精霊の心-12-
10月中に更新するつもりが38分過ぎてますね……(前書き執筆中現在)
まだ夜が明けていないのでセーフですよ!
31日にまとめて作業をして早めに上げるはずが、体調を崩し遅れてしまいました……南無三。
今回の12話なんですが、ついに過去編のパートが盛り込まれました!やったね!
精霊の心編では、恐らく(作中の)一晩に1パート分挟む形になると思われます。精霊の心編が終わるまでに終わるかはわかりません!多分終わるんじゃないかと!
ちなみに今回はキリの良さを考え5000字ちょいの文字数となっています。文字数減っちゃってごめんなさい!
*夜明かりのライハラム
入浴を終えた柚斗がリビングに戻ると、テーブルの上にはなにやらパンフレットのようなものが広げて置いてあった。結那と胡桃はそのパンフレットらしきものに家に備え付きのペンで線を引いたり、丸で囲ったりしている。
「二人とも何やってんだ?」
よほど熱中していたのか、二人は柚斗がリビングに戻ってきたことを、たった今気が付いたらしい。結那と胡桃は楽しそうにペンを走らせながら質問に答えた。
「これ、さっき見た学園内の街のパンフレットなんだって! 明日はお店を見てまわりたいなぁ……」
「おいしいたべものあるかな!?」
「あぁ、ショッピングとなると随分と好戦的になる幼馴染に、妹という仲間が出来てしまった!」とかなんとか頭の中でRPGじみた台詞を並べながら、柚斗もパンフレットをのぞき込む。
飲食店からゲームセンター、洋服屋もあれば和服屋もある。ここらの学園はどこもこんな感じなのだろうか、だとしたら恐らく学生が一番消費割合の大きい世の中なのだろう。そうでなくては成り立たない……はず。
それにしても。
「割と飲食店は多いんだな」
そう口にはしたものの、考えてみたら当然の事かもしれない。人が多ければ飲食の場は当然増えるだろうから。しかし、結那と胡桃からのリアクションはない。熱中して柚斗の話など耳に入ってないらしい。
「食文化は私たちとそう変わりは無さそうね」
「?……そうなんだ~」
変わりがないのは柚斗と結那だけで、記憶がない胡桃はそもそも、今まで何を食べてきたのか覚えてないらしい。
突然、柚斗のお腹はぐぅぐぅと大きな音を立て始めた。結那と胡桃は会話をやめ、柚斗の顔を凝視する。目が点にとまではいかない微妙な二人の表情に、思わず柚斗は言い訳みたいな言葉を放つ。
「そ、そういえば今日は忙しくて腹が減ったな~……」
恐らくからかうつもりだったのだろう。にやにやしながら何か言おうとした結那だったが、口よりも先にお腹の方から声が聞こえてくる。そう、ぐぅぐぅと。
「……ご飯、実際に見て決めよっか」
顔を真っ赤にする結那を前に、その横にいる胡桃を、なんとなく撫でながら「おっそうだな」と書いてありそうな仏フェイスで結那と顔を見合わせる柚斗。
しょうがないからりんごちゃんフェイスに免じて仏が許そう、的な心情だった。
玄関に脱いでおいたローファーを履き、外に出た三人。ローファーは、三足あるうち一つだけ使い込まれているのがわかる。理由は、胡桃のローファーが結那のお下がりで、柚斗と結那は高等部への進学ついでに新調したものを履いているからだ。急ごしらえだったのでそこは我慢してもらうしかない。
飲食店を探しに、三人は夜明かりと看板などの電飾で少し明るい街へ繰り出す。
家のある場所が閑静な住宅街で、夜で街灯も少なく視界があまりよくなかったため、迷わないようにマップを見ながらたどり着いた三人。歩いていると、所々から食欲をそそる匂いが漂い始め、三人の空腹をさらに刺激した。
「くっ、いい匂いで段々よくわからなくなってきた……」
いつになくノリノリな結那は、空腹でキャラがぶれ始めている。早く夕飯を済ませなければ結那が壊れてしまいそうなので、少し焦ってきた柚斗。胡桃は夜のキラキラした街並みを前にはしゃいでいる。仙王学園に戻った時、中学生で通せるだろうか……ライハラムで色々教えてから帰ろう、そう決意した瞬間だった。
しばらく歩いていると、柚斗は見たことのある看板に目が留まった。
「お、あそこにモックがあるぞ。とりあえず今日はそこでいいだろ、早く食べたいし」
「うーん、仕方ないか……」
観光地に来て、地元にもあるチェーン店で食事を済ませてしまうようなもったいない感じはあるが、となりの幼馴染にバーサークされても困るのでやむを得ない。結那自身も胡桃も異論がないようだしノープロブレム。
中に入ってみると少し混んでいて、やはりというべきか見知った雰囲気の店内だった。海外旅行でモックを見つけたらきっと同じ気持ちになるだろう。もっとも今いるところは界外なのだが。
さて、何にしようかなどとメニューを眺めていると、制服の袖を誰かに軽く引っ張られた。
「先に席とってるよ、いつものやつでいいから」
今にも力尽きそうな結那の代わりに、胡桃が袖を引いたらしい。言いたい事を言って席を取りに行った結那を、胡桃と柚斗は見届けると、メニュー表を手に取りながら待機列に並び始める。
大手ハンバーガーショップチェーンのモックは時々変な商品を開発してはそこそこの売り上げを誇っている。単に競えるほど力を持つ企業がないだけな気がするのは知らないふりをしよう。
「胡桃、俺と結那はもう決まってるけどどれにする?」
そう言ってメニュー表渡し、選ばせることにした。胡桃は「うーん」と唸って、様々なハンバーガーの画像を指でなぞりながら、その指は数種類のハンバーガーを行き来している。それから三十秒くらいして、胡桃が、腕を軽く叩いてきた。
「ん、決まったか?」
胡桃は頷き、メニュー表のある一点に指をさしていた。
「これがいい!」
「どれどれ……お、中々良いの選んだな~」
胡桃が選んだのは、アボカドチリモックという商品だ。豚肉百パーセントのパティに、レタス、トマト、アボカドにチリソースをかけたエキゾチックな味わいのハンバーガーになっている。ちなみにエキゾチックというのは異国風という意味があるのだが、まあ異の門に飛ばされたせいで、エキゾチックというか、正真正銘の異国であり異界なのだ。しかし、てっきりチーズバーガー的なのを頼むかと思っていたが、柚斗が思うほどおこちゃまでもないらしい。
(俺はアボカドも辛いのも食べれないけどな……)
段々情けなくなってきたので、考えるのをやめた。なによりそうこうしているうちに、レジが空き、自分たちの注文する番が回ってきた。胡桃の言うアボカドチリモックと、結那がいつも注文しているビッグモックシーザーという、結構な開発費をかけて生み出した極旨シーザーソース入りのビッグモックに、自分用としてシーフード焦がしバターバーガーというやたら伸ばし棒の多いハンバーガーを注文した。
食事を終え、結那も落ち着きを取り戻していた。店内の時計を見ると二十一時を回っていたので、胡桃がトレーの片付けから戻り次第、帰ることにした。ふと、昼頃に入学式後から昼過ぎまでにかけてやっていたホームルームで、結那が気になることを見つけた。
「ねえ、なんで岡先生は中心世界についてなにも言わなかったんだろう?」
「……新入生に配慮したんじゃないか?」
「ふーん、まあそれしかないよね」
結那は煮え切らないといった様子ではあったが、理由としては一番納得のいく理由だったので、それ以上はなにも言わなかった。
中心世界。これが何かと言うと、そのままの意味で「数多もの世界の中心とされる世界」のことだ。分かりやすく言うと国の首都のようなもの。繋がれた世界の構造は未だに解明されていない部分が多いため、中心世界が判明した二年ほど前、まさに世紀の大発見と言ったところなのだが、一般の人にはほとんど知られていない。理由として一番大きいのが派閥だ。
数多の世界は、今でこそ大きなところは概ね平和だが、世界が繋がれた当初は、宗教だの誰が全ての世界を治めるだのでよく荒れたそう。中には自分の世界が中心に動いていると主張する統治者や教祖などが多く存在した。もし中心世界が判明したと知れたら、再び世界には大きな乱れが生まれると容易に想像つく。
「……そういやライハラム学園がなんて名前の……世界なんだ?」
柚斗の疑問に結那は一つ苦言を呈す。
「あのね柚斗、私たち魔法師見習いやプロの人はちゃんと呼び方があるんだから使わないと」
柚斗はため息を吐く。結那のこういうキチッとしたところが少し苦手だった。どの業界にも専門用語があると思うが、魔法師の世界にもある。呼び方も一つでは無いのだが、仙王学園では世界が繋がれたことを鎖で束ねられたことに例えられることにちなんで、鎖の世界で「鎖界」と呼んでいる。
「あんまり好きじゃないんだよな、この呼び方。結那だって……」
「柚斗」
何か言いかけた柚斗に対して、強めに名前を言い放ち止める。結那は柚斗へ何か言うようにじっと見つめる。どうやら柚斗には意味が分かっているようだが、何故か悲しそうな目で結那を見つめていた。
「……ふたりともどうしたの?」
トレーを片付けて戻ってきた胡桃は状況が分からず、不思議がっている。柚斗と結那の二人には何かあるようなのだが、胡桃に対して何か言うことは無かった。
「……帰ろっか」
結那の一言でピリピリとした雰囲気から何とか脱することが出来た。店を後にした三人は、家に着くまで会話が無く、騒がしかった今日という一日の中で一番の静寂がそこにあった。柚斗の中にいる舞雪は、体の主の心境を覗いて、心配をしていた。何があったのか、体を共有している今、記憶を覗き込む事も可能だったが、舞雪はあえてそれをせずにただ見守ることにした。元人間だった舞雪には、人の心を踏み荒らすようなことは出来なかった。
*fragment -出会い-
森の中、昼下がりの日差しは何とも心地よい。黒髪の少年はそんな姉の幸せな気分など吹っ飛ばすような大声で叫んでいる
「アテ姉、虫取りしてくる!」
アテ姉と呼ばれた大学生程度に見える彼女は、ハンモックに揺られながらの読書を楽しんでいた。弟らしき虫あみを持った少年に手を振りながら「いってらっしゃーい」と一言、また読書に集中し始めた。
少年は森の中を走って何かを探している。
「昨日はここらへんで見たんだけどなぁ」
前日に銀色に光る蝶を見つけたので、それを今日は捕まえてやろうという魂胆だ。
(あっ見つけたぞ……)
見つけた瞬間から息を潜めるが、光る蝶は最初から少年に気付いていたようで、逃げるように少年から離れていく。
「待てぇぇえええ!!!」
叫びながら追いかけてくる少年を、面白おかしく思ったのか、あえて虫あみが届きそうで届かないという距離を舞っている。そしていつの間にか、蝶を追いかけているうちに姉のいる家からかなり離れていた。いや、実際には蝶を追いかけながら走っていて、途中で曲がったり戻ってきたりと直線には走っていないのでそんなに距離は遠くないのかもしれない。相変わらず光る蝶は飛び続けている。疲れを知らないのだろうかこの綺麗な蝶は。
「はぁ……はぁ……お前、ひょっとして人よりも頭が良いんじゃないか?」
やや諦め気味に蝶を褒め始めた少年。完全にお手上げだった。
蝶は少年の頭上でくるくると周り、またどこかへ飛んで行ってしまう。
「待ってくれよー!」
荒い呼吸を無理矢理抑え込むように蝶を追いかける少年。蝶の向かう先を見てみると、数多の光が差し込んでいるのがわかる。蝶がその光に飲まれていくのを確認してから少年も後に続いた。
そこには、人の手が入っている大きな庭が広がっていた。青い芝生が広がっている向こうには、大きな館が待ち構えるようにたっていた。
「あなた、だれ?」
不意に声がした方を見ると、そこには自分と同じくらいの年齢に見える。黒い髪の女の子が立っていた。クマのぬいぐるみを抱き抱えていた彼女は、初めて人を見るかのように、興味深そうに少年を眺めている。少年は少女があまりに美しく見え、思わず言葉を失った。手入れの行き届いた綺麗で長い黒髪は、少女の少し白くそしてやわい肌を際立たせていた。
「わたしの名前は結那、暁結那よ」
そう言うと、結那と名乗る少女は手を差し出してくる。少年は無意識にその手を取り、名乗る。
「おれは……柚斗だ、神祠柚斗」
名乗ってから急に恥ずかしさがこみ上げてきて、思わず手を離してしまう。すると結那はクスッと上品に笑い、笑顔になる。
「わたし、友達がいないの。だから……柚斗が友達になってよ!」
「あ、えっと……うん、いいよ」
戸惑いながらも柚斗が了承したその瞬間、抱きついてくる結那。
「やったー! 友達出来たー!!」
初めて出来た友達に大興奮の結那。クマのぬいぐるみと一緒に抱きつかれた柚斗は少し苦しかったが、なんだか心がぽかぽかする感覚に、戸惑ってそれどころではなかった。
柚斗と結那、二人が出会ってから家族になるまでの、思い出の欠片を寄せ集めていく。そんなお話。
fragment-1- THE END……
最近ピクシブに絵を載せ始めてしまいました……己が罪深いです。
小説を書きながらちゃっかり絵も描けるように練習しちゃってる今日この頃です。でもキャラ絵とかよりデザイン画とかの方が得意かもしれません。キャラ絵描きたいですけど(´・ω・`)
あ、突然ですが皆さん、友達は大事にしてくださいね!特に何かあったわけではないですが、何かあってからでは友達は出来ないかもしれませんよ!次回は11月の前半で投稿予定です!!
Twitter:@Kannagi1414
*誤字・脱字等報告していただけると大変助かります。




