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Fortune-teller  作者: marimo
17.芸能学校
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芸能学校3

「昔の素行が悪かったころの写真とか出てくる時があるでしょ。それだけでイメージが下がって、お客さんが離れちゃうことも多いからね。性格が良くて応援したいなって、お客様にもスタッフにも思われるような子じゃないと長くは続けられない」

「引き立てられるには運の良さも大事なんですか?」東条さんが言っていたことを聞いてみた。

「ああ、それってあるわね。自分の持っているものが時代に合ってないと困るし、自分を認めてくれてくれる人に出会うには確かに運の強さって大事だと思うけれど、それだけだとすぐに消えちゃうわよ。意志が強くて、何を言われてもがんばれるような子じゃないとね。実力だけあっても認められない、努力をしても必ずしも認められるわけじゃない。でも、一度、ステージに立って、お客さんの賞賛を浴びるとね、やめられなくなるそうよ。何人かがそう言っていたから」

「賞賛ですか?」

「ステージに立って、お客さんが自分の歌を聞いてくれて喜んでくれる。手を振ってくれる。そういう状態を味わっちゃうとやめられないんでしょうね。私は別の意味で楽しかったけれどね」

「何がですか?」

「そうね。自分がついた子がどんどん輝いていくのを見るのが楽しいのよ。自分で育てて、段々と自信がついて、受け答えがしっかりしてきて、本物に変わる。楽しいわよ。今もそう思って、育てているけれど、中々いないわ。軽く考えている子があまりに多くて」

「軽くですか? でも、プロを目指しているのなら、しっかりしているんじゃないですか?」

「プロと言っても、簡単にテレビに出て適当にしゃべって、それで、流行の洋服がいっぱい買えて、と思ってるだけの子も多いわよ。ちょっとかわいいだけで出られると思ってるの。確かに飛びぬけてかわいい子なら、短期だけ出られたりするけれど、その後が続かないわよ」

「そうなんですか?」

「歌手にしたって、歌詞や曲を作ってレコーディングして、それから、写真を撮ったり、ビデオを撮影したり、色々するけれど、テレビに出たりする以外の時間のほうが多いのよ。コンサートの時間より、打ち合わせの時間のほうが多いのに、そういうのは嫌がるのよね。待ち時間も多いし、変更になることも多いし、大人の事情って言うのもあって、それで苦情なんて言えないし、でも、我慢できないらしくて文句ばかり言ってた子がいたからね。すぐにいなくなったけれど」

「はあ」

「脚光を浴びている時間ばかりじゃないしね。それに売れてくると何をしても、何かと言われちゃうし、嫌な噂を流されても、同業者に嫌味を言われても聞き流せるような子じゃないとね。家庭に恵まれなくて苦労している子が、がんばって残っているのも、それが理由よ。弱い子じゃ、すぐに、消えちゃうからね」

「聞き流せるものなんですか?」

「最初は無理よ。でも、段々と強くなっていくのよ。自分の目的を強く持って、負けたくないと思いながらがんばっているのを見ていると、私もその子の力になりたいなって思うからね」

「そうですか」

「あなたもやってみたいのなら、紹介するわよ。占いしながら歌うとか」

「いえ、いいです。遠慮させてください」

「冗談よ。あなたはそういうことに興味がなさそうだものね。でも、不思議な目をしてるわ。ひきつけられるような、見透かされるような」

「そうですか?」それは時々言われたことがある。友達にも何度か言われたり、男子にはそうやってからかわれたことがある。

「占い師も甘くない世界かもしれないけれどがんばってね」と言ってくれたので、

「ありがとうございました」と頭を下げた。

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