浅木さんの話4
しばらく考えた後に、東条さんに電話をした。学園祭に出ることを渋々告げたら、
「ありがとう」と素直に言ってくれて、
「珍しいね」と思わず言ってしまった。
「お前が出てくれることがうれしいから」
「自分の引き立て役としてちょうどいいからでしょ、プロが相手だと自分が目立たないし」
「いや、きっとお前と一緒じゃないと輝けないよ」と訳の分からないことを言っていた。
「やっぱり出るのは嫌かもしれないな」と怜奈ちゃんにぼやいたら、
「約束は守らないとね。それで宣伝をしているのなら、楽しみにしている人もいるかもしれないよ。それに、変更があるとしらけるからね。真珠の評判が悪くなっても困るでしょ。嫌でも出ておいたほうが今後のためよ」と言い切られてしまった。
「しっかりしてるね」
「お店のこともあるでしょう? お母さんにも迷惑を掛けるよ。だから、手を抜かないでしっかりやらないと。そこはそこ、占いは占いでね。一緒に出る人が嫌いだからって、手を抜いたら、お客が嫌がるよ。お客様が喜んでくれればいいじゃない」
「今までだったら、そうやって割り切れるけれど、あいつに利用された後だと、抵抗が」
「実際にそういう人にだまされたりする子だって多いと思うけど、夏休みに出会った人にだまされた子もいるみたいだしね。名前も性格も知らないうちはそこまで気を許しちゃ駄目だけどね」
「気を許したわけじゃないけど、いつの間にか入り込んでくるんだよね、あの人」
「だったら、あの人も同じかもね。何度も真珠に会いに来るぐらいなら、熱心ではあると思うけど。いいじゃない、仕事上の付き合いだと割り切れば。お店に見習い占い師としてデビューしている以上は責任が出てくるから、好き嫌いは言ってられないでしょ」
「怜奈ちゃん、しっかりしてる。怜奈ちゃんみたいな子なら、芸能界でも通用しそうだね」
「無理だよ。私、ああいうのは苦手。媚売るのは下手だし、自分を売り込むなんてできそうもないし、ミーハーなところもないしね」怜奈ちゃんは大人っぽいところがあるから、付き合うのは年上が多い。
「経験積まないと無理かなあ? 恋愛相談はどうしても苦手」
「今までもあったでしょ?」
「部活でのごたごたとか、親とけんかしたとか、友達と仲直りしたいって言うのは多かったけれど、復縁とか、二股とか、そういうのがいまいち駄目」
「神宮寺と一回デートしただけでは難しいかもね。東条さんはどうだった?」
「男として見られないし」
「そう? いい人じゃない。結構親切だとは思うよ」
「だって、それはライバルを育てて、自分のために」
「それもあるかもしれないけれど、わざわざテレビ局に行ったり、自分の占いを見せたり、アドバイスしてくれたり、そこまで親切にしたのは、多分、違う理由だと思う。打算だけなら、アドバイス程度で止めるでしょ。真珠が反対にライバルになりそうな子に、そこまで教えられる?」と聞かれて考えていた。私はライバルになりそうな子で、相手が嫌がらせなどせずに正々堂々と戦うタイプで好敵手になりそうな子なら教えるかもしれないなと思った。でも、相手が嫌がらせをして足を引っ張ったり、見下したりするような好きになれない子は教えないかもしれないなと思った。
「相手が好きじゃなければ無理かも」
「でしょ。だから、東条さんも打算だけじゃないと思う。口に出して言っている部分だけ見たって、その人の全部なんて分からないよ。いいところもあるけど、悪いところもあるだろうし、トータルで考えて好きになれるかどうかで判断したら」
「欠点も飲み込める人なら許せってこと?」
「誰でもいくつか未熟な部分、どうしようもない部分ってあるでしょ。完璧な人なんていないし」
「雪人さんは完璧だよ」
「それはまだ、相手を知らないだけでしょ。意外とどうしようもない部分が見えるかもよ」なさそうだな。頭は良くて、感情をそのまま表に出さないだけで、とても優しい人に見える。私の顔色を見ながら、
「駄目だね。のぼせ上がってる。相手が好きだから、見えてないだけかもよ」と怜奈ちゃんが呆れていて、
「でも、全部素敵だよ」
「真珠、東条さんで懲りたでしょ。全てが見えてから、それでも好きだと思うなら本物かもね」
「そう言われても」
「デートに誘えばいいじゃない」
「学園祭が終わったらそうする」
「そういうことを言っているうちに時間が過ぎるよ」と笑われてしまった。




