花見酒ー甘やかすのは君だけだ
富士崎社長には甘い日向キャプテンです。
満月の明るい光が、庭の白薔薇を照らしていた。
それを眺めながら、藍色の着流しを着た日向キャプテンは、縁台で盃を傾けていた。
「あなた、風が冷たくなってきたわ。そろそろ中に入ってはどう?」
富士崎社長は、螺鈿の盆に乗せた白磁の徳利を縁台に置きながら言った。
普段の品のある着物姿とは違い、白地に向日葵が描かれたシンプルな浴衣に、髪は軽く簪で纏めただけの楽な格好だ。
「私もいただくわ。」
「注いでやろう。」
徳利から静かに酒が注がれる。
盃が満ちる音が、夜の中に小さく溶けた。
「クリスタニア、大丈夫かしら。」
盃を持ったまま、富士崎社長は月を見た。
「心配するな。それよりも、クリスタニアが戻ったら、やりたいことがある。」
そう言って、日向キャプテンは盃に口をつけた。
「何ですの?」
富士崎社長も、優雅に盃に口をつける。
「式を挙げよう。二人きりで。」
日向キャプテンは、静かに富士崎社長の髪に手をやった。
「忘れてたわ。あんまり忙しいから。」
「俺が見たいんだ。君の白無垢姿を。」
「あなたはいつでも喜ばせてくれるのね。」
「君が喜ぶ顔が好きだからな。」
簪が縁台に落ちた。
その先は、満月と白薔薇しか知らない。
とても甘やかな大人時間ですが、この後、日向キャプテンが再び商船たちに鉄槌を下します。




