イレギュラー
「でさぁ、ムカついちゃって・・・」
俺は学校に着くと早々に、友達に今朝の出来事を話した。
鵲 渡流。
小学校からの腐れ縁で、何かとおせっかい極まりない奴だ。
鵲はふぅん、と言ってから、面白そうなことだな、とでも言いたげに目を輝かせた。
「・・・・なんだよ」
「え?だってさ、あの特別クラスだぜ?
あのクラスって、何か近寄りたくないっつーか、話しかけづらい雰囲気があるっつーか・・・・・
なのに話せちゃったとかどんな勇者だよ?しかも相手は美少女!」
「・・・・・話してもいいことないぞ。傷つくだけだ」
「えーいいじゃん!美少女ちゃんと話せたなんてうっらやましー!!命まで助けられちゃって!」
「イライラしてたせいで完全に忘れてたけど、お前馬鹿だったな」
もうあの美少女ちゃんとは出会うこともないだろう。
そもそも特別クラスのエリートと普通科の凡才じゃ接点なんてものさえ、最初からないのだ。
今日、あの場所で会えたのはたまたま。
そう、偶然でしかない。
この世界に必然なんてものは何一つとない。
そうやって、偶然が繋がることで、世界というのは今日も成り立っているのだから。
そう―――――・・・・思っていた
「探したわよ。宮城雅」
嫌な予感。
ぎこちない動作で後ろを振り向けば、今朝会ったばかりの美少女ちゃんが。
周りの生徒が一瞬でざわつく。
圧倒的な存在感と威圧感。
エリートだとか、特別クラスだとかいうレッテルを引き剥がしても、ただそこにいるだけで、人々は彼女の周りから遠ざかる。
今現在も、俺の机の周りだけぽっかりと穴が空いているように、人が彼女を避けている。
最も、俺と鵲は除くが。
「探したって・・・・・・はぁ?」
「とりあえず、あんたの意思は無視するわ。
私急いでるの。
委員長命令だしね」
「え、ちょ・・・・っ」
手首をがしっと掴まれ、俺の声さえ無視してずるずると引きずっていく。
あぁ、周りの視線が痛い・・・・・。
こんな目立ち方するとは・・・目立つことなく有意義に過ごそうと思っていた俺のプランが、早くも台無しだ。
どうしてくれるんだ、この女、などと頭の中でグチグチと相手への不満を募らせる。
しばらく引きずられて、ある教室の前でピタっと止まる。
プレートを見ると、やたら重々しい色の上に、赤色でAlphabet、と英語で書かれていた。
アルファベットって委員会のー・・・・!?
ていうか何でここのドアだけ豪華な装飾で、なおかつ電子式のドアなんだよ。
「な、何で俺をこんなとこにー・・・」
「言ったでしょ、委員長命令だって。
私が委員長に、あなたを連れてくるよう頼まれたの。
全く・・・5秒でつれて来いとか言うし、会ってみれば今朝助けたつまらない顔だし、散々だわ」
またつまらない顔って言った・・・・!!!
妙にイライラを募らせて美少女ちゃんを睨みつけるが、ソッコー無視された。
ふぅ、と息を吐いて、美少女ちゃんはポケットから生徒手帳を取り出した。
後ろの方に載っている黒いページを、ドアの横にあるカードリーダーに読み込ませ、その後手を押し付けると、認証シマシタ、と電子音が流れ、ガコンとドアが開いた。
「・・・すごいセキュリティーだな」
「当たり前よ。勝手に一般の生徒がここへ入ったら、大変なのよ」