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アクトコーナー  作者: 乱 江梨
第四章 少女の恨み、万事塞翁が馬
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少女の恨み、万事塞翁が馬 番外編

 遥音くん入院時の小話です。短いです。そして少しふざけました。すいません。

 遥音が目を覚ました翌日。その病室はこれでもかという人口密度を誇っていた。遥音を含めた文芸部員たち、結菜に加えて、見慣れない成人男性たちがズラリと病室に並んでいるのが原因である。


 ほとんどが高身長でガタイの良い、スーツに身を纏ったその男性たちはもれなく全員刑事で、慎一の部下である。


 だが彼らがここを訪れたのは、今回の事件の関係者である遥音に事情を聞く為ではない。ただ単純に遥音のお見舞い――もとい、遥音を通じて慎一にごまをすりに来たのだ。


 

「みんな見るがいい。これが人望の差ってやつだよ」

「は?」

「確かに薔弥先輩の時とは大違いですね」

「あー……」

「というか……生まれの差?」



 顔を顰めながら謎発言を繰り出した明日歌に思わず巧実は疑問の声を上げたが、理解の早い透巳の言葉で納得する。


 以前薔弥が刺され、入院した際は今とは比べ物にならない程少人数の見舞いしか訪れなかった。遥音と薔弥では、その信頼度に天と地ほどの差がある。日頃の行いの結果でしか無いが、それでも薔弥が可哀想になるレベルである。


 今回刑事たちが押し寄せたのは明らかに慎一のせいなので、生まれの差という兼の意見も尤もなのだが。



「それにしても、後遺症が残らなくて安心しました」

「それは……どうも」



 十人いる刑事の中で最も年上と見られる刑事が皺を増やしながらそう言うと、遥音は居心地悪そうに頭を下げた。


 周りの刑事たちも不気味なほど笑みを浮かべていて、遥音に気に入られようという魂胆が見え見えである。



「きもちわ……」

「ステイ、透巳くん。今何を言いかけた」



 その様子を傍観していた透巳が心底嫌そうな表情で呟いたが、言い切る直前にその口を明日歌が物理的に塞いだ。


 そんな二人の様子を何とも言えない表情で見つめた遥音はため息をつくと、刑事たちに向かって口を開く。



「あの……」

「何ですか?」

「これからとても失礼な物言いをすることを、許してくれますか?」

「?え、えぇ……」



 刑事たちは顔を見合わせ、透巳たちは苦笑いを浮かべている。明日歌に至っては若干耳を塞いでいる。刑事たちが困惑する中、透巳たちはこれからの展開が分かっていたからだ。


 遥音(ヤツ)毒舌(アレ)が繰り出されると。



「……お前たちが俺を通じて父のご機嫌取りをしたいのは分かるが、俺はそんな魂胆を察して気を遣う程のお人好しではない。よってこのことを父に知らせるつもりは一切ない」

「っ……」



 ギクッという効果音が聞こえてきそうな程刑事たちは冷や汗を流し始めた。図星感が丸出しで、分かりやすすぎる反応である。



「そもそもそんなことのために、お前たちは忙しい時間を削って俺のようなガキに会いに来たというのか?そんなことをしている暇があれば仕事をしろ!捜査をしろ!一つでも多く事件を解決しろ!実績という形で父にアピールでもしてみろ!!!」

「「は、はいっ!!」」


「「…………」」

「これなに?」



 キリっとした鋭い眼光、ビクッと跳ねあがりそうな程圧のある声を刑事一同に向けた遥音。とんでもない正論を自分より遥かに年下の遥音に諭されたことで刑事たちは背筋を正し、勢いに任せたような敬礼をした。


 遥音は至って真面目なのだが、刑事たちの小物感漂う反応のせいで茶番と化してしまっている。


 明日歌たちはこの状況に全くついていけず、ただただ呆然と眺めることしか出来ていない。



「分かったらさっさと仕事に行け!!」

「「はいっ!!」」

「「…………」」



 ここは警察学校かというツッコみを、明日歌たちは喉のところでぐっと堪えて無言を貫いた。刑事たちは息ぴったりの返事をするとそのまま退出してしまい、一気に病室に空気の通り道が出来る。



「はぁ……まったく……」

「遥音先輩が鬼上司に見えましたよ」

「冗談はよせ……」



 訪ねてきた刑事たちに対するツッコみどころが多すぎて、遥音は疲労を吐き出すようなため息をついた。透巳は冗談のつもりなど全く無かったが、遥音からすれば冗談であって欲しいという願望に近いものだった。



「それにしても、やっぱり遥音先輩は何だかんだで甘いですね」

「……何のことだ?」

「ここで素直じゃないの発動しなくてもいいのに……」



 透巳の言葉の意味を理解できたのは恐らく遥音、明日歌、兼だけだろう。遥音は恍けてみせたが、透巳にはバレバレである。


 遥音は説教の前にこのことを慎一に知らせることは無いと言った。当初は父のご機嫌取りの手伝いをする気は無いという意味に思われたが、本当は彼らのためにあんな宣言をしたのだ。


 自身の部下たちが遥音に媚びを売って評価を上げようとした事実は、慎一にとって心地の良いものでは決してないだろう。その事実が慎一の耳に入れば、評価は上がるどころか下がってしまう。だから遥音はこのことを話さないと断言したのだ。


 相変わらずの遥音に、透巳は破顔するのだった。




 「え、これで終わり?」と思った読者様、これで終わりです。だって番外編だから。次回から第五章「不変の√コーナー」開始です。


 次は明後日更新予定です。


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