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ミツキとつきあいたい!  作者: 石戸谷紅陽
第2章 混沌のゴールデンウィーク。
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待ち合わせ。

あたしの名前は泉野早枝。

今日はゴールデンウィーク3日目。

みんなと旅行にいくのだ。

時間は9時を少し回ったところで、あたしは家から一番近いコンビニで吉川兄の車を待っている。

「やっほー。泉野さーん。」

あたしを呼ぶ声はとてもハツラツとした若い声で、振り向かずとも誰かわかってしまうほどだ。

「おはよ。高岡さん。」

そこにはシャツスタイルの春服の可愛い女の子が立っていた。

かたやあたしときたらしたはホットパンツに上なぞジャージである。

手抜きすぎたかと自分を振り返りつつ高岡さんの私服に改めて目を向ける。

「高岡さんそのシャツ可愛い」

ありがとーと嫌みなく照れた顔する高岡さん。

本当に彼女は変わった。

垢抜け方が尋常ではない。

吉川さんのようなゴテゴテのギャルというほどではなく、それでいて攻めた着こなしをしている。

男子の求める清楚系とはこんな女子なのだろう。

それは幻想だと全員正座させて小一時間問い詰めたい。

高岡さんはあたしのジャージの裾をクイクイッと引っ張っりコンビニを指指した。

「ねえ、飲み物買いに行こうよ、あとお菓子!」

高岡さんには本当に頭が上がらない。

あたしは何度彼女救われた。

この子だけはあたしは裏切りたくない。

これ以上自分に失望したくない。

態度ばかり大きい、器の小さいあたしを…。

「あれー?ミツキとサエじゃん!」

もう2度と聞きたくなかった声が聞こえる。

間違えるわけがない。振り向きたくもない。

あたしの中学の汚点を振り返ってしまう気がするのだ。

「あ!倉本さん!久しぶりー!」

高岡さんはまたも明るく挨拶をした。

自分をいじめていた女に。

いや、それはあたしに向ける笑顔と同じものだった。


……あたしも同じなのか。

倉本とは違うと思っていた。

でも客観的にみて、少なくとも高岡さんから見て、あたしと倉本さんはなんら変わらない加害者なのだ。

胸をさす後悔がまた鋭利さを増してあたしに襲いかかる。

その先にいるのはあたし。

結局、あたしはあたしが許せないままだ。

ホント面倒な人だ。

まだそんなことをいっているのか。

自分は許さなくていい。

いじめは一生抱えて歩いていくって決めたんだ。

高岡さんにビンタしてもらってやっと進めた歩みをここで止められないんだ。

「ミツキはこれからサエと遊びに行くの?」

そだよーと笑う高岡さんに倉本は冷たく笑う。

「ミツキも人がいいよね。よく自分をいじめたやつと遊べるよ」

お前だっていじめていたじゃないか。

そう心で罵倒したが押し殺した。

倉本がいじめていたことはあたしがいじめていい理由にならないのだから。

「ミツキは倉本さんの方が怖かったよー!」

ミツキは笑いながら語る。

ミツキは本当にいじめを乗り越えてしまっている。

たった3年前のあの壮絶ないじめをもう過去の出来事にしてしまっている。

そしてミツキは誰も悪者にしないのだ。

ひどーいとすねる倉本に嫌悪感しか芽生えない。

倉本はあたしの批判をやめない。

「いやいやサエ程じゃないって!サエ本当に酷かったんだよ?ネットでミツキの悪い噂をいっぱい広めたこともあったし、クラス外でもミツキが浮いたのはサエのせいなんだよ。」

事実だ。

あれでクラス外でも居場所が無くなった高岡さんは学校全体で居づらくなったのだ。

全てあたしの計画通りいくのでとてもスカッとしていたのを覚えている。

「他にもね。ミツキのお気に入りだったストラップあるじゃん?あれ水槽にしずめたのもサエなの」

「知ってるー。もう謝ってもらったしおもいっきりひっぱたいてすっきりしたとこ。」

ミツキはまったく皮肉なく笑って返す。

あたしは今日なんで着いて来たんだろ。

何を楽しみにしてきたんだろ、あたしみたいな糞人間がいっちょまえに旅行していいわけがないのに。

「ミツキはホントに優しいよね。でも、これ知ってる?ミツキの教科書にさ…」

突然倉本は何者かに胸ぐらを捕まれ会話が止まった。

そこに現れたのは吉川さんだった。

「黙って聞いてりゃあ…。クソみてぇな文言ならべやがって…」

倉本の首元にある手は震えている。

「は?誰よあんた」

倉本の問いに吉川は答えた。

「2人の友達よ。これから旅行にいくとこなの。目障りだからどこか行ってくれる?」

倉本は冷たく笑う。

「ミツキ。またいじめられたら相談してね?力になるから。サエがいるんじゃ本心なんて話せないだろうし」

「泉野を悪く言うな!」

叫んだのは吉川さんだった。

「泉野が何したかなんて知らない!ウチは自分の見たことしか信じない。あんたの話だって鵜呑みにしたくない!でもね!あんたの話はむちゃくちゃなのよ!そこまで見ていてなんで止めなかったのよ!今言ってなんになるのよ!自分の罪悪感を人に押し付けて正当化したいだけじゃない!」

吉川さんのキレイな顔は怒りの形相に変わっている。

「あんたの名前も知らないけれど知りたくもないから何も言わずに立ち去ってちょうだい。」

倉本は意味わかんないとかありえないとか捨て台詞を吐いて立ち去っていった。

「よっしー。カッコいい!あたっ。」

高岡さんは額を吉川さんに小突かれた。

「いい人はやめろっていつもいってんでしょ?あんなやつと話すだけ時間の無駄よ。」

ごめんなさいと額を押さえながら小さく謝る高岡さん。

「あの…」

今日はあたし帰ろう。

やっぱりあたしは楽しんじゃダメだ。

幸せになっちゃダメなんだ。

昔話から決まっていること。

悪役は成敗されてハッピーエンドなんだ。

「あたし今日ちょっと用事できちゃって」

吉川さんは小さいため息をついた。

「なにベタなこといってんのよ。行くわよ旅行。」

「ミツキは泉野さんと行きたい。」

2人の真剣な顔が心に刺さる。

また言わせてしまった。

こういって貰えるのはわかっていたから。

これ以上自分を嫌いになりたくないのに。

「ウチは高校からの泉野しか知らない。いつも不機嫌で誰にも話しかけさせないあんたしかね。でもクラスで浮いてる奴がいると話しかけていってさ、そいつに仲間ができると身を引くあんたをうちらは知ってる。今回だって今井をなんとかしようとしてたんでしょ?ウチは自分の知ってる泉野しか評価しないんだから、勝手に自分に不合格出さないで」

吉川さんはコンビニに向かって歩きだしクルリと振り返った。

「さっ。飲み物買いにいこ?」


駐車場の大きなワンボックスカーの運転席で物静かそうな眼鏡の男性が呟いた。

「青春だなー」

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