浅木さんの話2
学校の近くのコーヒー専門店に入ってから、
「楽しそうな学校ね」と言われてしまい、
「クラスによって違います。あいつら、行事で異様に張り切るんですよ。テストでは張り切りません」
「そうなんだ」と浅木さんが笑っていて、
「東条さんとどうして付き合ったんですか? 浅木さんみたいに綺麗で聡明な人が付き合うとは思えなくて」と言ったら、ちょっと微笑んでいた。
「ごめんなさい。プライベートなことなのに」
「いいのよ。何人かに同じことを聞かれたからね。私もちょっと色々あった時期だったし、入学当初で彼の性格も良く分かってなかったの。愛想が良くて、女子学生にも人気があったからね」
「見た目はいいですからね」
「でも、彼とはすぐに付き合いをやめたの」
「そうでしょうね。浅木さんはもったいないです」
「違うわ。性格が合わないと気づいたのもあるけれど、私が駄目だったの」
「どうして?」
「そうね、色々理由はあると思う。私は彼氏と別れたばかりで、寂しかったのもあったから気分転換のつもりで付き合ってしまったのね。東条君は明るくて優しい人だったから」
「美人以外には冷たいですよ?」
「そう? 真珠ちゃんとは違って見えたけれど」
「どこがですか? 散々、女性をもてあそんできて、私は子ども扱いなだけですよ」
「今まで、何度か学校には連れてきていたし、目撃されていた女性はいたけれど、でもね、違ってたわよ」
「どこが?」
「相手と言い合いはしてなかったから」
「喧嘩してるだけです」
「彼の場合は女性にそこまでのめり込まないところがある。軽い付き合いで止めておくの。けんかも、もちろんしない。将来お客様になるかもしれないから、怒らせることはしたくないと、言っていたのを聞いたことがあるわ」
「同業者の娘だから関係ないでしょ」
「きっと、初めてだったのよ。本気でけんかしたのは」
「見下す発言ばかりするからですよ」
「でも、ため息ばかりついていたわよ」と言われて、驚いた。