ものすごく作りまくっていたのだ・・。大概の物なら作れる。
「折り紙・・・??」
「何か紙、ありますか?」
ミスクさんが、部屋の中のテーブルの上にあった紙を一枚くれたので、正方形に切ってから定番の鶴を折る。ミスクさんは、私の手付きをじっと見て・・、私は、羽をそっと広げていくと鳥の姿になったのを目を丸くして見る。
「・・・・え???!!紙をこんな風に折ると、鳥になるの?」
「うふふ、他にも何でも作れますよ?」
「なんでも?」
「大体、なんでも・・。ハマって、家中折り紙だらけにして怒られたくらいです」
ミスクさんは、目をキラキラさせる。
「ね、りつ!この鳥の羽に、魔力を込めてみて!」
「え??やった事ないですよ」
「大丈夫、指をここの羽に置いて、飛べって念じてみて!」
ミスクさんの熱意に満ちた目で見られたら、断れない・・。
そっと、鶴の羽に指を当て・・
飛べ
そう念じてみると、羽がピクッと動く。
動いた?!!鶴は、両方の羽を動かして、空を静かに飛んで・・念じた私があっけに取られる。
「とん・・だ・・・」
「やった!!!やったわ!!!これでお仕事決定ね!!」
ミスクさんが飛び上がって、私の手をぎゅっと握る。
え?仕事・・???
「あの、仕事って・・・」
「私の職場へ明日いきましょう!!王都の魔道具開発部よ!!!」
ものすっごい一言の中に凝縮された情報量に、目を白黒させたのは言うまでもない。えーとミスクさん・・もう一回言って欲しいなぁ・・。鶴が私の頭の上にため息をつくようにゆっくり着地した。