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13 入学式

 入学式は、昨日の体育館で行われた。


 壇上では、学園長の挨拶が始まっていて、昨日の笑顔とは打って変わって、深刻な感じ。聖騎士の使命とか、“闇の大穴”に危機が迫っているとか、厳しいことを話してる。どうやら――“闇の大穴”と呼ばれる、魔族が沸いてくる底なし沼があって、そこを封印してる聖剣に限界が来ていて、新しい聖剣を刺し直さなければならないんだけど、それを出来るのが聖剣を使うことが出来る聖騎士だけで、聖騎士を養成するこの学園に期待がかかってるらしい。


 大変な時に入学しちゃったのか……。アメリアと楽しく通って、放課後にアイスクリーム食べられればいいんだけど、そうもいかなそう。


 体育館に集められた新入生は20人ほど。新入生の後ろには、100人ほどの在校生が並んでいる。10歳から15歳までの6年間を学ぶ学校だ。


 校舎や施設が広くて立派なわりに、生徒がすごく少ない。それだけ生徒を厳選した、特別な学校なんだろう。


 リーゼは11歳なので入学が1年遅れているが、そもそも年齢の表示がバグってわからないし、高額な入学金を払っているので、問題なかった。


 学園長の後は、剣技指導長ランドリックの挨拶へと続いた。

 拳を振るいながら、剣への情熱を熱弁するランドリックに、アメリアが不安そうに小声でリーゼに話しかけた。


「どうしよう……ついていけるかな?」


 リーゼは、すぐに返事が出来なかった。大人しいアメリアが剣を持つ姿が想像できない。


「ん~、聖魔法使いのアメリアに、厳しく剣を教えるってないと思うけど?」

「そ、そうだよね? 私……運動神経よくないし、剣を振るなんて向いてないもん……」


 アメリアは両手をきゅっと結んで、うなだれた。


 続いて壇上に上がったのは、聖魔法を教えるディツィアーノだ。

 天聖教会の人か……オーデンで聖天使教会をいじめてたヒドい人たち。

 リーゼは、なるべく関わらないようにしようと、そっぽを向いた。


「新入生には、聖魔法が使える聖少女様がいらっしゃるとか。期待していますよ」


 ディツィアーノの言葉に、アメリアが身をすくめた。


「今のって、アメリアのこと?」

「う、うん……村じゃそう呼ばれてて……。けど、聖少女だなんて、困ってるの。魔法……少ししか使えないのに……」


 弱るアメリアを見て、仕方ないなとリーゼは思った。聖少女なんて見たことないけど、いたらきっとアメリアみたいな見た目をしてるんだろうなって思う。ふわっとした金色の髪がキラキラしてるし、長いまつげの青い瞳がウルウルしてる。


「それでは最後に、在校生を代表して、ユーリィ王子のご息女であらせられるシャルミナ様より、新入生の皆さんに励ましのお言葉があります」


 お世話係のキャナリーさんの紹介で現れたのは、アメリアと同じく金髪の女の子だった。


 リーゼは、アメリアに耳打ちした。


「きれいな人だね」

「うん……聖騎士に一番近いっていわれてる人だよ」

「そうなんだ?」

「ほら、耳が少し尖ってるでしょう? エルフのクォーターなの」

「そっか。聖騎士の適正種族はエルフだもんね」

「うん……」


 アメリアの表情が曇ったのが気になったが、あまり私語をするわけにもいかないので、リーゼは壇上に向き直った。


 壇上では、シャルミナが聖騎士を目指す者の心構えと、意気込みを朗々と語っていた。高飛車でいかにもお姫様といった感じだ。


 ――なんか、にらまれてる気がする。


 シャルミナが時々、アメリアとリーゼに蔑んだ視線を投げかける理由を、リーゼはまだ知らなかった。



  ◆  ◆  ◆



 リーゼたちの教室は扇形をしていて、並ぶ机が列ごとに階段状となり、どれも教壇の方を向いていた。机は100席ぐらいあり、生徒は好きなところに座っていいことになっていた。


 生徒たちが我先に前の方へ座り、授業への意欲を見せる中、リーゼとアメリアはみんなの一番後ろの列の隅に並んで座った。それでも、教室の中程の席で、半分以上の空席が後ろに並んでいた。

 リーゼはあんまり目立ちたくないし、アメリアは引っ込み思案。性格の違う2人だけど、いいコンビだった。


 算術や、言語の勉強はとても楽しかった。お爺ちゃんの先生が丁寧に教えてくれた。配られた教科書とノートの紙がきれいで、凜星だったころの授業を思い出した。


(やっぱり、学校っていいな。また、こうして通えるなんて……)


 夕方、騒々しく扉を開け、ランドリックが勢いよく教室に入ってきた。


「さぁ、剣技の授業だ! 全員、防具を付けて体育館へ集まれ!」


 大きな声が教室に響いた。この時間が楽しみで、待ちかねていた感じだ。

 アメリアが勢いに押されて、ビクッと肩をすくめた。


「アメリア、大丈夫。あの先生が目を付けてるのって、私だから」

「え?」

「だって、ずっとこっち見てるもん」


 ランドリックは、まるで昨日の再戦を望むかのように、ウキウキとリーゼを見ていた。


 剣技とかどうでもいいのに――リーゼは、大きなため息をひとつついた。


【次回予告】

ランドリックの剣技の授業で、リーゼが異次元の強さを見せる!?


【大切なお願い】

 ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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