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10話 西の白虎、南の雀。これでは勝ち目なんてありません【湊視点】

「ひ、独り暮らしなのっ!?あ、でもいきなり理由を聞いたりするのは良くないか…。でもそういう事なら…」


彼女が何かぶつぶつ呟いている。

先に支払い済ませてこようかな…。

なんか自分の世界に入ってるみたいだし。

僕は支払いを済ませようとレジに向かう。彼女の横をすり抜けようとして、目の前に現れる黒い影。

えー、またですか。この展開もうお腹いっぱいですから…。

先程の教室同様に僕の向かう先に立ち塞がる彼女。

はぁ、もう聞くのも面倒だけど一応聞くしかないか。


「ど、どうしたの?僕、お、お金を支払いを、す、す、済ませたいのだけど」


「うん、決めた。考えてみればお詫びがノートのコピーだけってのも、誠意が感じられないわよね」


僕の言葉を無視して、彼女は、まだ独り言を呟いている。

だからレジに行きたいのに…はぁ…。

もう好きにしてくれ。

彼女からの返事を待つ僕の手から、商品が抜き取られる。

あれ?まさか出してくれる気なのかな?

お礼の品もあるのでそれはちょっと困る。

そんな彼女を見ていたら、次々と商品が元々あった場所に戻される。


「さあ、行きましょう」


戻ってきた彼女がそう言ってるが、何を言っているのか理解が追いついてこない。


「い、行くって、ど、どこに?」


とりあえず質問してみたが、返ってきた答えは想像もしていなかった内容だった。


「どこって、あなたの家に決まってるでしょ?あ、その前にスーパーに寄って買い物しないと。案内お願いね」


さらっと言ってますが、広瀬さんそれは色々マズイですから。

そもそも、どうしたらそんな発想が思いつくわけ!?

これは流石に、『はい、そうですか』なんて言えるわけもなく急いでお断りをいれる。


「そ、それ無理。う、ウチに来る意味、ない、ないし」


「意味はあるわ。ご飯ないんでしょ?お詫びを兼ねて今日は私が作ってあげる。料理はそれなりだから任せて」


広瀬さん、『〜してあげる』って言葉は上からの物言いですよ?

しかも、それ僕頼んでませんからね?


それよりも、そんな簡単に男の家に、しかも一人暮らしの家に行くとか言いますかね…。

危機感がないのか、それとも彼女は遊び慣れてるのだろうか…。

何れにせよ詮索をするのはやめておこう。

べ、別にビビってるとかそんな理由では断じてないと、一応僕の名誉の為に言っておく。


「よ、夜…約束あるから…。だからご、ごめん」


僕は明確に拒否した。

断られると思っていなかったのだろう。

半開きの口、見開いた目…

せっかくの可愛い顔が間抜けな事になっているが、直ぐに真顔に戻る。

一瞬大きな二重の目が細められたのを僕は見逃さない。

だが、彼女はあろうことか秘密兵器を使いながらこんな事を言ってきたのだ。


「その約束は今日じゃないとダメなの?」


その秘密兵器の名は、そう…『上目遣い』

可愛らしい彼女がすると、かなりの破壊力ではあるが、僕は屈しない。


ていうか、そこは引くところでしょ。押してばかりは得策ではないという事を彼女は知らないのだろうか?


「さ、先に…約束し…」


「断って」


最後まで言わせてもらえなかった。


「だ、だからさ、先に…」


「断って」


「だ…」


「断って」


「・・・・・」


「断って」


「は、はい…」


どうやら、僕の意見は聞き入れてもらえないらしい。

とんでもない事になった。後悔先に立たずと言うが、自分の迂闊さが心底恨めしいと思った…


言い忘れてました。

押してばかりでも得策になる事はあるらしいです。

日本人の慎ましさは美徳なはずなのに、どこいったのでしょうか!?

どうやら僕はまた一つ賢くなった様です。

次回は、彼女の登場となります。誰視点から今から考えようと思います。

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