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王都ルグバレア。
異界文学全盛期。
『追放聖女と氷の騎士』
『最弱軍師、実は最強』
『悪役令嬢は妖狐でしたわ』
街中に本が溢れていた。
しかも。
明らかにレイっぽい。
「のだぁ〜」
レイは馬車の中でぼんやりしていた。
現在。
王都では模倣作家が大量発生している。
劇作家。
吟遊詩人。
恋愛作家。
みんなレイ風。
だが。
レイ本人。
「別にいいのだぁ♡」
全く気にしていなかった。
なぜなら。
(吾輩もほぼ誰かの作品摂取しただけなのだぁ♡)
だからである。
実際。
悪役令嬢。
妖怪。
三國志。
シンデレラ。
全部どこかの文化の集合体。
レイはただ。
脳内娯楽ライブラリを混ぜて喋っているだけ。
「うむっ♡」
レイは花束を見た。
大量。
さらに。
紙束。
子供っぽい絵。
猫。
妖怪。
王女。
変な騎士。
レイが描いた。
「のだぁ〜♡」
今日は珍しく上機嫌だった。
理由。
久しぶりに神殿へ行くからである。
「懐かしいのだぁ」
王城暮らしになってから数ヶ月。
忙しかった。
王女。
貴族。
劇場。
毎日誰かが呼ぶ。
喉も死ぬ。
だが。
最初に拾ってくれた場所。
それが大神殿だった。
「……」
レイはぼんやり窓を見る。
最初。
怖かった。
異世界。
魔狼。
知らない人たち。
でも。
修道女たちは優しかった。
『レイ様、お茶です』
『今日は何のお話ですか?』
『喉大丈夫ですか?』
「……のだぁ」
レイは少しだけ静かになる。
そして。
「うむっ♡」
またニヤニヤした。
「今日はいっぱい甘やかされるのだぁ♡」
台無しだった。
◾️ 大神殿
「レイ様ぁぁぁ!!」
馬車が止まった瞬間。
悲鳴。
修道女たちが飛び出してきた。
「本物です!」
「帰ってきました!!」
「妖怪本最新巻読みました!!」
「のだっ♡」
レイは得意げだった。
「うむ!帰還なのだっ♡」
神官たちまで集まる。
「レイ殿!」
「新作三國志、大変好評です!」
「軍学校で暗唱されてます!」
「怖いのだぁ♡」
レイは笑った。
神殿は相変わらずだった。
地下食堂。
香の匂い。
騒がしい修道女たち。
「のだぁ〜♡」
なんだか安心する。
ミリヤが駆け寄ってきた。
「レイ様!」
「のだっ♡」
ミリヤは少し涙目だった。
「本当に来てくれたんですね……!」
「うむっ♡」
レイは花束を差し出した。
「これなのだぁ」
「えっ」
「みんなへのプレゼントなのだぁ♡」
静寂。
修道女たちが固まる。
「……」
「……」
「……」
「のだ?」
次の瞬間。
「きゃあああああ!!」
大騒ぎになった。
「花束です!!」
「レイ様から!?」
「嬉しいぃ!!」
レイはちょっと照れた。
「のだぁ……」
「しかも絵まで!」
「うむっ♡」
レイは紙束も出した。
「みんな描いたのだぁ♡」
そこには。
修道女たちの似顔絵。
妖怪化した神官。
猫娘ミリヤ。
意味不明な絵。
でも。
妙に愛嬌がある。
「……」
ミリヤは絵を見た。
自分。
なぜか羽が生えてる。
「これ何ですか?」
「天使っぽいのだぁ♡」
「雑ですね!?」
でも。
嬉しかった。
レイは最近。
王城。
王族。
大貴族。
そんな場所にいる。
遠い存在になった。
なのに。
こうして戻ってきて。
プレゼントまで持ってきた。
「のだぁ♡」
レイは地下食堂へ入った。
「懐かしいのだぁ〜♡」
修道女たちが群がる。
「今日は何話してくれます!?」
「新作ですか!?」
「恋愛もの!?妖怪!?」
「うむぅ……」
レイは椅子に座った。
そして。
周囲を見る。
みんな笑ってる。
自分を見てる。
「……」
なんか。
不思議だった。
元の世界では。
こんな風に歓迎されたこと、
あんまりない。
「……のだぁ」
「?」
「いやぁ……」
レイは頭を掻いた。
「なんか吾輩ぁ……」
少し照れくさそうに笑う。
「ここ好きなのだぁ♡」
静かになった。
ミリヤが微笑む。
「私たちもですよ」
「……」
レイはちょっと黙った。
そして。
「のだっ♡」
急に調子に乗る。
「うむ!もっと崇めても良いのだぁ♡」
「調子に乗りましたね?」
「のだぁ!?」
地下食堂に笑い声が響く。
神官たちも苦笑していた。
この男。
異界の天才。
文化革命家。
国家的作家。
そんな扱いをされている。
だが。
結局。
最初とあまり変わっていない。
「のだっ♡」
レイはパンを齧る。
「やっぱり神殿飯落ち着くのだぁ♡」
「王城よりですか?」
「うむっ♡」
「なんでです?」
レイは少し考えた。
そして。
「最初に助けてもらった場所だからなのだぁ」
地下食堂が少し静かになる。
レイは気づいてなかった。
その一言で。
修道女たちの好感度がまた爆上がりしたことに。




