( 19 )開店準備
スザンヌの大好きな人になったパトリシアさん。パトリシア先生は、本当に貧乏男爵の令嬢だったのだ。
パトリシアの入れてくれたロイヤルティーを飲みながら愚痴に耳を傾ける。
「スザンヌさんは、ましだ。私は、13人兄弟だぞ。兄弟や父親母親に父親の愛人まで養っているんだ。毎月の生活費だけで金額が太いよ。」
とんでもない事を聞いてしまいました。同じ年なのに、父親の愛人に生活費ですか?
「あ、あの、お父さんの愛人にですか?」
「そうだ。愛人の館の家賃から親父の世話代金。2人で贅沢に遊び暮らしてる。」
「遊び・・暮らしてる?」
「私の稼ぎが無くなったら、金持ちの爺さんに私を売るつもりだ。何しろ、王子な元婚約者だから売れるだろう。」
またまた、驚く情報です。「王子の婚約者」ですか、凄いー!
「どうして、元婚約者に?」
「どうしてって、王子が亡くなったからだ。おい、エレン。笑うんじゃない。」
あら、エレンが笑ってる。おかしそうにしてるのは、訳を知ってるんだ。ずるー、自分達だけ。仲間外れだね。
「この都も、王子が亡くなったくらいから政権争いが酷くなって暗殺が横行している。命の惜しい貴族は逃げ出して行くようだ。」
毎日、誰かが殺されているらしい。今では生き残った僅かな王家の血を引く貴族が大勢の兵士に守られて暮らしてるという事だった。
「この1年か2年で、片付くと思っているがね。王家の血を引く者が消え去るか、新しく王家が始まるか。だが。」
そんな時代に商売なんか始められない。そう諦めて肩を落とすスザンヌ。パトリシアが慰めた。
「だからこそ、チャンスかもしれないぞ。身の危険を感じる時だからこそ、魔除けが必要だ。だけど、商売のコンセプトを考えないと客は来ない。分かるかい?」
コンセプト?それって、何なのかな。スザンヌには、初めて聞く言葉だった。
パトリシアが頼んでくれたのひ、共同経営者の商人ドルウ・ゴメス。長身で肌は浅黒く肩まで伸ばした焦げ茶色の髪に赤いメッシュの色男だ。大好きーー。
年齢は私より10才以上は上だけど、お父さんよりは下。細マッチョと分かる身体つき。
「スザンヌさん?私の話を聞いてますか。」
耳もとで囁かれて飛び上がる。見惚れて
、聞いてませんでした。慌てて言い訳。
「すみません。ゴメスさんて、女の人にもてるたろーなて思って。」
薄い唇の口角が上がると、口元がエロッ!
「ありがとう、誉められたみたいたな。ニコッ。」
やだー、ドキした。このオヤジ、遊び慣れてる。危険信号!
「ゴメスさんてパトリシアさんと共同経営者なんでしょ。パトリシアさんと付き合ってる?」
ゴメス、固まる。目が点になり、真剣に尋ねる少女を見つめた。そして、次の瞬間に笑い出す。
「パトリシアと?私が?アハハハー!」
そして、絶対に有り得ないと言い切られる。どうしてなんだろ。告げ口してやるから、パトリシアに。
ゴメスは、都に幾つもの建物を持っていた。半分以上は、空き家になっていたが。
「今の状況では仕方ない。貴族たちがパーティーを開かないくては、女性たちがドレスを作らない。作らなければ、靴屋も宝石商も商売にならない。場所変えするだろう。」
何軒かを見せてもらったが、家具付きでスザンヌの家よりも豪華だ。家賃を聞くのが怖いくらいに。
「あのね、ゴメスさん。私、素人なの。だから、こんないいとこは払えないわ!」
「払う?こんな可愛いいお嬢さんに、心配させたのか。失礼しました。お金は、必要ないんだよ。」
「必要ないって、敷金が?」
「いいや、全部だ!」
聞き間違えたかと、スザンヌはドルウの笑顔を見つめた。本当は、見たくない。見たら、中年の魅力に負けそうで。
純真な少女を、たぶらかすなー!と、無駄な抵抗。だって、何とも思ってなくてもドキするもん。
「聞こえたかい?どうせ、空いてるんだ。好きなだけ、使っていいから。」
信じられない事をセクシーオヤジが口にしましたけど、聞き違いかしら?




