浅木さんの話3
「元気がなくなって、みんなが心配していたの。突然、真珠ちゃんからプロキオンの占い師に変更を申し出て、ほぼ全員が反対した。真珠ちゃんのほうがいいからと」
「プロの女性のほうがいいじゃないですか」
「あら、学園祭だもの。その辺は手作り感が出たほうが面白いでしょ。出来上がったプロの女性より女子高生のほうがかわいいし」
「そういうことを言われても」
「でも、尚毅は様子が変だった。落ち込んでいて、ため息ばかり。挙句がリハーサルのときに突然、『やめる』と言い出して、みんなが驚いたけれど、あの尚毅が、『どうしてもできない』と、頭を下げていたわ」
「そう言われても」
「あなたのことが頭から離れない限り無理でしょうね」
「どういう意味ですか?」
「尚毅は恋をしてるのよ」と言われて、飲もうとして取り上げたカップを慌てておいた。こぼしそうだったからだ。
「あの男が恋? 『自分に』じゃないですか?」あいつは『自分が一番、自分大好き』タイプだから、他の女性を自分以上に好きになれるとは思えなくて、つい、そう言ってしまった。
「確かにナルシスト気味だとは思うけれど、尚毅は本気で誰とも付き合ったことがないかもしれないわね。どこか冷めていると言うか、本気になれないというか」
「知りませんよ。女性と楽しそうに一緒にいるのしか見てないし」
「短期ばかりよ。それほど長くないみたいね。相手が本気になる前で止めているのかも」
「インスピレーションが減ったから」
「ああ、それは言っていたみたいね。そういう女性を探していると」
「失礼ですよね」
「そう? それはあると思うわよ。そこの部分に惹かれるのは占い師なのだから、気になるのは当然でしょうね」
「そうですか? 見た目とか性格が二の次なんて、ひどすぎるでしょう?」
「違うと思うわ。そういうのが合わない人はある程度でやめておくみたいだし。真珠ちゃんとは長く続くだろうなと思っていたから」
「遊びの女性と同じにされたくないし」
「あなたには本気だと思うけれど」
「インスピレーションだけと言うのは、困ります」
「そうね。確かにそれだけならちょっと面白くないかもしれないわね。ただ、それ以外の部分でも惹かれているのよ。自分でも気づいてなかったんでしょうね」
「惹かれていませんよ」
「ため息をついたことのない人が、ああいう顔をするって言うのは、そういうことだと思うけれど」
「そう言われても」
「尚毅は不器用なのかもしれないわね」
「器用に遊んでいるじゃないですか。多くの女性とデートして」
「デートの数は多いかもしれない。でも、本気になって付き合いたいと思ったことは一度もないのかもね。私のときも後腐れなかったみたいだし」
「そうですか? プライドが邪魔をして追いかけられなかっただけでしょう?」
「プライドが崩れてきているのかもね」と言われて、学校に何度も来ていたあいつを思い出した。
「怒っているかもしれないけれど、もう一度考え直してもらえないかしら。せめて、学園祭は楽しいものにしたいから。このままだと企画が壊れるわ。お守りも売れなくなると困るしね」
「それがありましたね」
「だから、お願い」と頭を下げられて、私もため息をついた。




