( 26 )助けてあげたい
「夜の魔法学校」
事情を話しているうちに、また、泣いたスザンヌ。エドワードがハンカチを手渡してくる。
「貴族って、冷酷だろ。人の痛みなんて関係ないから。誰が死のうと平気だからね。」
でも、このままだとジュリアンお爺さんは物置小屋で亡くなってしまう。どうにかしないと。パトリシアが、提案した。
「スザンヌのお店の近くの家を借りて住まわせるしかないだろう。このままだと、毒殺されてもおかしくないから。」
毒殺ですって?あの嫌な従兄弟なら、やりそう。スザンヌは涙を拭いていたエドワードのハンカチを怒りに破いた。
ビリビリーー。
エドワードが、ギョッとする。
「スザンヌちゃん、止めて。力、強くなったんだね。」
「あ、ごめんなさい。弁償します!」
「いいけど、さ。髪の色は、変えたの?青くなってる。」
「青くですか?」
部屋に置いてある手鏡を見て、気がついた。髪が青くなっている。でも、家で鏡を見た時は青くなかったのに。
それを聞いたパトリシアが、判断する。
「スザンヌさんの魔力が強まると出るようだね。墓場でも、青くなっていたようだから。」
現場に居合わせた人の証言。だったら、そうなんだ。鏡の中のスザンヌの髪の色は、青の色が薄れ出している。
「パトリシアさん、髪の毛が元に戻っていきます!」
「泣いていた事と関係あるでしゅう。感情の起伏で魔力が増幅するのかもでちゅ。」
「感情の起伏って?」
「人間が感情を高まらせるのは、怒りと悲しみでしゅう。」
パトリシアの話は理解出来なかった、難しくて。感情が何とかは、分かりません。スザンヌは、それ以上は聞かない事にした。
それよりも、ジュリアンお爺さんの身の安全。ゴメスさんに家を借りなきゃ。
ドルウ・ゴメスは、会社に居た。スザンヌの頼みを心よく聞いてくれる。
「いいですよ、空いてますから。人が住んでた方が家も痛みが少ない。」
良かった、引っ越しできるわ。執事さんと話をしてジュリアンお爺さんを移さないと。
(あ、執事さん。会ってないけど、何処に居るのかな?)
移動ドアを取り出して、執事の居る場所と命じる。パトリシアの魔法道具なので、名前を言えば行けるオプションが付いているのだ。
パトリシアは、並の魔法使いではないらしい。外見は普通の女の子に見えるけど。
「ハラさん(ハリス)!」
呼ばれて、執事は振り返った。スザンヌが居るので驚いている。スザンヌは、当たりを見回してビックリ。
「何、ここ?もしかしたら、お城?」
大きなシャンデリアに壁や天井の装飾のキンキラキンの豪華な事。これが、噂に聞くお城かも。
「そうでございます。旦那様の爵位の剥奪を取り消してもらおうと来てみましたが。」
どうやら、聞いてももらえなかったらしい。執事は痩せていて疲れて見えた。励ますように、スザンヌは言う。
「元気を出して下さい。ジュリアンさんが暮らす家を借りれたんですよ。今までのお屋敷よりは小さいけど。」
執事は、顔を輝かせた。ついでなので、移動ドアから借りた家に案内する。こじんまりとした二階建ての家が気に入ったようだ。
すぐさま、ジュリアンの処へ向かう。これで、良くなると2人は明るい希望を抱いていた。
「旦那様、喜んで下さい。スザンヌ様が!」
移動ドアから走り出る執事。何時も品よく行動する彼にしては、珍しい事だった。よほど、嬉しかったのだろう。
「旦那様・・?」
駆け寄った執事は、主人のベッドの側で立ちすくむ。後を追ったスザンヌは、執事の後ろからベッドを見て叫んだ。
「嫌あああああーー!」
ジュリアンが目を閉じて血を吐いていたからだ。




