”死”の王・カレラの告白
短め。またグロテスクな表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
セフィリアに吹き飛ばされた女は王都に立ち並ぶ建物を突き破り、王都の端にあたる防壁にぶち当たりようやく動きが止まる。
しかしその体はボロ雑巾よりもひどいありさまだった。
腕はあらぬ方向へとねじれ、どころか片腕はもげてしまっているし、頭など余りの衝撃に欠けてしまっている。
一番酷いのは、上半身と下半身が分かたれてしまっていることだ。
傷口からは大量の血が流れ出し、紅い水たまりを作り出す。
即死。
どう見てもそうとしか思えないその惨状に、騒ぎを聞きつけやってきた人々は悲鳴を上げた。
だが直後、信じられない光景を目の当たりにする。
「な、なんだあれは‥‥‥‥!!」
そのつぶやきは誰のものだったか。
しかし口には出さないだけで、それを見た誰もがそう思ったに違いない。
赤の水たまり。
それが突然泡だったかと思えば、何本もの蔦が伸びて転がる死体へと絡みつき始めたのだ。
分かたれた体は繋ぎ合わされ、欠損した部位には代わりとでも言わんばかりに蔦がその部位を形作り、数分もすれば元通りの肉体がそこにはあった。
それが5分も続けば、死体は元通りの姿になって立ち上がり、言葉を紡ぎ始めた。
「ああ、痛い‥‥‥‥‥」
笑顔でそうつぶやく化け物。
そこへその後を追ってきたセフィリアが姿を現す。
セフィリアは血だまりの上で平然と立つ化け物の姿を認め、「やはりか」とこぼした。
「お前、一体何が目的で私の前に現れた?」
その問いに化け物は笑みを崩さぬままに応えた。
それはもう、嬉しそうに。
「そうね、では改めて。 私は吸血鬼の祖、始祖吸血鬼にして”死”の王。 カレラと言うの。 私はね、貴方に殺してほしくて、会いに来たのよ」
「‥‥‥‥」
化け物の、吸血鬼のカレラの告白を聞いても、セフィリアは黙したまま何も語ろうとはしない。
その反応はカレラも予想外であったようで、少し驚きつつも嬉しそうな笑顔のままセフィリアに問う。
「あら、意外に反応が薄いのね。 まあいいわ‥‥‥‥ それで、どうかしら? 私の願い‥‥‥‥聞いてくれる?」
「‥‥‥‥」
しかしセフィリアは未だに応えない。
それは何かを考えているかのようだったが、しかしカレラにはその態度が別な様に映ったらしい。
その瞳に狂気の色を宿すと、とんでもない提案を口にする。
「ああ、貴方がやる気になるにはどうしたらいいのかしら? ここの有象無象を全部殺せばいいの? そうすれば貴方はやる気になってくれる? ‥‥‥‥‥うん。 そうね、そうに違いないわ! じゃあ‥‥‥‥殺しましょう」
自己完結したカレラが宣言すると、未だに残る足元の血だまりからまたも薔薇の蔦が伸び始めた。
そしてカレラがパチンッと指を鳴らすと‥‥‥‥‥
その蔦が未だ残る人々の元へ殺到した!!
「させるとでも?」
だがセフィリアはその突然の行動にも正確に反応した。
いつの間にか握っていた剣を手に駆け、伸びる蔦の全てを切り落としたのだ。
余りに一瞬の出来事に、驚きのあまり見ていることしかできない人々。
だが驚いたのはカレラも一緒であった。
「貴方‥‥‥‥ 凄いのね。 全く注意を向けてなかったのに、瞬間的にあれに反応してしかもすべて切り落とすだなんて。 私結構本気だったのに‥‥‥‥‥」
だがセフィリアはそのカレラの言葉に喜ぶでもなくただ淡々と返す。
「私が強いから。 それだけだ」
その傲慢ともとれる答えに、カレラは怒るでもなくむしろ興奮に身をよじった。
「ああ、いいわ!! 殺して!! その強さをもって!! 私を不死の呪縛から解放してっ!!!」
だからカレラは気づかない。
セフィリアの目がひどく冷めきっていることに。
「ああ、お前のわがままに付き合ってやる。 小娘」




