精霊の心-13-
投稿ペースの最速タイムを更新した神梛です。え、いつもが遅すぎる? 南無三(困ったときの便利な言葉)
というわけでお久しぶりです。最近書いていてとても思うことがありまして、それは自分の語彙力に物足りなさを感じているという話です。読める文だと自負しています。技術面でも少しずつではありますが向上してきているとも思います。(なお執筆速度は……)でも「ここの言い回しをもっと上手くできないだろうか」「もっとすっきりとした表現にまとめられないか」などのように自身で感じてしまう場面が増えてきました。そういうふうに感じられるようになったというのは成長した証なのかもしれないので、それは良しとしましょう。しかしいざ自分の語彙倉庫(笑)を広げようとするなら本をたくさん読むべきなんでしょう。ええきっとそうですとも。
ジカンガナイヨー(小声)
絵の方も技術を磨いていきたいので時間配分が難しいところですね……。
*精霊と精霊殺し
ドスドスと足音が響き渡る。最初は無視していたが、体感で10分ほど経っても鳴り止まない騒音に、柚斗はやむを得ず体を起こした。寝室の窓からは心地よい朝日が差し込み、騒音が無かったとしても間もなく起きていただろうと自分を納得させることが出来た。
昨夜、結局家に帰ってからも柚斗と結那はほとんど言葉を交わすことはなく、青い家の二階にいくつかある寝室のどれを使うか少し話し合った程度だ。柚斗は当然一人部屋で、結那はまだ少し肌寒い夜なので、胡桃で暖を取る為に一緒に寝ると言っていた。全く、仲の良いことだ。言っておくが断じて嫉妬ではない、断じて。
誰に弁明しているのか、柚斗は一人で訳の分からないことを頭の中でぐるぐると巡らせていると、間もなくドアを開く音がして、結那が部屋に入ってきた。服装はすでに制服に着替えており、どこから見つけてきたのか制服の上から水色のエプロンを身に着けている。
「朝ごはん、出来たから起こしに来たんだけど……もう起きてたんだ」
そう言うとそっぽを向いてしまう。昨日の今日で少し気まずいのだろうと、誰でもわかる予測をたてる柚斗。ここで「ああ」とか「まあな」などと一言で終わらせてしまうのはなんとも面白くない会話になってしまうので、起きた原因について言及してみる。
「さっきずっと足音がしてそれで目が覚めたんだけど、どうしたんだ?」
ああ、あれね。と言いたげな溜め息をついて、結那は思い出すように説明する。
「私が朝ごはん作ってる時に起きてきたんだけど、その時走って二階から降りてくるのよ。着替えるためにすぐ部屋へ戻っていったんだけど、とにかく部屋の行き来で走ってて……それでうるさかったの」
つまり朝からやたらテンションの高い妹が、家の中を走り回っていたというわけか。しかし何故……とりあえず下に降りてリビングまで行くのだ神祠柚斗!と自分に喝を入れてベッドから出る柚斗。 本人に聞けば分かることなので結那に連れられ、一階に降りていった。リビングに入る前に顔を出し、中を覗いてみると、制服を着た胡桃が座っていて、三人が揃うのを待っていた。
(そういえば俺だけ家着じゃん……)
胡桃を見て気付き、一瞬今すぐ寝室で着替えてこようかと迷ったが、まあ食べ終わってからでいいだろうと、朝食を優先することにしてリビングに入っていく。
「あ、おにいちゃんおはよー!」
「おう、待たせてたみたいでごめんな?」
「ううん、そんなにまってないからだいじょうぶ!」
元気に朝の挨拶をしてくる胡桃に対してまず謝罪を述べておく柚斗。それに対する返事もなんというか眩しい。対して結那とのおはようはもう済んでいるので、胡桃はニコッとした笑顔を結那へ向けるだけに終わった。そのあと柚斗は胡桃の正面の席につき、結那もエプロンを脱いでから胡桃のとなりにある椅子の背もたれに掛け、席につく。テーブルの真ん中にまとめて並べられていたサンドイッチを三人は手に取る。「いただきます」といまいち揃わない挨拶をしてから、三人は各々手に取っていたサンドイッチにかぶりついた。かぶりついたついでに、柚斗はつい先ほど浮かんだ疑問について聞いてみることにした。
「そういえばやけに胡桃のテンションが高い気がするけどなんかいい事でもあったのか?」
すると胡桃は口に入ったサンドイッチを急いで飲み込んでから、興奮気味に喋り始めた。
「あのね、きのうおねえちゃんがおにいちゃんのことんんー!?」
結那が胡桃の口を手で押さえた。急に塞がれて驚いた胡桃は、顔を少し赤くしながら何やらんーんー言っている。そして押さえている側の結那も赤い気がするのは何故だろうと思う柚斗。
「どうした結那」
柚斗の質問に対して苦笑いと焦り気味の「何でもない!」という一言で対応する結那。柚斗としては何故自分が出てきたのか割と気になることではあるのでどうにか知りたい。
「俺がどうかしたのか? あ、もしかして昨日のことまだ怒ってたり……」
「違うの。違うけど……その、あれよ、私たちが小さい頃の話を少ししてあげたら気に入っちゃったみたいで……」
「ほう」と言い、少し考える柚斗。
(それにしても結那が俺のことをどう言ったのか……あ、分かったかも)
結那が胡桃に何を言ったか大体検討はついたが、これは確かに相手に聞かれたくない……というより恥ずかしいことだろう。答えが分かったことで柚斗も少し照れくさくなってきたので、ここらで話題を変えることにした。
「そういえばこのあとロノフォさん来るんだよな、いつ来るんだろ?」
そっと胸を撫でおろす結那は、胡桃の頬っぺたを両手で左右に伸ばして涙目にさせながら昨日の会話を思い返す。
「えーと、確か……そうよ、あの人朝来るとしか言ってなかったわ!」
えぇ……という顔をしながら同時に何かもう一つ忘れている気がする柚斗。それを思い出させてくれたのは、頬っぺたの一部が赤なっている胡桃だった。
「ねえねえ、まいゆきちゃんは?」
「それだ!」
自分の体?を半分使っていることをすっかり忘れていた。呼び出したいときどうすればいいんだろうか。直接呼ぶ? それとも心の中で叫ぶか?
『どっちでも大丈夫ですよ』
「「!?」」
昨日と同じようにどこからともなく声が聞こえてきた。急だったのでみんな少し驚いてしまったが、誰の声かはもうわかっていた。
「ごめん舞雪、すっかり忘れてたよ……」
柚斗の謝罪を聞くと、白いワンピースを着た、瞳の蒼が肌と髪の白色で映える少女舞雪は、空いている柚斗のとなりの席に座った状態で現れる。
「大丈夫です柚斗さん、私は朝の皆さんの様子をこっそり見させてもらったので大満足です!」
と、なにやらにやにやしながら結那を見つめる舞雪。やっと落ち着いた話をまた掘り返されそうになった結那は、笑顔を返すも冷や汗が滲んでいるのが分かる。柚斗は助け舟を出すついでにずっと気になっていることを舞雪に質問した。
「舞雪の服さ、寒くないか?」
着ているものは白いワンピースだけ。ライハラムがある鎖界が仙王学園と同じ気候なら四月の上旬、見ている方が寒気のする格好なのだが……。
「それが特になんともないんですよね、完全に実体化していないからなのか私の精霊としての属性のせいなのか……うーん」
舞雪と一緒に「うーん」と唸る三人。少しして結那が一つ提案をする。
「舞雪、その服ってどうなってるの? まさか私たちと同じ素材ってことはないでしょ?」
舞雪は衝撃を受けた表情をしている。どうやら考えたことも無かったらしい。
「たぶん、何となくですけど自分がそうイメージしたんだと思います」
もしイメージで自由に服装が変えれるとしたら……と考えていると、柚斗に良い案が浮かんできた。
「じゃあとりあえずさ、仙王学園の制服に出来るかやってみないか?」
自分たちの服装に合わせておけば、季節感的にも学校にいるということから舞雪自身の居やすさ的にもちょうど良いのではと思った、柚斗なりの考えから出た提案だった。
「分かりました、試してみるので一回柚斗さんに戻りますね」
そう言って白い霧のような見た目をした霊力の粒子になり、柚斗の中に戻っていく。それから十秒ほどでもう一度柚斗のとなりの席に実体化した。
「うん、似合ってるじゃない!」
舞雪の服は上手く仙王学園の高等部女子生徒の服、つまり結那と同じ制服に変わっていたのだ。結那を参考にしたからか、スカートの丈が少し短いところが年相応といった感じに収まっていた。
「まいゆきちゃんにあってるよ!」
「うん、ありがと胡桃ちゃん!」
舞雪の制服姿は好評で、舞雪自身もそれなりに気に入ってくれたようなので、当分の間は制服を着ている形で落ち着きそうだ。そのあと柚斗も部屋に戻り制服へ着替えた。
呼び鈴が鳴り、昨日ぶりに聞く声が聞こえてきたので、下に降り玄関前の廊下を覗くと、ロノフォが迎えに来ていた。今日からしばらく所属するクラスに案内してくれるらしく、四人分の学生鞄と筆記用具一式を持ってきてくれた。しかし舞雪は、実体化していると柚斗に負荷をかけるとかで授業を受けることを辞退した。少し残念がっていたロノフォだったが、「柚斗さんの中で授業を聞いてますね!」と舞雪が言うと嬉しそうに頷いた。そんなやり取りを経て、それぞれロノフォに感謝を述べながら靴を履き、舞雪は一旦柚斗の中に戻って外に出る。
「ここから十分くらいかかるけどみんないい子だから期待していいわよ!」
そう言いロノフォは軽くウインクをする。こうして柚斗と結那と胡桃と舞雪の四人はライハラム学園での日々をスタートするのであった。
道中、最後尾を歩いていた柚斗は、不思議な女の人に出会った。髪と肌は白く、人間のものとは思えないその容姿は、とても美しく魅力的だった。
その人にすれ違いざま、こんなことを言われた。
「……懐かしい子がいるわね」
柚斗は立ち止まり、後ろを振り返る。不思議な女の人はそのまま真っすぐ歩いていき、見えなくなってしまった。
「神祠くん、どうかしたの?」
「いえ、なんでもないです」
ロノフォの言葉に何故か嘘をついてしまった柚斗。特に理由はない。ただ何故か嫌な予感が止まらない。しかもどうやらこれは自分の感情ではない気がする。
(舞雪?)
(……柚斗さん今の人が見えましたか?)
舞雪は震える声で頭の中に話しかけてくる。今の人とはすれ違った白い髪の女の人のことだろう。しかし何故そのことに怯えているのだろう?
(見えたけど、どうかしたのか?)
舞雪の感情が流れ込んでくる。これは……恐怖?
(舞雪だいじょ……)
(……です)
か細い声で舞雪はなにかを言った。音を介する会話ではないが、伝わりやすさは変化するらしく、柚斗にははっきりと聞こえなかった。聞き返してみると、今度ははっきりとした言葉でそれは聞こえた。
(私の母です、今の)
「……え?」
思わず声に出してしまう柚斗。急に言葉を発した柚斗に、他の三人は驚き振り返って柚斗をみている。柚斗は舞雪から言われたことを三人に伝えた。
「今すれ違った人だけど、行方不明だった舞雪のお母さんだって」
昨日舞雪の身の上話を聞いていたのは柚斗だけで、他の三人には何の話だか全く分からない。行方不明なことも初めて聞いた三人は、より一層疑問が深まっていった。
「ちょっと待ってよ、柚斗と舞雪が出会ったのってこの鎖界じゃなくて仙王学園のある方でしょ?」
柚斗もそれがわからなかった。コロッケを買った帰りに出会ったはずなので、仮にさっきの人が母親だったとしても、舞雪と舞雪の母親は別の鎖界にいることになる。
「なあ舞雪、お前がいた鎖界ってどこなんだ?」
柚斗の質問に対し、舞雪は実体化するも無言でいて答えなかった。今は全員立ち止まって舞雪を見ている。
「舞雪ちゃんって言ったわね、私は精霊にかなり詳しいと自負してるんだけど、もし何かあるなら手遅れにならないうちに行ってほしいの」
ロノフォの言葉を聞き、舞雪は不安と恐怖の混ざった瞳でロノフォをじっと見つめる。ロノフォの言葉に嘘がないと信じた舞雪は、みんなに説明し始めた。
「実は柚斗さんにしたお話には続きがあるんです」
舞雪が話し始めたところで、ロノフォが片手を挙げ「ちょっと待って」と話を遮る。
「喋らせといて悪いけど、ホームルームに間に合わせたいし歩きながらにしましょう?」
もっともな言い分だ、と素直にみんな歩き始めた。軽く舞雪が咳払いをしてから続きを説明する。
「それでですね、続きのお話なんですが……実はそのあと母が見つかっていたんです」
柚斗は首を傾げた。確か事件に巻き込まれたことで行方不明になったはずだったが……。その直後の言葉に再び一同は足を止めることになる。
「その時母は……人ではありませんでした」
「人じゃ……ない!?」
舞雪は生贄に捧げられ、不完全ながらも精霊になってしまった。そして母も人ではない。ということは……。
「母は、精霊になっていました」
予想は出来た答えだった。だが、それだけではないはずだ。柚斗が思うに、そうでなければ実の母親に突然すれ違ったくらいであんなに怯えることはないと思う。
「舞雪の母親はどんな精霊なんだ?」
柚斗の問いに「ゴクリ……」と喉を鳴らす舞雪。それから一度息を吐き、ゆっくりと口を開いた。
「精霊の力をより強めるために人や精霊を殺し、霊力を喰らっていました。たくさんの人たちが犠牲となったそうです」
再び歩き始め、学園までもう少しで着くらしい。だが、今は知らない学園に一時的に編入する緊張などはなく、思ったより舞雪の母親は危険な存在らしいことが分かり、すれ違った時の言葉に柚斗は恐怖を抱いていた。そしてロノフォも一つ、怖ろしい事実にたどり着いてしまった。
「みんな、早く学園に向かいましょう」
急かすロノフォに胡桃は戸惑いを見せる。
「どうしたの?」
ロノフォは余計歩きを速め、柚斗たちもそれに合わせて歩いた。
「最近ライハラムの周辺で、精霊殺しの事件が起きてるの。その犯行はとある人工知能を搭載した一種のロボットらしいんだけど、一番の問題は霊力が全部奪われていて、それはロボットの仕業ではないらしいの」
話が見えて来ない。結那は何が言いたいのかロノフォに聞こうとした瞬間だった。
自分たちの前に、先ほどすれ違ったはずの精霊が笑顔で立っていた。そして一言、あくまで喜々としてこう言った。
「後ろにいる男の子、殺しちゃっていいわよ♪」
次の瞬間、柚斗は背後に誰かいることに気が付いた。急いで振り向いたが、相手はそれよりも速く懐まで飛び込み、柚斗の首を掴んでから地面にたたきつけた。
「がぁっ!?」
柚斗の口の中で一気に血の味が広がっていく。己の首を掴むその握力は人間とは思えないほどの強さだった。
(まさかこいつが……今言っていた精霊殺し……!?)
首を掴む敵の目を見ると、人間それと同じに見える瞳の奥に、どこか無機質なものを感じた。
「柚斗!」
自分の名前を叫ぶ声が聞こえる。それは結那の声だった。それから他の三人も同じようになにかを叫んでいる。すぐそこにいるのに、何故かとても遠くに感じた。柚斗の意識はそこで途切れた。
さてさて、投稿速度も相まって物語の進みが遅い気がするこの作品も、ようやく少し話が動いてきました。舞雪のお母さんの名前は!? 柚斗どうなるんじゃ!
とか気になりますねー……気になりません?
僕は気になりますよ! え?
字数的には6000字くらいでした。今回書きたい事はもう前書きで書ききっちゃったので早めのお開きとしましょう!ではでは!!
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