表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
実家暮らしの引きこもりニート、姪の迎えに行く途中で異世界転移した結果、物語を語るだけで生きてます  作者: 雪だるま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/29

24

 王都ルグバレア。


 異界文学全盛期。


『追放聖女と氷の騎士』

『最弱軍師、実は最強』

『悪役令嬢は妖狐でしたわ』


 街中に本が溢れていた。


 しかも。


 明らかにレイっぽい。


「のだぁ〜」


 レイは馬車の中でぼんやりしていた。


 現在。


 王都では模倣作家が大量発生している。


 劇作家。

 吟遊詩人。

 恋愛作家。


 みんなレイ風。


 だが。


 レイ本人。


「別にいいのだぁ♡」


 全く気にしていなかった。


 なぜなら。


(吾輩もほぼ誰かの作品摂取しただけなのだぁ♡)


 だからである。


 実際。


 悪役令嬢。

 妖怪。

 三國志。

 シンデレラ。


 全部どこかの文化の集合体。


 レイはただ。


 脳内娯楽ライブラリを混ぜて喋っているだけ。


「うむっ♡」


 レイは花束を見た。


 大量。


 さらに。


 紙束。


 子供っぽい絵。


 猫。

 妖怪。

 王女。

 変な騎士。


 レイが描いた。


「のだぁ〜♡」


 今日は珍しく上機嫌だった。


 理由。


 久しぶりに神殿へ行くからである。


「懐かしいのだぁ」


 王城暮らしになってから数ヶ月。


 忙しかった。


 王女。

 貴族。

 劇場。


 毎日誰かが呼ぶ。


 喉も死ぬ。


 だが。


 最初に拾ってくれた場所。


 それが大神殿だった。


「……」


 レイはぼんやり窓を見る。


 最初。


 怖かった。


 異世界。

 魔狼。

 知らない人たち。


 でも。


 修道女たちは優しかった。


『レイ様、お茶です』

『今日は何のお話ですか?』

『喉大丈夫ですか?』


「……のだぁ」


 レイは少しだけ静かになる。


 そして。


「うむっ♡」


 またニヤニヤした。


「今日はいっぱい甘やかされるのだぁ♡」


 台無しだった。


◾️ 大神殿


「レイ様ぁぁぁ!!」


 馬車が止まった瞬間。


 悲鳴。


 修道女たちが飛び出してきた。


「本物です!」

「帰ってきました!!」

「妖怪本最新巻読みました!!」


「のだっ♡」


 レイは得意げだった。


「うむ!帰還なのだっ♡」


 神官たちまで集まる。


「レイ殿!」

「新作三國志、大変好評です!」

「軍学校で暗唱されてます!」


「怖いのだぁ♡」


 レイは笑った。


 神殿は相変わらずだった。


 地下食堂。

 香の匂い。

 騒がしい修道女たち。


「のだぁ〜♡」


 なんだか安心する。


 ミリヤが駆け寄ってきた。


「レイ様!」


「のだっ♡」


 ミリヤは少し涙目だった。


「本当に来てくれたんですね……!」


「うむっ♡」


 レイは花束を差し出した。


「これなのだぁ」


「えっ」


「みんなへのプレゼントなのだぁ♡」


 静寂。


 修道女たちが固まる。


「……」


「……」


「……」


「のだ?」


 次の瞬間。


「きゃあああああ!!」


 大騒ぎになった。


「花束です!!」

「レイ様から!?」

「嬉しいぃ!!」


 レイはちょっと照れた。


「のだぁ……」


「しかも絵まで!」


「うむっ♡」


 レイは紙束も出した。


「みんな描いたのだぁ♡」


 そこには。


 修道女たちの似顔絵。


 妖怪化した神官。


 猫娘ミリヤ。


 意味不明な絵。


 でも。


 妙に愛嬌がある。


「……」


 ミリヤは絵を見た。


 自分。


 なぜか羽が生えてる。


「これ何ですか?」


「天使っぽいのだぁ♡」


「雑ですね!?」


 でも。


 嬉しかった。


 レイは最近。


 王城。

 王族。

 大貴族。


 そんな場所にいる。


 遠い存在になった。


 なのに。


 こうして戻ってきて。


 プレゼントまで持ってきた。


「のだぁ♡」


 レイは地下食堂へ入った。


「懐かしいのだぁ〜♡」


 修道女たちが群がる。


「今日は何話してくれます!?」

「新作ですか!?」

「恋愛もの!?妖怪!?」


「うむぅ……」


 レイは椅子に座った。


 そして。


 周囲を見る。


 みんな笑ってる。


 自分を見てる。


「……」


 なんか。


 不思議だった。


 元の世界では。


 こんな風に歓迎されたこと、

 あんまりない。


「……のだぁ」


「?」


「いやぁ……」


 レイは頭を掻いた。


「なんか吾輩ぁ……」


 少し照れくさそうに笑う。


「ここ好きなのだぁ♡」


 静かになった。


 ミリヤが微笑む。


「私たちもですよ」


「……」


 レイはちょっと黙った。


 そして。


「のだっ♡」


 急に調子に乗る。


「うむ!もっと崇めても良いのだぁ♡」


「調子に乗りましたね?」


「のだぁ!?」


 地下食堂に笑い声が響く。


 神官たちも苦笑していた。


 この男。


 異界の天才。

 文化革命家。

 国家的作家。


 そんな扱いをされている。


 だが。


 結局。


 最初とあまり変わっていない。


「のだっ♡」


 レイはパンを齧る。


「やっぱり神殿飯落ち着くのだぁ♡」


「王城よりですか?」


「うむっ♡」


「なんでです?」


 レイは少し考えた。


 そして。


「最初に助けてもらった場所だからなのだぁ」


 地下食堂が少し静かになる。


 レイは気づいてなかった。


 その一言で。


 修道女たちの好感度がまた爆上がりしたことに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ