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荷馬車の中の雑談

 ミッドガルフ貿易国に行くには歩いて数日。

 そんなことを憂鬱な気分で考えていたら、ちょうどミッドガルフ貿易国へ行く商人が荷馬車に乗せてくれるとのお話がありました。


「競技会の優勝者をこんな狭い場所に入れちまってすまんな」

「……気にしない。パムレットのため」

「ありがとうございます。歩かないだけで十分助かります」


 三人は魔術や高い身体能力のお陰でぜんぜん疲れないそうですが、僕はそんな肉体を持っていません。

 そんなことを思っていたらゴルドが僕に話しかけてきました。


「疲労回復の演奏をしながら歩けば良いのでは?」

「少し前にそれを口笛でやりましたけど、疲れているのか疲れていないのかわからない状態になって、目眩がし始めたのですよ」

「『音』という原初の魔力はまだまだわからないことばかりですね」


 ゴルドの『鉱石』とは異なって僕の『音』は僕にしか見えません。よって僕だけしか『音』について考えるしかないのです。

 マーシャおばちゃんなら何か他に良い方法を知っているのかなと思いつつ、荷馬車に足をかけました。


 ☆


 数分後。


「……すーすー」

「ふふ、寝ちゃったわね」


 マオの頬を触るシャムロエ。毎度思いますがこの光景は姉妹ですね。年の離れた仲の良い姉妹はこんな感じなのでしょう。


 ん? そういえば二人って何歳なんでしょう。


 マオは見た目十歳くらいですが、シャムロエって転生したから実質ゼロですよね。ということはマオの方が年上なのでしょうか?


「トスカ。きっとそれは口に出してはいけないことでしょう」

「ゴルドはいつも僕の心を読むのですね」

「あはは、難しい顔をしているとつい読みたくなります。ですが、もう二度とマオには『心情読破』を使わないようにします」

「どれだけパムレットが心に深い傷を負わせたんですか」


 僕が『心情読破』を使えたら一度覗いてみたいですね。


「やめたほうが良いですよ。マオはこの世界では『ありえない』存在ですから」

「どういうことかしら?」


 マオの頭をなでながらシャムロエは質問をしました。



「マオには人間の考える部分である脳が二つ存在します。普通『心情読破』は一人にしか使えませんが、マオに使用すると二人に対して使ったと同じことが発生します」



 脳が二つ。えっと、ぱっと考えにくいのですが……。


「普段から疑問に思っていました。マオはボク達の会話を聞き、そして話す。これらは一組の術だと思っていましたが、よく考えればマオが魔術を使っているとき、ボクの知っている言語を話しながら魔術を使っていました」


 言われてみればそうですね。競技会の間も話しながら魔術を放っていたような。


「そして『心情読破』を使った際にボクの脳内に流れ込んだありえない量の『パムレット』が『パムレット』して『パムレット』が……」


 あ、ゴルドの顔色がどんどん悪くなってきました。それほど心に深い傷を負ったのですね。

 とりあえず軽くクラリネットを鳴らしてゴルドを落ち着かせました。


「ふう、ありがとうございます」

「いえ。それよりもマオは普通の女の子ではないという事ですね」

「でも、この場で普通じゃない人間なんて居ないわよね。今まで通り何事も無く接すれば良いじゃない」


 シャムロエ、たまには良いことを言いますね。


「そうですね。変な人たちの集まりですし、これからものんびりと進んで行きま」


 その時でした。


 突然荷馬車が止まり、体が前に押されました。


「な、何事ですか!」

「があ!」

「うっ!」


 突然シャムロエとゴルドが苦しみ始めました。これは……まさか!


「……悪魔。しかも大量発生」


 目覚めたマオはそうつぶやき、外を見てみると、大量の犬型の魔獣に囲まれていました。

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