第4話
僕らが魔法の書を作った翌日。
おトキさんは学校に来なかった。放課後、図書館のいつもの席に、いるはずのおトキさんの姿はなかった。
そして、次の日も。
不思議なことに、クラスメートは誰も、おトキさんが欠席していることを気にしている様子がなかった。それどころか、担任の教師は、出席を取るときに、おトキさんの名前を呼ばなくなっていた。まるで、最初から、トキなんて少女はいなかったかのように。
「先生、トキさんはどうしたんですか」
担任がいつものように出欠を取ったときに、僕は思い切って叫んでみた。いつも、無口な僕の言葉に、教室中がどよめいた。
「トキって、だれ」
担任の言葉は、なんとなく予想していたものだった。
「お前、大丈夫か」
担任が珍しく、心配そうな顔で僕を見た。
「いえ、なんでもないです」
何かが、おかしい。それだけは明らかだった。
「シラサキさん、今日は来てますか」
次の日の午後、僕は図書館で、手近にいたスタッフを捕まえて聞いてみた。シラサキさんと作業をした翌日から、おトキさんはいなくなったのだ。シラサキさんなら何かを知っているかもしれない。
「シラサキさんって、誰?」
「え、痩せていて背が高くて、四十才くらいの・・・」
「スタッフの中にはいないわよ。そんな人」
「いない・・・」
わけがわからなかった。それじゃあ、あの日の作業はなんだったのか。
「それじゃあ、三階に上がらせてください」
「三階?」
「スタッフオンリーの扉の向こうに階段があるでしょう。そこの階段を登って・・・」
僕の必死さが伝わったのか、そのスタッフは特別に、ということで、スタッフオンリーと書かれた扉を開けてくれた。その扉の向こうにある階段を、僕は一段ぬかしで駆け上がった。するとそこに広がったのは、三階ではなく・・・・。
「屋上?」
「屋上よ。まあ、三階って言う言い方は、間違ってはいないと思うけど」
「部屋は? 確かにここに部屋があったんだ」
「天文台ならあるけど、入ってみる?」
僕らが『魔法の書』を作った部屋はなくなっており、そこは屋上になっていた。屋上には、天文台があるだけだ。天文台のドームは、いつも遠くから見ているものよりは大きく感じたが、部屋と言えるほど広いものではなかった。中に入ると、スペースのほとんどは、反射型の天体望遠鏡とそれに関する機械で占められていたが、片隅に古い机があり、その上に一枚の紙が置かれていた。
がんばれ! 若き魔法使い達
紙にはそう書かれていた。




