ため息1
東条さんが後で電話を掛けてきたけれど、
「学園祭には出ません。お一人でどうぞ」と言ったあとは、電話を拒否しておいた。そのために、家にまで来て、母が追い返してくれた。そのあと、電話がかかってきて、
「しつこいね、あなた」と言った。
「話をしてからだ」
「したくない」
「学園祭に出ないってどういうことだよ」
「失礼な男と一緒に出たくないだけ」
「今更言うなよ。動いているんだぞ」
「変更もいくらでもあるんでしょ。だったら、出演を取り消してよ。無理」
「わがままを言うな」
「どっちがわがままよ。失礼な男。魅力のある女性を捕まえて、その人とどうぞ」
「お前、根に持ってるな」
「あそこまで言われて黙っていられない。あなたとは二度と会わない」と言って電話を切った。また、かけてきたけれど、ほっといた。
また、家にまで東条さんが来たら嫌だなと思っていたら、下校途中で東条さんから電話があり、仕方なく出た。
「話をしたいんだ」
「あなたの道楽には付き合えません。他の綺麗な女性と一緒にどうぞ。プロキオンの女性なら誰でもいけるでしょ。綺麗なんだからね」
「お前で宣伝してあるのに、今更、変更したらおかしくなるだろ」
「大丈夫でしょ。綺麗な女性なら男性が喜ぶ」
「女子高生占い師だからいいんだろ」
「呆れる人だね。絶対に出ません。家に来たら、車に塩を山盛りかけてやる」
「お前なあ。車に傷がついたらどうするんだよ」
「人のことを傷つけておいて、そんなことは言わないでよ」と怒鳴った。
「え?」東条さんがさすがに黙っていた。
「せっかく、いいところもあるって見直したこともあったけれど、あなたはやっぱり見かけどおりの薄っぺらい男よ。男として魅力なんて全然ないわ。人のことを平気で傷つけるろくでなしよ。たとえ、条件がそろっていたとしても私は選ばない。雪人さんのことをとやかく言えないわよ。相手のことなんてこれっぽちも考えてないわ。だから、女性だってすぐに離れていくのよ」
「それは、……違う」東条さんの声が小さかった。
「そうでしょ。誰かあなたと会えなくなった後に、あなたとまた付き合いたいと言ってきたことがあるの?」
「何度かしつこくされたけれど」
「それはあなたの表面だけ見てるからでしょ。お金目当て、顔がいい男目当ての人以外でいるの?」と聞いたら黙ってしまった。
「母が言ったことが今なら分かる。あなたとは関わってはいけないって」
「昔、親父に捨てられたから怒ってるだけだろ」
「いいえ、違うと思う」
「何で、そう言い切れる?」
「あなたを見ていたら父親に会わなくても分かるわよ。そっくりなんでしょうね。とにかく、絶対に出ないからね、二度と電話を掛けてこないで。あなたになんて会いたくもない。さようなら」と言って電話を切った。
「え、さようなら?」東条さんがそう言っているのは切れた後なので聞こえなかった。




