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最初のトレーラー

 セラフィの話では、彼には身寄りもなく、正直彼もこれからどうしたらいいのかわからない状態だった。

 だから私達は三人、厳密にいうと一人と一台と一ユニットだけれどさ、この世界を学ぶために旅をすることにしたの。


 セラフィが焼け跡から持ち出してきてくれた財産は、何枚かの貨幣に、焼け残った小さな宝石など。

 残念ながら衣類などはすべて焼け落ち、宝石もその大半が焼けてしまったらしい。

 

 ただ、収穫だったのは、セラフィが持ってきた小さな宝石と、私達が賊を轢死させて入手した宝石が同じようなものだということ。

 これは賊から換金可能な宝をゲットできるということを意味する。

 いよいよロールプレイングゲームだわ。

 

 セラフィも家族と何度か街に出かけたことはあるらしく、金貨、銀貨、銅貨と宝石の区別はついている様子。

 これって助かる。


「それじゃ、とりあえずセラフィの履物と替えの服を買いに行くとしましょう」


 これは急務なの。

 なぜなら、これ以上セラフィにTシャツ一枚でいられると、私の精神が持たないから。


 ところが、私達はいきなり行き詰ってしまった。

 なぜなら、どこからどう見ても、私の姿は『異形』だから。


 とにかく出会う存在出会う存在が悲鳴を上げながら逃げていく。

 これでは会話も情報収集も糞もあったもんじゃない。


「ねえセラフィ、キミ達から見た私達って、正直どうなの?」

 するとセラフィは即答してきた。


「『髑髏巨人スカルジャイアント』って、きっとこんな姿だと思う」

 続けて私と初めて出会ったときにおしっこをちびったことを思い出したのか、セラフィはその可愛い顔を歪めてしまう。


「『スカルジャイアント』ですか?」

 ジョナサンの質問に、セラフィは思い出すかのように情報を追加してくれた。


「スカルジャイアントは、終末の巨人軍団を導く者なの。巨人の中でもひときわ大きな、頭だけの巨人なんだよ」

 どうやらセラフィの知るおとぎ話に、そんな怪物が出てくるらしい。


 こんなにもプリティな私が、よりによって髑髏どくろかよとも憤慨してみたけれど、冷静になって考えてみれば、初対面でいきなりトラクタヘッドが出て来たら、『でっかい顔』だと思われても仕方がないわね。


 うーん。

 このままじゃらちが明かないわ。

 どうしたものかしら……。


「セラフィちゃん、この世界に、モモちゃんを小さくしたような存在はありますか?」

 あら、ナイス質問ねジョナサン。

 

 するとセラフィは、一度私から降ろしてくれという。


「はい、足元に気をつけてね。そこの取っ手を持ってゆっくりと降りるんだよ」


 身長一メートル余りしかないセラフィが私の運転席から降りるのは一苦労。

 それでもドアは私が開けてあげることができるから、まだましなんだけれどね。

 

 ちなみに私は車外では『梱包道具操作コントロールパッキングツールズ』のおかげで、ワイヤーロープやナイロンスリングで比較的細かい作業はできる。

 でも車内では基本何もできない。

 なのでセラフィに指示を出すだけなんだ。


 私から降りたセラフィは、まじまじと私を正面から見つめた。

 あらやだ恥かしいわ。


「ねえモモちゃん、最初に出会ったときは、もっと小さかったよね?」


 あ、そうだった。最初は地下室で出会ったのだったよね。


「それじゃちょっと縮んでみるね。『収縮コントラクト』!」


 しゅるしゅるしゅる。

 

 とりあえずこんなものかしら。現在私の高さとセラフィの身長が同じくらいになっている。


「これなら、『使役人形サーバントゴーレム』に見えるかも」

「サーバントゴーレム?」

「うん。サーバントゴーレムっていうのはね……」


 セラフィの話によれば、この世界では私達の世界でいうロボットのような存在が普及しているらしい。

 動力はセラフィには分からないらしいけれど、街では人々が様々な形のサーバントゴーレムを連れているのだってさ。


「ねえモモちゃん、モモちゃんの背中に乗ってみてもいい?」

「ええ、構わないわよ」


 このサイズなら、私の車高は高さ五十センチに満たない。これならばセラフィも安全によじ登ることができる。

 セラフィがキャビンの背に立つと、ちょうど彼の胸辺りの高さにキャビンの屋根が来る。

 セラフィは屋根を使って両手で身体を支えると、満足したようにうなずいた。


「モモちゃん、これならモモちゃんはボクのサーバントゴーレムに見えると思う!」


 ……。


 幼いって恐ろしいわ。無垢って恐ろしいわ。


 この銀髪蒼瞳の少年は、屈託のない笑顔で私のことを「奴隷サーバント」と言い放ったのよ。

 しかも私に乗っているし……。

 あん、ゾクゾクしちゃう!

 ……。


「モモちゃんそこまでです! 帰ってらっしゃい!」


 私はジョナサンの叱責に我を取り戻すまで、しばらくショタご主人様に踏まれるという妄想の世界に浸ってしまった。

 マジやばいわね、これって……。


「モモちゃん、どうしたの?」

 どうもしないわセラフィ。ごめん、私が悪かった。


「ちょっとセラフィの後ろが寂しいですねえ」

 話題を変えてくれてありがとねジョナサン。

 

 そうね、トラクタヘッドのミニチュアに幼い少年が乗っているというのも変な構図だよね。


「それじゃ、お使いの荷車みたいにしてみましょうか。ジョナサン、あのスキルで出来るわよね?」

 ジョナサンにも私が意識に描いたデザインが伝わったみたい。

 

「ええ、問題ないと思います。トラクタとしては本意ではありませんが、セラフィと一緒ならこのタイプが一番無難ですね」

 まあね。本来は私達の本業じゃないし。でもいいじゃない。

  

「セラフィ、ちょっと降りてくれるかな?」

 私とジョナサンののやり取りが聞こえていたのか、セラフィはすぐに私の背から飛び降り、続きを期待するような目でこちらを見つめている。

 それじゃ始めるね。


「『台車成型シャーシモールド』タイプ選択『ダンプトレーラー』!」


 次の瞬間、私の連結器カプラーの後ろに、私のボディと同色であるパールホワイトに塗られたダンプトレーラーが姿を現し、私に接続されたんだ。

 これは私たちの世界ではダンプトラックといわれる、箱形を抱えた台車のこと。


 ちなみにダンプならではのギミックも搭載済みだけれど、これは後のお楽しみということで、セラフィには内緒にしておく。


 ふふふ。セラフィの熱い眼差しが心地いいわ。


「モモちゃん、すごい!」


 ね、これなら荷車に見えるでしょ。

 こうして私は縮尺三メートルほどのダンプトレーラーを牽引し、背にセラフィを乗せて再び出発したんだ。


 楽しそうなセラフィの表情がうれしいわ。

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